詩人:niko | [投票][編集] |
ガラスの向こうで3匹の猫が足を止めた
僕はショーウィンドウの中から
ガラスの厚さを目で計っていた
1匹の猫が言った
「このガラス何センチだと思う?」
別の猫が言った
「分かるわけないだろ」
もう1匹が言った
「ガラスなんてどこにあるのさ」
そして3匹の猫は急に興味を失ったように
スタスタと歩き去っていった
僕はガラスに両手を当てて
その温度を感じてみた
ガラスはとても冷たかった
今度は目を閉じて額を押しつけてみた
やはりガラスはヒンヤリとしていた
ゆっくり目を開くと
ガラスの向こうにさっきの猫が
1匹だけいた
僕が猫の瞳をじっと見つめると
猫はクスクスと笑い出し
ガラスの方へ真っ直ぐに歩いてきた
そしてガラスを通り抜け僕の足元に座った
僕は驚いて猫に尋ねた
「どうやってこちらに来たんだい?」
猫は飽きれたように首を振りながら
またスタスタとガラスの向こうへと
消えていった
それから何年もたった今も
僕はまだこのガラスを
通り抜けられずにいる
変わったことといえば
その厚さを計ることを止めただけだ