詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
やりたいこと
やらざるべでなかったこと
ことを生んでしまいがちなころ
いま細かくみてしまう
その歪んで忘れえない
ただのこと
立ち止まり思い返してみても
どうにもうるさい
耳を引きちぎったこうかい
そんなうなばらへ
おやすみません
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指を噛んでみる
そのまま噛みちぎれるくらいまで強く噛んでみたい衝動があっても
歯型が残るくらいまででやめてしまう
夏休み
息子とのシュノーケリング
手を繋いで、足が届くわけもない水深になるにしたがい
私の手のひらを強く掴もうとする柔らかな指先の小さな感触
不安にさせないように
いったん海面に頭をあげさせる
夕日になる寸前の日差しが
まだ真っ青な頭上を擦り抜け
ビーチから
程遠くない場所に借りた白いコテージを照らしている
その、私の指先が指し示す方角を見つめた様子が
落ち着きはじめたのをみはからい
もう少し沖へ息子を誘う
ためらうな我が子よ
面白い事はたいがい
不安の向こう側で
指をくわえて待っているのだから
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鋭利な先端部分が高速で回転する
ハンドピースと呼ばれる道具を使い
毎日、毎日12時間以上を仕事に費やしいる
時々、時々不注意で指をケガしたりする
絆創膏を何枚も使って指先を
ぐるぐる巻きにして作業再開
酸素とLPガスのボンベをつかって
合金を1000度以上の高熱で溶かし
金属と金属を溶接したりする作業もある
ガストーチの先端から吹き出る炎は
高熱になるにしたがつて
順に、赤から青く白く紫ぽっくなっていく
絆創膏の下の傷口の疼きも忘れるくらいに
集中した作業が繰り返し、繰り返し
繰り返えされる
携帯が鳴る
「来週、そっちへ帰るから時間があったら二人て飲みに行かないか?」
「それもいいけど、それよりも釣りに行かないか?久しぶりに二人で」
「ああ、いいな、そのほうがいい」
「じゃあ、来週な」
「来週な」
来週迄には指先の傷も癒えるといい
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あんなにも笑っていられた
道端に捨てらたタバコの吸い殻
バースデーケーキを食べ残したテーブル
誰も居なくなった体育館
オートリバース
ハイファイ
pc8001
点と点から線が生まれ
線と線が文字を浮かびあがらせ
数えきれない文字達が
数えきれない文字にしゃにむに追いすがって
夕暮れだ
ブラウン管テレビの砂嵐が
粉々に吹き荒れ
スイッチをoff
なにもかも今はもう昔の漫画みたいだ
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湿地対の薄暗い
ようやく木漏れ日の射す
小川のほとりに
木がある
苔にまみれ
そこいらじゅうの腐った葉っぱやら
ミミズ達か蛆虫に近いかそれ以下の生命の助けをかりながら
生きながらえている
これに、もしも精神が宿っているのならば
人ごときでは
計り知れないおぞましい心もちやもしれぬのに
なのに人には
木は健やかに見える
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詩は
海原を背にし
空を見上げながら横たわる
二次元上の生と死の境目の煌めき
境目の、どちら側にいようが
こちら側と向こう側とで
お互いを魅力してやまない
波しぶきの立つ
ほんの一瞬の一滴の雫石の中
まばたく
生身の肉に包まれ
こちら側と向こう側とを行き交う
「お父さんはお前が好きだよ」
「そんな事、急にいわれても」
「いつも思っているから言うだよ」
イルカのような瞳で
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南の島では、ずっと
幸せを花にたとえて
めでてきた
たしかな事だけが
波打ち際に残され
砂の一粒一粒の年月を
裸足で踏みしだいていくうち
若返ってゆく
岸部に咲いたハイビスカスを
摘み取って、たむけ合おう
沖縄の初夏の始まりは
命を咲かせたい夏
詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
「お前は、人の忠告を聞けない」
皆によく言われてきた
だから
そうなのだなと、何度思い返してみても
どうにも恥ずかし気持ちが
わき上がらない
要するに嘘っぱちが好きなのか
そう言えば、小学生の頃
「俺んちの屋根から明け方にUFOが見えるんだ」
そんな話しをしてくれる友達の家に
毎朝、朝早く通って
一緒に薄暗い朝焼けの空を眺めていたっけ
東の空がぼんやりと明るくなっていく
もう、すっかりぬるくなったビールを口にふくむ
風よ吹いておくれ
後からではいやだ
今すぐ清々しく、たおやかに
そう
もうすくさ、もうすぐ
見たこともない
なにかが、見えるはずさ