詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
つながりを無くさない
理由がある
焼き鳥屋の店主にしか
見えない景色
女房は
イライラして出て行ってしまっても
俺にはもう少し
ここにようがある
注文した串焼が
もうすぐ
届く
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あの頃
君が渡してくれた灯火が
今も僕を疼かせている
君はいつも
人と違う事にばかりに
皆が
触れるように
皆が気がつくように
したがって
そんな
あんまりに傷だらけの君が
僕には
君へ心をどうしたらよいのか
わからなくなって
それっきりに
してしまった
旅は二人を大人はしてくれたようだけれど
お互いの距離は
全く変えてはくれなかったし
そんな事を思うこの心は
つまらないね
僕は僕にしか書けない
詩を
やっぱり書くしかない
そう
灯火は
消えてはいない
それが君にとって
嬉しいといい
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身を閉じた
蝸牛よ
なんでおまえは
そこにいるのか
よりによって
そこは
窓を閉じてしまえば
潰されてしまう
アルミサッシの額縁の内側の隙間だ
ぼんやりと薄い殻の中が透けて見える
小便をしながら
窓から覗く
ブーゲンビリアを背に
広がる青い空を見上げて
気持ちが良いのに
おまえはそこにいる
ビールの空き缶で
もう、ゴミ箱も満タンだ
ビニール袋にまとめて
リサイクのゴミの日まで
キレイにしまっておく
蝸牛も
外へ放り捨てやる
それでいい
そうしたいから
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何か掴むものを
川原で
頼ろうとしている
誰かではいやだ
あなた
ただ、あなただけ
あなただけが
ただ、私だけを
なんでもよくなくて
なんでもよくなって
私があなたなのか
あなたがわたしなの
はなさないでいて
誰なの
母さん
、
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ノートの狭間をさ迷う
メダカを見せたい
耳の奥まで水でいっぱいになると
薄くて透明な身体が透けて
心臓の鼓動に
気がつく
呼吸が小さな身体中の隅々までも躍動させ
大切な働きの繰り返しが
丸見えになる
ここでは
上も下もない
そこで
どうして
こうしてあるのか
物書きが
ありもしない
なくもない
チョロチョロと揺れる尻尾を揺らして紙面を生きる
そんな様を
、
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盲目の世界
血と金と人々の薄汚れきったプライドの蹂躙するこの地表の隅々を避けるようにして流れる
細く清らかな
せせらぎがある
文字はどこにあるべくして書かれてあるのか
指先に掴まえられたペンの先端
無垢な白紙の上を
理知と私利とあらゆる偏見にまみれた思想を避けるように
小さな小川が流れている
そこに
文字があってこそ
渇きを癒す
せせらぎがある
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女は雪の結晶のよう
男は抜け落ちた鳥の羽のよう
もう戻らない過去は
少女が胸に抱いた花束のよう
まだ見ぬ未来は
少年の瞳に映った高い木の黄金虫のよう
僕は扉の鍵を外す
彼女は目を閉じる
台所の湯気の香りは
窓から夕暮れの玄関先へと流れだし
帰る家がある幸せを
通りすがる誰にでもやさしく教えてくれる
「ただいま」
「おかえりなさい」
守ろうとするほど失うのに諦めてしまえば、いつのまにか寄り添っていて
きどってみせても
何かを落とせば格好がつかないし
だらしなくふざけてみせても
結局はみっともなくて
わかり合う意味が
ぼやけてしまう
恋愛詩は書きたくない
君以外だったから
あきらめてこれたのかもしれない
「夕食はなに」
「揚げ出し豆腐とサラダ」
「うん、ありがとう」
「お疲れ様」
「うん」
、
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でんぐり返り
潜望鏡を覗く
水平線に近かい高さだったから
飛び魚だろうか
なにかがかすめた
ただの風の波しぶきか
わかりたいまま
何度も何度でも
こうてんをしては
ぜんてんして
潜望鏡を覗きこむ
へとへとになってくると
赤ちゃんみたいにきごちない体づかいになり
後で思い返せば馬鹿馬鹿しい自分の様子に執着している
そんなはずないのに
やめる事ができない
新しい海はいい
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亡骸は濁点の蟻に担がれ運ばれていく
パラパラマンガのように
一文字、一文字が
誰かの自由の養分にかわっていく
山羊小屋は
十分に腐りきった肥沃な肥料は
こうなるだろうとわかる臭だけにつつまれている
そこへ僕を連れこんだ彼女を
後ろから下着をずり下ろすと
丸見えなサラサラとした尻の片側がひび割れ
踏み潰されたカタツムリの内臓を覗かせていた
この手に
握り潰すようにじかに味わいたくても
戦場の死人の、見開いた眼球の速度で乾き初め
フイルムカメラのシャッター音も間にあわないくらいばらけたピーナッツの薄い皮みたいに
パリパリと剥がれ落ちて
ちらばっていった
そんなやりとりの後
剃刀で互いにの体の毛を剃り合い合い
自尊心の固め合いがはじまる
「ねえ、皆が君の事をどう思っていのか、知ってる?」
ビールを一口、そしてもう一口、口に含めば
世界一周
「僕に乾杯」
言う事はもう、なにもないよ
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確かな事はいつでもこの手のひらの中で感触となって分かっていて
ガサガサとした、鋳造したての硬い金属を
それこそ舌で舐めても気持ちのよい硝子鏡の表面へ近づけていく
高速で回転する工具は
気を抜けば技巧物を弾き飛ばし、目にでも当たれば失明させるだろう
学校は夏休みだ
今年は家族でカヌーに乗る予定でいる
キャンプ場にテントを張り夕暮れはバーベキューをしながら迎えたい
日がくれたらなら、花火をやる
子供達のはしゃぐ様子が目に浮かぶ
宝くじが当たるといい
マンションのローンを返済して
車も欲しいし、旅行もいい
とにかく贅沢がしたい
金属は研きあげる途中途中、持ってはいられないほど高熱になる
素早く、水桶けに突っ込み「シュゥッ…」と水蒸気があがる
確かな事は
いつもこの手中にあって
硬く、熱く、そして
そのしんどさに
実感がある