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緋文字の部屋


[136] 回送列車
詩人:緋文字 [投票][編集]

情けない
声になってはいなかっただろうか
勇ましく
聞こえたろうか

乗せて
遠くなった

幻想と回想と
現実の悔恨に
目を落とした
手持ち一枚
見たような顔が
目配せをくれて
それが
決められた合図のように
踏んだ

降りられなかったのか
降りなかったのか
乗り合わせたのは
同じ理由だったのか

並んで座って 触れたら
照れくさいだろう身体
小突きあって笑えたら

伝えたかった
言葉はどれも
これも君がくれたものと似ていて
苛立ちが湧いても
もう充分だ、と
その眼は深く頷くだろうけれど
ふがいなくて


少し、歩き疲れた
そんな日も
顔を見合わせては
何処までも歩けてた


どこか頼りなく笑う顔
思い 描いて
いま目の前
笑んでくれたら
満足した顔で
やはり後悔を
しただろう


揺られる間
あの時は
見ようとしなかったもの
見ていよう


そして今度は
手を振り 笑って

2007/03/09 (Fri)

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