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遥 カズナの部屋  〜 新着順表示 〜


[273] 座標
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

何かに
驚いた時も
驚いたようなふりを
して
見せているように
感じてしまう

「洗濯機から変な音がするの」
「もう、買い替え時だよ」
「子供達の塾の授業料もあるのに?」

メガネのレンズを拭く
そして
掛け直す
アイスクリーム
昨日買ったそれを
冷凍庫から取り出し
舐め回す

船酔いを知らない人に囲まれた
船酔いみたいに
辛い

飼い猫が
何かをせがむように
足に身体を擦りつけていく

後悔と航海
理由の所在を思い巡らせる
いたたまれない衝動
登校と投降
音楽室のメトロノーム

誰にも怯えず
驚いてみたい


2020/04/22 (Wed)

[272] 
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

古井戸に石を落とす

耳を澄ます

何にも
聴こえない

何にも
思わない

エンドロール
ボクシング
ボイジャー

テーブルに落ちた水滴を指先で横に引っ張る

トレコロール
ガーゼ
キューブリック

空に落とされた
凧揚げの紐が指先に食い込む

タイフーン
アプリコット
ミレニアム

後悔ばかりたから振り返る気もしない

何にも無い

2020/04/12 (Sun)

[271] 性根
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

小さな頃から
嘘が好きだし
嘘しか
話す気になれない

耳のそばを蝿がかすめる

シーミーと言って
年に一度
沖縄では親族がその先祖の墓に
集まる風習がある

本当に見た事にしか
語る価値を感じない

母の実家の墓は
本島に寄り添う
ごく小さな島の丘のふもと
建ち並ぶ墓の中
団地のポストのような一角にあり

あたりまえみたいに訪れてきた

子供の頃から
なぜたが
自分達の墓のある場所から
上に登った事が無い事に
その日
登ってみながら
初めて気が付いていた

各階のような墓のある等列が
段々ごとに
整然と続いていたが
終点付近は
異様だった

蝿が
そこら中を飛び交い
犬小屋みたいな墓が
いや、ただのコンクリートの箱が
横に向かって二三十は並び
中にはコンクリートの蓋が外されたような箇所もあって
寒気と鳥肌を感じながら

わけもわからず

とにかく
その場をあとにした

帰宅してから

大雨が降りそそいだ
台風が近づいていたのだ

この嵐の夜が
何もかもを洗い流してくれるように
祈るように布団の中に縮こまり
何もかもが外で雨風に打ち震え
遠退いていった

今も毎年シーミーはあるけれど
もう二度と
自分達の墓のある所から上へは
行こうとは思はない

俺は嘘が好きで
懲りない方だと
思っている

2023/01/21 (Sat)

[270] 使い道
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

人生に
早送りのスイッチがあったとして
いつでも押せたとして
いつ押すのか

週末の休みの日迄の辛抱だと
仕事に喘ぐ日々
喘ぐくらいなら
早送り

望んで選んだ仕事ではなかったのか
馬鹿みたいなリプレイの押し問答
損なのか得なのか
笑われたいのか
笑えないのか
早送り

場面場面の
かくれんぼ
決して人生に巻き戻しは
妄想以外にはありえない
もう無理
早送り

母ちゃん
貴方が俺を産む苦しみの時
早送りできたらな
良かったのに
早送り

いつか来る
死ぬ間際の苦痛の絶頂すら
早送り

どうしてだか
それくらいなら
レコード盤に針を静かに乗せる
早送り
できないように

2020/03/20 (Fri)

[269] 片言
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かたこと
かたこと
かたことと

たどたどしい
この
かたことが

ひびいておくれ

かたこと
かたこと
かたことと

2020/03/15 (Sun)

[268] 
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海はいい

言葉の飾りつけなんて
全くいらない

戯言を
誰にも
許さない

波打つ
事を
滞らない

2020/03/15 (Sun)

[267] 在り処
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片言でいい
花咲きたい
見向きされる望みすらいらない
片隅へ投げ捨てられ
花咲く心地で
自分だけの中に
後悔の無さを
拠り所に
花咲きたい

咲く時期を逸した
蕾みで

2020/02/24 (Mon)

[266] 馬鹿言ってんじゃないよ
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十年程前に
会社を退社して
起業した二人の元同僚がいる
帰宅途中に
久しぶりに会いに立ち寄ると
あの頃に
タイムスリップしたみたいで

自宅兼作業場
狭く小さな会社だが
壁には二人で何処かの写真館で撮った
凛々しい写真が飾られている

顔にも言葉にも出しているつもりはなかったのに
二人の優しい気遣いが
ひび割れた心に染みわたり
本当に有り難いと思った

「俺もここで一緒に働きたい」
そう言いたい
ドブ川の傍らであろうと花は咲くし
晴れてさえいれば
水面に爽快な空も映る
でもそれは
俺から見た景色で
彼らにとっては向こう岸の人間の絵空事なのだ

帰宅して
ビール呑んで泣いて
眠る

2020/02/22 (Sat)

[265] 二人
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母の泣く声に
ふと目を覚ます

俺がかわってしまったから
なのか

父さん
俺が貴方なら
もっと労ってやれた
酒も博打も女もやらない
家に帰ると庭いじりと横になるだけの
真面目一徹の父親だった

人生が二度あっても
二人は互いをまた
選ぶのだろうか

母は奔放な子供らに苛つく毎日で
いつも不機嫌で
僕は優しくされたくても
自分が馬鹿なのがわからなくて
寡黙で動物好きな父親に惹かれた

親父が夜、隣にいないと
怖い夢ばかり見たから
親父が残業になったら
親父の枕を抱きかかえて眠るような
そんな子供だった

昨年親父は亡くなった
病院から実家に持ち帰った親父の亡骸は
ドライアイスで冷やされ
翌日にはカチンコチンになっていて
着替えさせるのに一苦労した

それは母さん
母さんが亡くなってから
15年後の冬にだよ
実家のタンスの母さんの引き出しから
誕生石の指輪がたくさん
山ほど出てきた
俺はやっぱり
今も馬鹿のままだた

2020/02/16 (Sun)

[264] ファミリー
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障子を貼り替えて
良い気持ち

給与を下げられても
手慣れた仕事は
順風満帆

家族と
どこへ
行こ

2020/02/11 (Tue)
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