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緋文字の部屋  〜 新着順表示 〜


[113] 湯浴み
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何通りかの鎮め方は得た
沈みきることなく
浴槽は浅い
ひとりに休まり
うってつけだと
この場所を選ぶ

込み上げた熱は声にせず
上回る温度へと奪わせ流す

栓を抜き 何もない
吸い込まれる
幾筋かの黒を見届ける
いつもの呼吸で後にする

それでも 気を抜けば
決まった時刻に繰る

躰が冷えきるまで
眠らないのは
逸らさぬ事で
見えると信じた延長



楽にして、

安まる声に誘われて

冷えた足先浸けるのを
躊躇わないほどの
温い湯

こわばる躰
頭と背を胸にあずけ

ただ手の平で かけられる
湯の鳴らす
音を聞く

時折り触れる手は
欲を含まない
母のようで心地よい

何も交わさず

両手で掬ってみた

重みもあって温かく
透明でいて透明でない

自然と緩まり 解いた身

それを見守る 眼の中で

湯が返す
音だけを聴き
赤子の様な気分になれる


私の掬う 私の色の
内に包んだ 熱の行方で

せめて届くもの 温められたなら

2005/12/27 (Tue)

[112] 追憶
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既にその名で在ったから、
そんな理由でよいから
呼んでみよう
時だけ過ぎては
負荷として掛かるのを
払わなければ

開くこともないと
黒い蓋にさし置いてきた
あの鍵を取りに行こう

引き起こした一枚
握った手の中に残った
薄くなるばかりの文字
貴方より更に赤い顔で
3人分のサンデーを
食べ続けた寒い午後

中から見た外

あまりにも空風が葉を落としていくのを見ながら
理屈の解らない私には
それさえ理由に思えた程で

枯葉持ち帰り
燃される者があるなど
気付きもせず


千代紙人形然と仕立てられ
さも相応しげに一度きり
零したものも
ただの、口惜しさ

他所様の目とは何とも便利
近くにあろうが
遠くにあろうが
観たいままに視てくれて

自らを歪め続ける者にさえ
認めようとする者は在り
傍ら遮二無二生きている

或る朝、玄関先に置かれた
ヘラの跡ある精巧な雪塊

あれが夢だったような気がしてならなかったけれど

今でも繰り返し映るようで

あれが在った、という気がしてならないのだけれど

これもまた少しでも、と
私が歪めてしまっただけかもしれないけれど

呼んでみよう、

傍ら喜ぶ者あるなら
そんな理由でよいから

然し
僅かの親しみ含まず響き
届いてしまったら、
懸念が消えず
臆して喉元に残す

もう一度開いて手を置く為に、鍵を取りに行きました

機嫌よく聴いていた
貴方の顔を思い出したから

2005/11/11 (Fri)

[111] 月にかざして
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掌をひらいて
自分を示しみせた頃

夜道出歩いては
影を頼りに捜してもらう

紺碧ただただ深くなり
ついに
黒になってしまった

放つ光は
はんなりと
染み入りやすいよう
見好い様つくる
お月さま
あげる視線は真直ぐに
目を細めずとも
かなうから

ふらふらり、
抜け出した

ついてくるかな

息吐く処まで
連れて行きたいよ

いつまでもついてくるね
ひたすらについていくよ
一点から動かずに

あぁ
其処にいたの

帰り道
かざし見た掌は
小さく柔らかで
つまらなくて

今見てる掌は
あの頃よりは
大きくかたく

随分、これでも
マシになったのよ

ほんの少し月が滑り
今なら
掴んであげれる気がした

2005/11/11 (Fri)

[110] 阿漕ケ浦にて
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維持する様で
繋がれるより
動悸擬いでも
脈は早いから
駒並べって
盤の外から
自分置かない
こその御一興

疲れたの、
なんて小狡くて
嫌気がさした、
素直に言うわ
時間を返して、
阿呆らしいから
遣ったのってコレくらい?

八つ足軟体 九尾の牝狐
油を舐めてる
ところを見たわね
寝首を掻いてる
ところを見たよね
剥げ落ちてるのは
色着きの皮ね
そんなもん?
だけじゃあないの

気持ちいい、
しか求めてこなくて
シアワセ、
なんて笑えるの

震わせたのは 道端の花、
なんかであって

物を言ったから
気味が悪いの
見てる、と暈す
君が悪いの
それに縋る
私が悪いの

愛の言葉とか
吐きそうなのに
揺さ振られたって
吐きもしないの

遠退くまでおいていったら
遠くから見てまた嘲笑うの
一生懸かって奉公したら
七代祟って君を想うかも

温かい、を感じ過ぎて
流感みたいに
思っただけなの
躰が冷たい、
そう言ったわね
元々ずうっと浸かってたの
アナタモイッショニ
シズンデホシイノ

2005/11/02 (Wed)

