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善田 真琴の部屋


[10] たけくらべ
詩人:善田 真琴 [投票][得票][編集]


小六の頃、修学旅行の大型観光車両の停車せし折り、窓より路傍にて小便垂れし大人の背中、目に止まりにけり。ぐるりの人もみな気付ける気配なれど、言ひ出す人とてなく気詰まりの空気なりき。

「思ふこと言はざるは腹膨るる業なり」と兼好法師の書きにし如く、更に使命感も手伝ひてか、「あれに小便垂るる男あり」と嗤ひつつ言ひ放てば、我慢の後の放尿感にさも似たり。

然れば、隣に座り居りし女子のおもむろに言ふやう、「みな知りしをただ言はざる許りなり」とて我を叱れり。それは、小一の幼き日に教室にてお洩らしせし我のために、「かれの家は、妾の家の隣なれば」とて、着替えを取りに走りし女子なりけり。

当時、「女子は大人にして、男は勝つ能はざるなり」と思ひ至れど、今も変はらぬ定理なりとぞ。


くらべこし

何時しか越えぬ

妹が丈

下に見つつも

見守られけり

(詠み人知らず)





【歌意】
比べ合った背丈も、何時しか僕が君を抜いて、下に見るほど高くなったけど、見守られているのは僕の方だったよ。

2012/03/07 (Wed)

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