| 詩人:凜一 | [投票][編集] |
なんにもない道を
ぷらぷら歩くのがすき
そうして
近所の倉庫の屋根の下で
林檎の紅茶を飲み
たばこを吸うのがすき
電線ごしの
雲を見るのがすき
なるべく
小さくすわるようにする
意味なんか
きっとないけれど
電線と電線のあいだの
はいいろの雲が
あたしのとこまで来て
あめを降らせればいいのに
と
いつも願ってる
そうして
びしょぬれの迷子になって
小さくすわって
震えている
かさを持たずにでかけた
愚かなこどもを
きっと
あの人は
むかえにきてくれる
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ハル
あなたを失って
泣いている彼の横で
私はただ
彼を
抱きしめたいと
思っています
大丈夫、大丈夫
病院のベッドで
あなたの肩を抱いて
何度も繰り返したセリフ
大丈夫、大丈夫
夕焼けのバス停で
彼と背中合わせに
何度も、何度も
まるで、自分に言い聞かせているみたいに
ハル
ズルイよ
彼はきっと
あなたを
一生忘れない
報われない想いを抱いて
独りで生きていく
そんな優しい人だから
喪服に身を包んで
あなたのお葬式で
私は泣いていたけれど
彼の震える肩を
ずっと
抱きしめたくて
仕方なかった
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あいいろの制服
あいいろの浴衣
あいいろのセーター
頬ずりしたいくらい
匂いたつ
まっすぐなあい
空気がつめたいよるの
星がみえないそら
あなたのせなかみたい
抱きしめたくても届かない
あたしの頬っぺたも
からっぽの あい
でも
やがて滲む朝焼けのように
そのあいいろを
うばって
食べてしまうよ?
全部
あたしになるよ
きっとね
そして、あたしは今日も首を伸ばす
朝焼けがくるまで
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たばこのけむりを
空にはいたら
ぽつり、と
あめが降ってきた
あたしが雲、増やしたな
ちょっと思って
ばかみたい、と笑う
それでも、きっと
ばかみたいな雨の空に
ばかみたいなあたしがいる
雲になって
空を流れて
あめを降らせる
がんばれ、あたし
それでいいじゃないか
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いま
この場所が、あたしとあなただけの宇宙ならよかったのに
あの日のしずかな教室ならよかったのに
ベッドの上ならよかったのに
あたしとあなたが
さっきまでのあたしとあなたならよかったのに
泣きたくなんてなかったのに
ほら
二つ並んだ長い影
さみしくてぎこちない背中を
夕焼けが見てる
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精巧なプラスチックの
ガーベラを
一輪ざしに飾って
きれいね、という母
お水はいいの、と幼い私
これは枯れない花よ、といってから、また
きれいね、という母
私は
はかなさが欲しかった
きれいね、といった
母の笑顔のように
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ある日
幼い私の手を引いて
お豆腐屋さんにいった母
くずれないお豆腐があればいいのに
ある日
幼い私を抱いて
食器屋さんにいった母
割れない陶器があればいいのに
閉園時間のない遊園地と
なくならないシャープペンの芯と
覚めない夢が
あればいいのに
夕方になっても
遊び足りない子どもの様に
恋人と
離れたくない少女の様に
母は
終わらない何かを
ずっと探していた
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僕は新しいものが好きだ。
服も
音楽も
新作コンプレックス。
古いものはいらない。
僕は新作に満たされる。
でも
おかしいな。
僕は新しいものが好きだ。
それでも
おさがりでもいいから
きみが欲しい。