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遥 カズナの部屋  〜 新着順表示 〜


[307] 狼中年
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

車に
レジャー椅子を
放り込んで
とにかく
出かける

どこでもいい
息苦しい

会社には
昨晩から痛みだした
親知らずの抜歯の為だと
口腔外科へ行くのだと
大嘘ぶっこいて
有給取った
いや
本当は抜いた
痛みで一睡も
していない

抜いた昼さがりから
ほっぺたが
こぶとり爺さんみたいに
どんどんと
膨れあがっていく
いや
なんでもいい
とにかく
会社に行きたくなかった

その夜には麻酔が切れて
しこたま痛かったが
それまでの夕暮
海岸にレジャー椅子
同僚が仕事しているまっ最中に
最低さ
俺は最高だと思った
最低が
最高だったんだ

俺は
最高に
しょうもない
最低を楽しんだ

痛み止めを
もう
飲んでもいいだろ

嘘つきでも

2021/07/23 (Fri)

[306] 爪の垢を煎じても治らない
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

生活の為だとしても
仕事で指の爪が黒く
薄汚れているのは
快くはない

たまに
会社の若い女性の事務員が
どこかからの差入れを
皆に配るのだが
深爪に切り込まれた爪先に
それでも真っ黒い
爪垢のような汚れが染み付いていて
指先を差し出して
受け取る事が
どうにも恥ずかしい

なので、いつも
「ありがとうございます。いりません」
と断る

嫁には受け取らない方が失礼だと言われ
るが
嫌なものは嫌だ

いろんな思いが頭をよぎる

馬鹿が治る薬が開発されたなら
真っ先に被検者に
志願したい

蔑まれるのは
嫌だ

2021/07/17 (Sat)

[305] 仔猫
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車で
朝の出勤途中
次男を学校近くで
降ろしたやさき
次男はドアを閉めながら
「あれは、生きものなのか」と
話しが途切れた

何の事なのか
車を発進させると
すぐに気がついた

仔猫が車道の中央に
横たわっていたのだ

十数秒程の光景
 
尻尾が
不自然に立ちながら
痙攣していたのであろう
震えていた

通りすがりながら
それを見下し
私しは見た
口からは血が吐き出され
その時の私の表情は
きっと
誰のどんな期待にも
こたえられない

次男は
勉強がとにかく苦手で
と言うよりも
ゲーム以外に関心が持てない性格で
長男は
いたって勉強に集中できる性格で
弟が勉強が出来ない分を
補ってくれる程
いやそんな訳はない
理由で彼らを
縛ってはいけない
けれど
理由は彼らを
おめこぼししたりは
してくれない
私のせいにされたくない
私は

そうじゃなくて

仔猫はただただ
道の向こう側へ
行きたかった
それだけなのだ

2021/07/03 (Sat)

[304] 太郎
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犬の臭さは
よくよく撫で回してやった
指先を嗅ぐと
よく分かる

あんなに身近にいて
なにか、かっこよかった犬を
私は他に知らない

仲間の部屋で
よっぴで語り合っていた頃
早朝の犬散歩が日課だったようで
ついていく事にした

リードを付けられ
ゴールデンレトリバーに柴犬でも
混ざったような
ようは、ただの雑種の風貌をした
その後ろ姿について行く

すぐ近所の
門扉の向こうから
でかいシェパードが
がなりちらすように
吠えたててくる
毎日の事だそうだ
すると
べつに吠え返しもせず
3メートルはある屏を
助走をかけて駆け上がるような
そんなしぐさを数度か繰り返す
まるで
「いつでも、やってやるよと」
言わんばかりに

驚いたけれど
飼い主が肝を冷やしたのは
まったく別の話しだ
道の反対側からやって来た
散歩に連れられた土佐犬に
遮二無二に吠え盛った挙げ句
首輪がはずれて
飛びかかったそうだ
当然、あっと言う間に
ねじ伏せられ
殺されかけたのだと言う