[109] 47文字の愛唱歌
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呪う穴二つ
覗く穴二つ


オーで始まる47文字
ばあさまがくれた
魔除けの呪文
役に立つのは
世の闇ばかりか
うち寄る病みにも
効き目はあるさ

追われることに
なれちゃいないから
ほぅら、

逃げ出した


カサカサいうのは
衣擦れなのにさ
振り返りながら
闇を歩いて
コソコソ聞こえる
潜み声に
あんなにびくりと
屈んでいるよ

ふふっ、


小さい穴を
覗いたって
たいして見えやしないだろ
小さい穴から
覗いてみたら
意外に見えてるものなのに

朝には消えてるものだらけ
まざまざ見せるものだらけ
あいつはそれが怖いんだとさ

ふふっ、


ひとしきり笑ったら
今夜は届かぬ此処で眠ろう

2005/10/28 (Fri)

[108] 食事作法
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黙々と運んだから

何を食べたかとか
何を飲んだかとか
覚えてはいないけど

伏しては犬の様だから

何を見たかとか
何を聞いたかとか
流し込むことで
顔を上げていたけど

噛み続けたから

睨んだ色も
刺の動きも
手にした骨も
薄めた舌先でだけ知って

味覚は確かかと
目の前のモノ
中に入れなければ
皿の隅に追いやれて

こうも
下してしまえたから
何か 起こるたび
お腹が減って仕方ないのは
ただの名残りだ

気の済むだけ
喰らったら
拭って勘定
去るだけ

胃酸過多胃拡張


食いっぷり誉める貴方は
いつまでも鼻先に

平らげてしまわぬよう
どうか どうか
遠ざけた皿の上に

2005/10/26 (Wed)

[107] 柘榴
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仰ぎ見た時は割れていた
気付かぬ内
ざっくり、と

陽の射して艶々と
澄んだ赤色一つ一つ
手を伸ばしたらと誘い討つ

ぷつん、ぷつん、
潰して了え


耐えて堪らえて、
吐いて掃いて、
またその先で見ては
飲んで呑んで、

ずっと

身を置く先の小指の先程

束の間の出来事か
其丈か

去来することもなく
ただ居座り
在り続けた
生々しき感情

やっとの思い張り詰めた
薄い膜

飛び出してしまわぬよう

飛び出してしまわぬよう
丸め込む

下ろし金で削られていくようであったでしょうに

トクン、トクン、
とは打たない不律の脈で

突かれた穴から零れたものなど
まるで興味がない、とでもいうように


喉潤したのは
その度に

透んだ赤色
ぷつん、と弾けた
あなた自身だったのね

2005/10/23 (Sun)

[106] 夜伽話
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いつでも
仰向けに寝転べば

大小に白く光る輪の中
垂れ下がる
毛糸ボンボン

くるくる回ったから

 『先におやすみ』


そうっと扱わねば
破れてしまいそうな

藁半紙の分厚い本

その中のひとつの話が
大好きで

えんどう豆姫


挿し絵が少なく
余白には絵を描き足した

直ぐ読めてしまう短い話で

行間を埋めたり
終わらせないように
続きを書いた

毎晩変わっていくその話を
面白がって

布団の上で足を
パタパタさせながら
『よんで、よんで』と
せがんできた

妹の記憶の中
えんどう豆姫は
全く違う話のはずだった

元の話はどうだったか

覚えているかい


豊かだったねぇ
私たち

2005/10/16 (Sun)

[105] 子供の時間に
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目に残るのは

塗り重ねられた
わざとらしい
水色

踏んだあとに出来た
触ると剥がれる
赤錆色


用務員のおじさんが
用具箱にボールを集めて

鉄柵門に
金色の大きな錠前を掛ける

細く小さい私たちは
隅のほうの隙間から
スルリと入って

思う存分に
カンカン
鳴らして登っては滑って

貝殻混じりの砂場に
尻をつく

砂遊びするのにも
ビニール手袋が要った子は

滑るのが少し怖い、
と言って

暗がりでよけいに光る
砂の中のモノを
目敏く拾い集めては

ニコニコと笑ってみせた

戦利品の様に手袋につめて

よく
駄菓子を買いに行ったよね

君と遊んでた理由はソレさ

だからこうして
酒を奢る

2005/10/16 (Sun)

[104] female
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月明かり あれば
薄闇にもう少し
光りを頂戴

青白い輪郭
コレマデなら暗に
上塗りになぞる舌
無感覚よ
かえって、

月明かり なければ
スタンドの灯りで
照らして

恥じ入る余裕カラ
消して頂戴

執拗に求め 衝動は鎮め
より長く 触れるため
飽きることもなく

ただ
流し流されるものにさえ
脈拍が重なる

熱に浮上する
 痕
赤い羽根の様だと


記憶したいからよ
この躰で
その皮膚の薄さ その骨格その想い あなたの模様も

ただ
重ねて
薄まらないよう

滲んでいくのは 嫌なのよ

届かぬ日々思い返せば
幾の夜も
過ごせるように


あなたとなら噛み合える

2005/10/16 (Sun)
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