詩人:柚 | [投票][編集] |
今にも降りそうな雨雲に
灰色に映える桜花
隙間から見える青から光が漏れ
照らされるのは緑の大地
もうすぐ暮れそうな陽が
群青色の中に沈んでいった
名も知らない気に咲く白い花が
微笑んでいる
そんな景色を見ながら
今日に寄りかかり
僕は明日を夢見て目を閉じた
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真っ暗で記憶からかき消された夢の後
起きた僕は泣いていた
ポロポロ ポロポロ 涙を流していた
内容なんて覚えていなくて
悲しいのか嬉しいのかもわからないほどに
胸の中にはただ真っ白があって
呼吸が苦しかった
泣いて 泣いて 呼吸が苦しかった
けれど心地が良い思いが
僕の中を満たしているようで
今 僕はこの世界に生れ落ちた気がしたんだ
朝日は僕を照らし
鳥の声だけが僕の中で響く
寂しいのか 切ないのか
なんだか感動してしまっているのは僕で
お別れのバイバイのように哀しく
出会いの初めましてのように
温かな気持ちが そこにあった
きっとそれは僕自身に伝えたいことで
自分とさよならと初めましてをしたんだね
蒼く高い青空が窓から見える
今日は快晴 雲ひとつない
僕は 僕で
僕だからここにいて
初めて世界に生れ落ちたような気がしたんだ
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私はこんなにもドキドキしているのに
涼しい顔してあんなにも
私を見つめているアナタ
なんてズルイの
一人余裕な顔で
私はというと
そんなアナタを見つめることすら
なんだか恥ずかしくてドキドキして
叶わないのに
とっても悔しい気持ちで
いっぱいになるじゃないの
一人余裕な顔されちゃ
なんだか落ち着かない
私だってドキドキさせたいのよ
アナタを私の色で染め上げたいんだからね
だからいつか不意打ちで
アナタの唇を奪ってみせるから
そして“愛してる”って
耳元で囁いてやるんだから
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黒よりも深い藍色の空
宝石のようにちりばめられた星が
遠くに感じた
オレンジ色の光の街灯の下
自分の足音だけが響いた
まだ肌寒い風が手にまとわりつく
向こうの駅のホームのアナウンスと
離れていく電車の音が
今日の終わりを告げるようだった
思い出し笑いして
一人にやければ
なんだか胸にも灯りがついたようだった
また 明日が来る
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誰にも見られない
灯りに照らされ
白いこの手をなぞるのは
桜の花びら
寂しさの心に
波紋を呼ぶように
静かな水面に
舞い落ちる
揺れる黒髪が
頬をくすぐれば
じわり じわり
世界がぼやけて見える
言葉にできない
胸の中の声
言葉にできても
声として出すことはできない
この気持ちはなんだろう
この思いはなんだろう
ただ桜が
僕の手をなぞるように舞い落ちる
真っ暗な夜が
僕をなだめて
眠りへと誘うけれど
君への思いで照らされた
心がそれを許さない
希望のない思いなら
どうか期待なんてさせないで
どうせなら
この桜の花のように
肌をなでるだけであって
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久しぶりに道を歩いた
とても暖かかったから
春色の風に誘われて
桜の花を愛でたかったから
そしたらさ
道の脇につくしを見つけたんだよ
何年ぶりに見たんだろう
全然思い出せなくて
今やっと僕は
実は世界のなにも見えていなかったと
気づいたんだよ
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そこには白い一羽の鳥がいた
まだ幼く 純粋なその瞳は
あの遠く蒼い空を映していた
求めるように鳴く声は切なくて
僕はなんだか泣きたくなった
そんな鳥を
たくさんの人が何も知らずに
傷つけた
ナイフのような言葉で
踏みつけるように
僕はそれを見つめてて
どうにもできなくて
周りのすべてが影のようになって
僕と鳥だけが色濃く世界にあった
人のざわめきがうるさい
僕は
思わず逃げ出した
無数の傷の鳥を見捨てて
ある朝
僕は白い鳥の元へ行った
後悔の思いに押されて
鳥のようにいつもより白い朝
鳥が居た場所には
一つのボロボロになった箱があった
その中に
あの白い鳥がいた
傷つけられボロボロになり
羽をもがれて
なお
その瞳は蒼い空を映していた
零れた涙は輝き
土に染み込んでいった
切ない声は僕らだけの世界に響き
白い鳥は
優しい顔をして
最期まで空を見つめ続けた
僕はその様子を
胸に抱くことしか叶わなかった
世界がまるで僕らしかいないような気さえして
もう
風の音さえ聞こえないほど
静かだった
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滑稽な愛に生きたピエロが居た
ある日のこと 愛を失った
愛を失ったピエロは
演じることができなくなって
いつしかあの蒼い空を
憎むことしかできなくなった
理想の夢に生きた旅人が居た
ある日のこと 夢を失った
夢を失った旅人は
道に迷ってしまい
いくつも分かれた道を
選ぶことができなくたった
人はなにで生きているのか
問うても答えは見つからず
自分に不安を覚えたのかもしれない
蒼すぎる空を憎んだのも
道がわからなくなったのも
僕 僕のこと
道端の野草が風に揺られれば
僕の髪も風に揺れた
自分の口ずさむ歌に
酔いしれながら歩く愚か者
ふと気づけば誰もいなくて
自分はこのまま消えてしまいそうだった
右の小道に入り
そのままどこかにいけるかと
けれどその一歩を踏み出せず
結局は決まった道を歩いた
もしも本当にここに僕がいるならば
誰か愛してると言って
誰か一人僕を愛してると言って
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自分は
実は誰かの夢の中にいるんじゃないかって
思うんだ
誰かが目覚めたら
自分は気づかないうちにパッと消えて
白でも黒でもない世界に
放り込まれてしまうような気が
してしまうんだよ
ゆりかごのような世界
本当の自分はどこにいるんだろうね