ホーム > 詩人の部屋 > 右色の部屋 > クジラの夢:美也子と友人達

右色の部屋


[98] クジラの夢:美也子と友人達
詩人:右色 [投票][得票][編集]

「クジラの夢を見ました」

目覚ましが鳴る前に目を覚ます 
鏡を見る
10年とちょっと付き添った私の顔
今日もなかなか美人ですね
涙の痕が残っている頬に触れる
やっぱりクジラは死んでしまったのだろうか
とりあえず美也子に会ったら聞いてみよう

「クジラの夢を見ました」
     
昨日の夕食は何だったか
魚は食べていない気がする
ボーっとする
メガネを掛けてからも
ボーっとする
不意に
クジラにメガネは似合わないと思った
美也子さんに会ったら同意を求めてみよう

「クジラの夢を見ました」

あー
ダリー
ダリー
サルバドール・ダリー  
なんちゃって 
馬鹿なことを考えてしまった  
美也子のせいだ 
当然 
恥ずかしさがモノスゴイ速度で追ってくる 
とりあえずシーツを被って現実逃避 
でも 
夢の入り口はシャットダウン 
まいったな
全然眠くねぇよ 
寝起きから絶対絶命のピンチだぜ
学校に行けなかったら 
やっぱり美也子のせいにしよう
どう考えても 
あのクジラの絵が悪い

「クジラの夢を見ました」

夢痛
目が覚めても覚えていて
頭の中のだいたい三分の一くらいを埋めてしまう
そんな夢をユメイタって呼んでる
だって痛いだよ?
魂の三分の一くらいを夢に置き去りにしてしまったみたいでさ 
引き千切られた魂が再び一つになろうとして 
引っ張り合ってものすごく痛いんだ 
でも今朝のはあまり痛くない 
きっとクジラが食べちゃったんだね 
夢の中で魂(わたし)を
美也子ちゃんに会ったら謝ってもらおう

『クジラを見ました』

見つめた天井が空に見えて
シーツの触感は海になって
溺れかけてから
ようやく自分の部屋だと思い出す 
カーテンを開けたいと思った 
空が見たかった
ベットから這い出して 
転んでゴロゴロ窓際まで辿り着く 
空を見た 
一匹の巨大で広大なクジラが空を泳いでいる 
こっちを見ている 
だから見つめ合った 
世界で唯一
今この瞬間しかクジラを見ることは出来ないけど 
やっぱり 
空にくじらは居て 
みんなは知らない内にクジラの夢を見る

2008/07/22 (Tue)

前頁] [右色の部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -