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遥 カズナの部屋  〜 新着順表示 〜


[355] 焼け野原
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骨に
僅かに肉が
こびりついている

死んでしまった
理由は
食べられた

もうすぐ臭くなる

一昨日、切り傷にした
バンドエイドを剥がしとると
白くふやけた指先は
まだ、鈍く痛みもあり
乾いてもいない傷口は
かまってやる
余裕もないと
視線すら感じる
卑屈さがある

「もう、いいよ」
なんて
言うじゃあなかった
誰が食べてしまったか
なんて
どうでもよくはないけれど
どうでもよくならないと
どうにもならなくなって
しまうから

2022/11/12 (Sat)

[354] おこがましさ
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レジに並ぶ

老人が割り込むように私の背後に
並んでしまうと
「並んでんだよ」と
声がかかった
老人は丁重にあやまると
別のレジへと並んだ
それを見届けた目線を
声をかけた男へ向けると
私とは目を合わせようとは
しなかった

そうして
前を向き直し
見てみると
レジ打ちの女性が
打ち忘れた
小さな商品が
カゴの隅にのこされていて
「スミマセン」と、少し強く
会計を済ませるのを留めるように
声をかけ
手を商品へ差し向けると
何事も無かったように
彼女は
商品のバーコードをよみとり
買い物袋へと差し込んだ

会社では
ベテラン社員が退職して
パートだが
長らく勤めるおばちゃんが
朝から
周囲に人がいないのを見計らって
がなりちらしてくる
理由は、私の努力が足りない為に
まわりが迷惑している
との事だ
まあ、仲良しのイケメン社員が
人手不足で苦労しそうなのが
目に余ったのだろう
そういう事だ

こうして
書いてさえいれば
何かまたわかる事も
きっとあるだろう

2022/11/06 (Sun)

[353] あの頃
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風に揺られる様は
百合には
よく似合う

風というのは
勝手気ままが
あたりまえで
だれの
不平や不満なんか
どこへどう出されようが
平気な顔も見せずに
蹴散らしてしまう

きっと風は
君の事を嫉妬していたんだよ
自分よりも勇ましく
嫋やかで
それでいて儚そうな
その様に

もう少し書こう

忘れぽくて
嫉妬深くって
泣き虫で
えくぼが
素敵だった

僕は風にでもなって
ついて
いきたかった

風にでもなって


2022/10/30 (Sun)

[352] 空腹
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君の事を
食べてしまいたい
くらい

寂しい

夜空の星
深海の貝
辞典の字

ひもじい

こんな僕を
食べては
くれないか

寂しいんだ

2022/10/23 (Sun)

[351] 選択
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幸せだと
想う事は
悪い事ではない

視力と
味覚と
聴覚と

もしも一つ失うなら
どれを選ぶだろうか

誰でも
悩むだろう

私なら
味覚を選ぶ

贅沢な話し

2022/10/23 (Sun)

[350] いつか
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幾百億光年彼方の
写実
あまたの星屑の
点描画
渦巻く銀河の砂浜に
横たわり
そうした砂粒達にとりまかれた
頬や胸、手肌の肌触りを
追憶したい

ペタ、エクサ、ゼッタ、ヨッタ

数に上限がないように

ナノ、ピコ、フェムト 、アト

数に下限もないように

意味を残すと言う意味で
人は神には
およばないけれど
その距離は
いつか、きっと
推し測れる

そして
それは
そんなに
とおくも
ちかくも
なく
きっと
誰にでも
寄り添っていて
それは死かもしれず
誕生なのかもしれない

ただこうして
手のひらを
握りしめてみても
なにも、いや
指先の1本、1本が
人差し指やら薬指の爪先が
手の中でくい込んでいくと
「私には私がいる、私には誰よりも
なによりも、まず私がついている」
この実感がある

私はこれをひらいて
解き放つ
たとえなにも
残らなくとも




2022/10/29 (Sat)

[349] 流転
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引っ張られる方が下で
真逆の方が上
たったそれだけのこと
分かっていることは
ちょうど
がらんどうのようじゃあないか
目ん玉が飛び出た後から
脳味噌を垂れ流し
おかれた頭蓋骨の

さくさく
さくさく

踏みしめてきた
砂地
土星の円盤の渦
理不尽さの顔は
見飽きるのには
あまにも
いとまがない

いつか
動画再生出来る
銀河の絵ハガキの
表側の真ん中に
名前を書いておいて
おくれ

さくさく
さくさく

遠心分離して
満開に至れ

2022/10/15 (Sat)

[348] たより
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切手に薬きょう、蝉の羽
朝顔の種にハーモニカ

入れすぎて
ぱんぱんの
ファスナーのついた
筆袋を開いて
中のものを
じゃらじゃらっと
机にふり落とす

思い出してみれば
こんなもんじゃない
もっと、もっと
たくさん、詰め込んできた

サンゴと虹
おが屑やら豆電球
探検をした下水道を写したフィルム
ピアノの鍵盤
春や秋の余韻やら
月とか

ぐるぐると星座表を回す

真っ赤な現像室
ハンドルを無くした水道の蛇口
原付きとスタジャン
色とりどりの
バースデーケーキのロウソク
ダイヤル式電話の117の時報
菜の花の栞を差し込んだ
今しがたに
夏にも冬にでも
させられ
海へ飛び込んだ

星にも、ゴキブリにだって
なれる

すべからくは
一本のペンを
拾う為に

2022/10/02 (Sun)

[347] 愛機
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考えてしまう
しょうがなさ

ああであれば
もっと
こうであったなら
もっと、もっと
考えて、考えて
考えてはみても
抱き締めて、抱き締めて
毎日、毎日
考えながら
過ごしてみて
それよりもなにより
やっぱり

好きで、好きで
しょうがない

2022/09/23 (Fri)

[346] キャスティング
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物語は
誰の手のとどくところにも
きっとあって
それは
誰の事も
見限ったりは
しない

机からこぼれ落ちて
気づかれないままの
消しゴムですら
落とし主に
気づかれなくとも
間違いなくそれは
そこにあり
消えたりは
しない

消しゴムは
持ち主を
置いてきぼりにできず
始まりから
仕事をしている
胸のすくような
潔い
終わりたくない
終わりに
奔走する

掃除機にでも
吸い込まれたか
あるいは
猫が咥えて
とんずらしたか

いや
消えたりは
できない
消すのが
役割なのだから

物語を

消してしまうかどうかは
持ち主が
決める
役割なのだから

2022/09/19 (Mon)
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