それだけじゃない
台風がやって来た夜
犬小屋の杭が外れて逃げ出し
翌日には戻って来たのだが
近所の庭で飼われていた
雌のラブラドールレトリバーが
野良犬に妊まされた話しがあり
どうやら、どうやらのようで
証拠もあるわけがないが
子犬達の毛色やら目鼻立ちが
どうにも、そうだったようだ

散歩から戻ると
部屋で子犬のころの写真も見せてもらい
すっかり好きになってしまっていた

それから
県外の専門学校へ赴く事になり
電話では聞かされていたのだが
人を噛まない気性に油断して
ビーチで放し飼いにしてしまい
車道で車にはねられ
大怪我をしたとのことだった

夏休みで帰省したおり
さっそく仲間の家の庭を訪れ
名前を呼ぶと
力なく立ち上がり
後ろ足を引きずるように
歩みよって来てくれて
抱きしめるようにして
よくよく撫でてやると
涙でぬれた頬を
ペロペロと舐めてくれた

それっきり二度と会うことはなかった

今頃になって
どうしてその犬の事が
思い出されたのかは
さだかではないが
変わらずに
思っていることはある

「ありがとう、ありがとう太郎」

2021/03/31 (Wed)

[303] いなおり
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せつめい
からいどを
さがし
くみあげた

ひっち
はいく

野球
やりませんか

うんどうすると
かわきます

オーケストラの調弦
音は
文字なんかより
遥かに分かりやすい

球場にこだまする
打球音
みたいに

文字のられつは
小川の岸辺にしゃがみ込み
流れを
見つめるような
しらべ

だからかわいたころ

ちょうどいい

せつめいから
いたろうが

ここが
どこなのか

2021/03/06 (Sat)

[302] 時節
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鉄の皿に
ネジをばらっと放り込む
ジャラジャラっと
音が鳴る

寒くても
長袖のシャツは
仕事中
着たことがない
袖口が
汚れるから

春はもう
そこまで

春はもう
そこまで

2021/02/21 (Sun)

[301] 
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皿にこびりついた
食べ残しは
なかなか落ちない

深呼吸

あなたが家族の為に
食事を用意して
私が食器を洗い
片付ける

太陽と月が
代わる代わる
互いの意味を
探し合い
空を
拭いかえすように

朝、5時半に
私と子供達の
弁当を作る為に
枕元の
目覚まし時計が鳴る

共働き

夜、8時半頃
私は子供達と
自分の弁当箱を
洗い始める

よそゆきの言葉は
いらない

繰り返す
健やかな今日一日さえあれば

おはよう

いただきます

ごちそうさま

おやすみなさい

2021/02/21 (Sun)

[300] 地球
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新しい書き方があれば良いのに

ナメクジの
しっとりとした艶かしさ

どこか

この星

この
小さな
脳内

干潟で
翼を休める
渡り鳥

背後から
肩に掛かった
手は振り払い

なにか
唯一
理由があれば良いのに

屠殺場へ
運ばれていく
豚達

丸い回る
ジャングルジムを
思いっきり走り
誰かと
怖いくらい回し
どんどん加速して
もう手を離して
しまいたいくらい
何で、なんだとか
誰が、だとか考えられないくらい

遠心力で
体が外へと
振り回されて
握力が徐々に
耐え切れなくなっていく

冷や汗の滲む手のひらが
ついに鉄パイプを
滑り離す

楽しむために

2021/02/14 (Sun)

[299] 景色
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嫁が

嫁が息子の
手を引いて
保育園から
歩いて
帰ってくる

2LDKの
二階の
アパートの
バルコニーから
よちよち歩きの
息子の手を引く
嫁が

途中で抱っこされたいのか
泣き出して
座り込む息子を
しゃがんで
宥めながら
役場の前を通り過ぎ
私のもとへと
帰ってくる様子が
何年経とうが

今も

私を
奮い立たせている

2021/02/13 (Sat)

[298] 白紙
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こうして
何も書けなかった
引き出しに忘れた
便箋のように

いいなずけ

大草原
大海原

僕は
苺味のアポロ
忘れられたいコリドー
ゲッターロボ

嘘はない

2021/02/06 (Sat)
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