詩人:梅宮 蛍 | [投票][編集] |
幽けき焔が消えたあと
その足跡を想う。
何でも知っていると
そう思っていたのは思い上がりで
僕はこんなにも貴女のことを知らず
知らなかった事にも気づけず
気づいた今、貴女は居ない。
幽けき焔が消えたあと
その足跡を想う。
先行きの伴連れに選んだ感情の
その一片を、推し量る事さえ僕には難しい。
ああ、なんと不甲斐ない。
幽けき焔が消えたあと
何を想えど貴女が還ることはない。
それでも愛していたと
それだけは。
どうか それだけは。
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夢を追えば実が廃れると言ったのは 誰だったか
周りの仲間たちが当たり前にこなしている暮らしを全て否定して
そこへ立つ事を背負ったのは 何故だったか
好きだから やりたかったのか
やらされたのか
夢は時に 追ったつもりが追われ
掴むはずが雁字搦めに捕われ
足元は暗い泥の中
光明もなく スポットライトなど夢のまた夢で
浴びても浴びても嘘っぱちだと叫ぶ
それでも手放せないのは
既に腐り落ちた社会性のせいなのか
それともその甘美な響きのせいなのか
報酬など 何処にもありはしないと もう解っているのに
夢に見る事をやめられない
いつか真実 本当のスポットライトの下でーー
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天を衝く木々 影黒く
隙間に刺す白き定規
遥か足元で私が笑う
岩間を梳く清流冷たく
跳ねる稚魚は水と同じ色
淡く香る花々の 小さきは星のやうで
花粉を運ぶ虫たちが 遠く行き交う
君の頬は赤く 生くる血潮の眩しさよ
狭き世界にありて尚
広大な夢を見る 仔 らの
在ると疑わざりし明日の約束
今は見えねど
やがてまた そこに往く
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川面に昼の星が千と輝く
対岸に踊る緑は濃く
その向こうの涼しげな薄闇が好奇心を駆り立てる
灰色の礫が滑らかに微笑み
何事もないよと時が過ぎ往く
一枚の写真のような
その景色
子は静かに溺れている
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並列した文字に押し潰されて 私は海を漕ぐ
浮かぶ月 あれは夜の塗り忘れ
はたまた あれはピンホール
あの穴の向こうには
きっと小舟が一艘 波間に止まっていて
それが今 私として 焼き付けられているのかもしれない
上も 下も 白いも 黒いも
なにもかもが反転した世界で
誰かが今 生きているのかもしれない
その人は 何を思って私を撮影しているのだろう
きっと やはり
何かに押し潰されて ふらり 思い立ったのだろう
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じょんがらの
音が夜の雪片に跳ねてこの耳に届くとき
その手はもう
次の音を弾いてゐる
寒空の月
何を観る その眼で
誰を弾く その指で
知らない香りが鼻腔に迷い込んで
出て往く宛もなく
ずっと私の中に残るのだ
残ってゐるのだ
憎い人
だけど 愛しい音
だから
知らないふりをしてあげる
嗚呼
なんて なんて莫迦な夫(ひと)だろう
でも ほら
じょんがらの 音が 綺麗だから