詩人:中村真生子 | [投票][編集] |
秋晴れに誘われて
車で出かけてみる。
山の方に向かうと
稲刈りが終わった田んぼが
広がっていた。
この前
この道を通った時
蓮華の花が咲いていた。
月日の経つの早いこと。
けれどそれを嘆くまい。
それより
「光あるうちに光の中を歩こう」。
きらめく秋の光の中を…。
今なら
金木犀の香りとともに…。
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する側も
募る側も
羽ばたかせてくれる
赤い羽根。
冷たい風が吹き始めた
秋の街角の
小さな陽だまり。
温かな光に包まれて
手から胸へと
羽ばたきぬ。
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喧噪の中に
喧騒はなく
あるのは互いに必要な声。
その中で
自らが必要な声を聴け。
他の声が
どんなに大きくても
それに屈することなく…。
どんなに楽しそうでも
それに惑わされることなく…。
必要な声は
いつも一つ。
ほら、耳を澄ませば
聴こえてくる
心に灯をともすあの声。
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灰色の雲が広がり
海も灰色。
木々のところどこが
赤や黄色に色づき
ススキとセイタカアワダチソウが
並んで風に揺れている。
時折、落ち葉が
急ぎ足で道路を駆けていく。
もうどこかに
舞い降りたに違いない
冬の便りが
見つかりそうな朝。
ふと懐かしい気持ちが蘇える。
古い友に出会ったような…。
足元には
雪のように白い
一輪のシクラメン。
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うららかな秋の午後。
集まった者たちで始まった
とりとめのない会話。
やがて
互いの心と心が響きあい
一つになった心が
それぞれの中に還っていく。
その瞬間の
確かな存在感。
今、私はここにいる。
確かに、私はここにいる。
ただ存在するという
心地良さとともに…。
傍から見れば
なんでもない
雑談のひとコマ。
人は人と響きあうことで
自らの存在感を感じるのだろう。
季節(とき)と響きあって
いのちを紡ぐ
野の花のように…。
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窓ガラスを拭く。
泥やほこりが取れて
窓の向こうに
すっきりと
美しい
秋の風景が広がる。
海が空が雲が
木々が草花が
鳥たちが
目覚めたかのように
生き生きと語りかける。
誰もが
磨かれたガラスのような
心を持っている。
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手作りの
ポストを買った。
青と白の爽やかな色。
上からでも
下からでも取り出せる。
嬉しくなって
さっそく玄関に置き
そばに花も飾ってみた。
ボタンのような取っ手を持って
ふたを開けて
新聞や手紙を
取り出すたびに
木の温もりと
作った人の温もりと…。
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懐かしい人
新しい人…。
いろいろな催しで
たくさん出会った週末。
心のアルバムには
彩とりどりのご縁の花。
この種が
また新しい花を
咲かせますように。
互いの胸で育まれ…。
この花が
また新しいご縁を
咲かせますように。
いろんな胸で育まれ…。
人と人とで
咲かせるご縁の花。
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幼子は
おもちゃを手に取る。
持つということ知るために…。
取っては手放し
手放しては取り
持つということを学んでいく。
そうして
本当に持つべきものを
見つけた人は幸せだ。
だれでも
いつでも
どこででも
持つことができる
それを。
何よりも
豊かさをもたらしてくれる
それを。