詩人:緋文字 | [投票][編集] |
わらわらと蠢いてくるのは
誕生の季節
なぞに例えられる
春
ばかり、ではない
HELP ME
腹に浮き出る文字
そんな事態は
カルト・ホラー
ばかり、ではない
右腕に浮き出た
左手で押さえた
左腿に浮き出た
目を凝らして
たどった
ミミズ腫れに伝う文字
読んでみたらば
気味の悪い
私の声
だった
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ジャッカリン、ジャッカリン…
あの男がくるよ
早く布団をかぶってしまお
赤い目をしてたから
きっと今夜もやってくるよ
あの男はズルイから
小さいおまえからさらっていくよ
でも今夜は大丈夫
ばあさまに鍵をもらったよ
今夜はそのチョコレイト
一箱綺麗に食べておしまい
もともとあいつが持ってたモノさ
ココは二人スッポリで
あの男には届かない
この鍵あれば大丈夫
ガタガタ大きな音のわりに
大した力は持っちゃいない
朝がきたら飛び出そう
私が突き刺す瞬間に
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わたしの脳ミソは
ツルリとしていて
ひっかかるとこなんか
ないはずなのに
どうしても
ひっかかってしまって
取れないものが
いくつかあるんだ
ツルリとしてるはずなのに
心臓に毛が生えたから
きっと
そっちにひっかかったか
どっちにしても
厄介だな
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もう
白く肌に同化した
古い疵
あの人と私の温度が
合わさる時にだけ
赤く浮き上がる
もう
片時も離れない
わけじゃない
ただの記憶
背徳心が
色濃く浮かび上がらせて
遠くの貴女が
心で抱きしめてくれた
もう還していいのかな
孵らないものは帰らないと
気持ちを返してばかりでは
きっと
何も変えられない
産まれたものが
『命』
そう決めて見れば
新しいものが
生まれてくるんだよね
それは
すり替えじゃない
貴女に
抱いてもらいたがってた
私のヒビ入り卵
別のカタチで孵してみせる
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初夏に芽生えた
結晶は
春を待たずに
編み糸解いた
揃えた物、から
捨てようか
そうこうしながら
一年過ぎた
街中にあふれ出る
振り返るのは幼き笑み
返し笑みを浮かべてみては
知らぬうちに垂れ流す
そうこうしながら
三年過ぎた
そうこう、かれこれ
もう、ひと昔前の話だと
もう、どの子にも笑えてる
とっくに
今日、人差し指を握られて
また
その力強さに負けてしまった
重ねてしまって愛おしい
ふた昔、過ぎれば
負けなくなるのだろうか
あなたのために泣けるのは
もう私しかいないから
詫びる術もなく夜明けまで
こんな日には弔いを
毎日は考えなくなって
明日は笑う私がいて
後三ヵ月を待てなくて
ごめんなさい
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伴に老いたい
少しでも長く健やかに
物を巧く噛めなくなる様な歳まで連れ添い
新鮮で滋養の有る物を選び
食べ易いよう細かく刻んで食卓をしつらえる
貴方は、やっと好きな釣りでもして
そうやってのんびり生きて
ほんの少しだけ私より先に逝ってください
毅然と見送った後は
目覚める度に
空の布団を見ては
思い返して泣くでしょう
そうして過ごす時間は
そう永くは続かないから
綺麗な花を供えては
語りかけ笑顔を取り戻したりもするでしょう
一緒が叶えばよいけれど
あまり時の差がない様に
私も逝けたらよいなと思う
残された者になるのは
嫌でした
今は、貴方を残して悲しませるより
そんな風に終われたらよいなと
想い方のひとつひとつが
どうも貴方に対しては
違うのです
心を健やかにしてくれて
ありがとう
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幾度も突きあたる
不在への慣れ
それは
果てしなく遥かにみえる
解放を望みながら
慣れてしまいそうになると
拒んで
また突きあたる
在ったことを識るからこそ
途方も無い作業
変えれる時がくるのだろうか、と
動かしてよいものかどうか
なかなか慣れない
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足りぬ言葉で一言呟く
あなたは十を理解する
足りぬ言葉が一言届く
私は十を解そうとする
不満はなかった
満足もなかった
ただ足りなかった
はっきりと
足りてないから
満ちるのが判った
言葉ひとつ 表情ひとつ
面白いように
手に取るように
そういうものだと感じれた
埋まっていく ごく自然に穏やかになる 自然と常に
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苦い記憶
カナ文字の店の請求書
幼い兄と二人の映画館
発砲スチロール
寝顔
長過ぎた時間
賽銭箱
ハサミ
駐車場
母の日記
燃えないゴミ置場
祝儀
生命維持装置
1060グラム
紙切れ
吸い殻を拾う男
……
記憶は消せない
幸せな記憶
幼い兄と乗ったタクシー
二本観れた映画
赤鬼子の様な妹
手編みの帽子
祖母の布団
早過ぎた時間
お供え物
自転車の荷台
蹴り上げた尻
笑う母
仕事
家族
不似合いな寝巻
迎えてくれた人
渡せるお金
あの人
……
まだまだ
つくっていける記憶
順当に逝く者って
悪い記憶、飛ぶみたいです
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あなたの為なら死ねる
とか
あなたの為なら何でもするとか
押しつけがましい愛なら
持てない
そんな言葉に責任持てない
ただ、もしも
そうしなければ同じ世の
あなたの存在自体が消える
など
何者たるかは判らぬが
脅しをかけてきたならば
あなたには伝えずに
行なえているでしょう
紛らしにはなる、と
最後の愛など
口唇に吐いてくる輩
遠く冷めた目で撫でた
私だけども
今は日々、互いの生存に
これだけで生きているよな私だけども
求めるものは尽きぬけど
荷してしまうのは不本意で
真で繋がっているか否か
確認せねば判らぬような
愛に似た交わりに
もう興味など無い
性欲ならとっくに満たした