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右色の部屋


[99] 無色透明:エリーマリーエリー
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たぶん
理屈でいえば
寂しくは無い


窓の外
電柱と外灯

濁ったオレンジ色
それくらいが妥当だろう
今の
孤独なんて

湿っぽい部屋は
鋭い切っ先が削げ落ちて
柔らかい

十代の頃に感じた
新鮮な青は
もう見つからない

キレイなツメと
細くて長い指
私は私の手が好き

手の平の赤い点は広がって
それが血液だと気づくのに少し時間が掛かって
やっぱり舐めてみることにした
血の味の代わりに手の平の味
驚くほど味がしない

時間が時間を押し潰してゆく
見えないから
ただの巨大になって
圧迫する

点滅しているのは
なんだろう

携帯とかテレビとか

そういうものだった気もする

遠くで電車の音

つま先は微弱な震動を受け取る


不意に笑いたくなった

でも失敗した

だから泣きたくなった

でも失敗した

鏡を見たいと心底思った
感情がゴッソリ抜け落ちた
そんな陳腐な言葉が
きっとピッタリな今の顔を見てやりたかった

時間が止まる

きっと鏡を見なかったせいだ

部屋を下から、床、壁、天井・・・・と、次ぎは降りて、天井、壁、床・・・・
繰り返した


時間が戻った時

私はベットで寝ていて

泣いていた

声を上げたかった
産声を上げたかった

感情がそうであるように
叫びたかった

けど、止めた

日常がそうであるように

私はまだ私を終えていない

2008/08/03 (Sun)

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