詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
カッコウの鳥の鳴くさえずりは
フルートの音色に
似てはいないか
きっと
楽器作りの職人も
その奏者たちも
どこかで
より良い音色の
雛形をと
それとは知らずに
そうしてきたのかも
しれない
だとすれば
船の汽笛が
遥か深海を旅する
鯨達の鳴き声に
似ているような
そんな感慨すら
疑う事を
忘れたくなる
そんな
大海原を
眼下に見下ろす
数百キロの高度
国際宇宙ステーションにも
きっとファンはあって
それは峡谷をすり抜ける
風の音ように
心地良いのかもしれない
物事を
分かりきって
いるつもりが
今までも
そして
これからも
しらずしらずの
うちに
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入道雲を
みている
仕事帰りの玄関先で
ただ空を
すぐにはわからない
呼吸のテンポ
肺が血液中に
酸素をばら撒くように
ゆっくりと
体中が満たされていく
淀むまいと、あらがうような
そんな空を
だんだんと
いなすように
ためらわず
たくましく
むくむく
むくむく
むくむく
と
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マイカーで
朝の出勤
フロントガラス越しに
ボンネットから
白い煙が出ているのが分かる
オーバーヒートだ
色々と頭に浮かぶ
これで会社に遅刻したら
有給消化とかでなんとかなるのか
動けなくなった車は
確か、車両保険とかで移動できたか
ラジオパーソナリティが
いつもより、どうでもいい話しで
リスナーをまくしたてている
気がして
自分があからさまに
イライラしている事に
情けなくなる
機械の事なんて
何にも分からないのに
ボンネットを開ける
アホか俺はみたいに
頭を叩く
通りすがる運転手達の視線が
恥ずかしさに
ガソリンを注ぐ
ケセランパサランに
なりたい
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死んでいるはずの
亡骸を
片足で踏み抑えて
餌食にする
矮小な心と体
抜け殻のような
自信の無さ
突飛に感じても
鈍り続ける
左手から
落とした
スマホ
足もとに
あったはずの
何かが
もう身体の一部に
なっていても
駐車場の
自家用車のタイヤに
新緑色の小さなバッタが
日射しに鮮やかに
へばり付いていて
憂鬱なの朝が
わずかでも
そうでも
なくなる
電線にとどまり
それらを
見下ろしていた
雀の瞳に映った
景色
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「映画は総合芸術だよ」
お前がそう話してくれてから
いったい幾つの映画を観てきたのだろう
青春、恋愛、戦争
好きな映画には名曲が寄り添う
「California Dreamin’」
真白な高波が
サーフボードも性も友情も
なにもかもかきまぜて
打ち寄せた
高校でお前と出会って
喜劇、ミュージカル、SF、ファンタジー
ラブコメ、サスペンス、ホラー
ディアハンターのテーマ「cavatina」
母子家庭で4人兄弟の長男
グーニーズのテーマ「The Goonies "R" Good Enough」
新聞配達
トップガンのテーマ「danger zone」
原付バイクが中型免許をとって250、400になり
プリティウーマンのテーマ「OH PRETTY WOMAN」
広告代理店に入社した
アニメも好きだった
「うる星やつら」の劇場版
「ビューティフル·ドリーマー」は
とても良かった
淀川長治は
映画をみる子供でしかない
生き方をした
いつか
呑んでお前が、お前の息子の前で
ひどく俺の事をからかった翌日
夜、俺は呑んでいて頭にきて
お前に電話して
お前を酷く罵った
それっきりだ
またいつかみたいに
映画の話しをしながら
58号線の海岸沿いを
二人でドライブしたい
免許をとりたてで
朝焼けに
窓全開で
炎のランナーのテーマを
大音量でかけていた
あの頃のように
名画に名曲が
無くてはならないように
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すっからかんとした
底抜けな
感じで
いいじゃないか
大空のどてっぱらに
胸のすくような
クシャミを
ぶっ放して
ほくそ笑めれば
もう少しましな
考えも浮かぶ
小便臭い苦虫は
紙飛行機にでも折りたたんで
通りがかったの子供達にでも
飛ばさせたらいい
にっちもさっちもどうにも
ピットブル
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月の出る夜が好きだよ
いや
どんな月でも
好きな
わけではない
うっすらと
ぼやけた月
大気が湿り気をおびて
そうなるのか
僕が赤ちゃんの頃の
母親には
紙オムツなんて無かった
白い綿の布を
汚れる度に
一生懸命に洗濯して
物干し竿に干して
太陽に殺菌してもらった
清潔なオシメが
あてがわられていた
母の性格からして
汚れたまま
放置された事は
ほとんど
無かっただろう
なんだろう
清潔な綿の匂い
月を
うっすらとぼやかす
赤子と綿のオムツ
何もかもが
ぼんやりと
しているのに
気持ちが良い
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ほんの
ささいな
出来事
外へ
出て
できるだけ
遠い景色の
見渡せる
場所へ
そうして
見渡して
眺めながら
深く
深呼吸すると
わかる
たいした事じゃあない
真上を飛行機雲が
ゆっくりとゆっくりと
伸びていく
室内とは
明らかに違う
大気のいわれが
鼻から肺
髪から服の裾
スマートフォンを
顔へかざした
腕と顔の間を
まったからしめる
いつも
感じている
どうして
こんなにも辛く
また
幸せなのかと
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机の上から
消しゴムが転がりおちて
弾んだ消しゴムは
君の足もとに
色鉛筆を
ザクザク、ザクザク、ザクザク
黄色と青と桃色も
鉛筆研ぎで
削りカスがゴミ箱へ
落ちていく
歩みよって来た事務員が
「銀行の方から、お電話です」
「はい」
なにげに汗ばんだ手の甲で
鼻の下を拭っていた
しっとりとした鼻先を
窓の外へ向けながら
眩しい梅雨の終わりの景色を
避けるようにうつむくように
電話を取った
ゴミ箱から
色鉛筆の削りカスの匂いがして
何も分からなくなりたい
衝動に耐えながら
君の足もとにある
消しゴムを
どうすることも
なく
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堕ちていく星の瞬
長年の技術職
中途半端以上にできるから
加齢で間抜けな素行があつても
手荒には扱えないらしい
少し向こう
誰かと誰かの会話が
自分の陰口ではなくても
さんざめく
紆余曲折
いい映画には
いい音楽がある
吐いた嘔吐物
泣いて
感謝
「洗濯物が沢山あるの
わかる」
「じゃあ、一緒に干すよ」
「毎日あるのよ」
「じゃあ、出来るだけ
毎日一緒に干そう」
室内干し
除湿機
でんぐり返り
訝しんでも
まだ死にたい根拠が
ない
でも
さんざめきたい