詩人:梅宮 蛍 | [投票][編集] |
天を衝く木々 影黒く
隙間に刺す白き定規
遥か足元で私が笑う
岩間を梳く清流冷たく
跳ねる稚魚は水と同じ色
淡く香る花々の 小さきは星のやうで
花粉を運ぶ虫たちが 遠く行き交う
君の頬は赤く 生くる血潮の眩しさよ
狭き世界にありて尚
広大な夢を見る 仔 らの
在ると疑わざりし明日の約束
今は見えねど
やがてまた そこに往く
詩人:梅宮 蛍 | [投票][編集] |
夢を追えば実が廃れると言ったのは 誰だったか
周りの仲間たちが当たり前にこなしている暮らしを全て否定して
そこへ立つ事を背負ったのは 何故だったか
好きだから やりたかったのか
やらされたのか
夢は時に 追ったつもりが追われ
掴むはずが雁字搦めに捕われ
足元は暗い泥の中
光明もなく スポットライトなど夢のまた夢で
浴びても浴びても嘘っぱちだと叫ぶ
それでも手放せないのは
既に腐り落ちた社会性のせいなのか
それともその甘美な響きのせいなのか
報酬など 何処にもありはしないと もう解っているのに
夢に見る事をやめられない
いつか真実 本当のスポットライトの下でーー
詩人:梅宮 蛍 | [投票][編集] |
幽けき焔が消えたあと
その足跡を想う。
何でも知っていると
そう思っていたのは思い上がりで
僕はこんなにも貴女のことを知らず
知らなかった事にも気づけず
気づいた今、貴女は居ない。
幽けき焔が消えたあと
その足跡を想う。
先行きの伴連れに選んだ感情の
その一片を、推し量る事さえ僕には難しい。
ああ、なんと不甲斐ない。
幽けき焔が消えたあと
何を想えど貴女が還ることはない。
それでも愛していたと
それだけは。
どうか それだけは。
詩人:梅宮 蛍 | [投票][編集] |
赤い龍の背に陽が昇る
鱗に弾かれ遍くを照らす頃
君は細く呼吸を始める
紺を纏った静寂から 黄金の朝へ 光を見出す
折々の草花が時を揃えて目覚め
木々は風に笑う
龍は西の空を悠々と渡り
後には一条の白い帯
ここは頂
遥か眼下には万の眠り
それもやがて 赤光に照らされ起きるだろう
赤い龍の笑う頃には きっと 僕の病も癒えるだろう
詩人:梅宮 蛍 | [投票][編集] |
遥かなる人よ 私はここにいる
尊き人よ 名を呼んでおくれ
それだけで あの高き山も
遠き空も
深き海も
渡っていける
遥かなる人よ 尊き人よ
幽き命よ
灯火よ
詩人:梅宮 蛍 | [投票][編集] |
おおきなひとがやってきて ぼくをのみこんだ
まっくらになったみちのとちゅう
そこはあたたかくて やわらかくて
ちいさなひとがあらわれて ぼくにはなしかけた
ピンクいろのみちのとちゅう
そのひとは ぼくのまえにきたひとだって
そういって
ぼくのてをとって ふたりはおどった
ねぇ ここはどこ?
そんなことがだいじなこと?
ねぇ きみはだれ?
あなたはしってるはずよ
おおきなひかりがやってきて ぼくをのみこんだ そのあさに
ちいさなひとがやってきて ぼくはかみさまと ともだちになったんだ
詩人:梅宮 蛍 | [投票][編集] |
沈みゆく果てに歌はない
高く飛ぶ花
舞えば夢
奥園の果てに夢はない
低く成る鳥
散れば空
松林の静寂
倶利伽羅の寂静
那由多の煌めき
悔恨の唸り
軋む悟道に幾万朽ちねど
弾む魂緒は
救世の真髄神のまほろば
詩人:梅宮 蛍 | [投票][編集] |
括弧付けて格好つけて
話す言葉は借り物だと
言われりゃ確かにそれまでだが
貸し借りもなく
生きていけりゃあ世話は無い
誰に幾ら入ったとか
誰が幾ら取られたとかが
酒の肴にならない今の時代は その代わり
誰に何をされたとか
誰が何をやらかしたとか
そんなことが世事の話で世話も無い
括弧付けてでも
話せる言葉があるだけまだマシだろうと
笑う親父に 銚子が一本 酒の夜