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遥 カズナの部屋  〜 新着順表示 〜


[319] 待人
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

いつでもいい
どこであろうと
呼んではくれないか

俺の名前を

狭い路地裏
鈍い音がして
尻もちをつくくらいに
出っ張ったコンクリートに
頭をしたたかぶつけて
見上げると

俺の名前を
呼んで
腹が千切れそうな程
笑っていた

そんなに
可笑しかったか
ふらふらしながら
嫌では
無かった

俺の名前を
呼んでくれないか

そんなに
そんなに俺は駄目か

深夜に
闇鍋を外でして
低く垂れ込めた鰯雲が
大空を覆って
沈む月が
雲と水平線の間に差し掛かる
あんな荘厳な景色は
二度と見たことがない

また
俺の名前を
呼んではくれないか

2021/11/07 (Sun)

[318] 書面
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

書き手の
取り扱い説明書みたいな
文字がいやで
机をひっくり返し
椅子も蹴り倒すと
テレビまですっ転がって
消えてしまい
そのまんま
縮こまった
雑魚寝みたい

上っ面を引っ剥がし
恥知らずな寡黙ぶりと
よくよく比較して
二枚舌が三枚、四枚に
ベロベロ増えないように
どこらの雲のかたちに
チョキチョキ鋏で
刻んで
ばら撒いてやる

外反母趾
広大無辺
焼肉定食

何でも構いわしないさ
痛みで
飛び散って
分からなくなれ

何にもなれないまま

2021/10/24 (Sun)

[317] 集合住宅
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

カーテンを開いて

窓ガラスに
散りばめられた
雨風の水滴

冷蔵庫の音が
ダイニングまで
聞こえて来る

景色を眺めるのが
なにかしら好きなのは
どうにも変わらない

四階の端の窓からは
階段が目の前だから
誰かと目の合う事も
あるかもしれない

つまらない、よね

どうしても
こうして
いたい

理由を
求められる事が
何より苦痛だ

誰かの為に
いるわけでは
ないから

2021/10/17 (Sun)

[316] いつかの詩
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見たことを
どこへも
つれてはいかせたくない

赤い靴
履いてた
女の子

文脈が鏡だとしたなら

泣きながらかけだした
彼女が探す
誰かは
その痛みを
知らないから
無視出来るだけ
やや、朗らかで
ああ、泣きたくなる

二度とは言わないから
どこへも媚びへつらわないで
おくれ

赤い靴と
引き換えに
尾びれを得た
女の子は
人魚となった

大海原へ

そして、今日も
やっきな誰かに
探されてはいるが
むこうは
あなたを探している

たとえ
疎まれようとも

2021/10/16 (Sat)

[315] 血脈
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血飛沫のような
遺伝部質が
僅かに私にも
降りかかって
いたのかもしれない

言葉は実際
指先に感じる感触ほどに
思考のどこかしこの毛細をも
ゆき巡れる
と、言うよりも
疎通と言う意味において
具現化の手段としては
最も簡易的で
そうでなければ
考え事を
言葉に変換する必要すら
うまれまい

神と言う言葉は
誰にでも開放されたが
それは
言葉は神という
その形のあらわれに
他ならない


2021/10/10 (Sun)

[314] コーヒーゼリー
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次男が
釣り場で
ウンコを漏らしてしまい
公衆トイレで
履いていた下着とジーンズを
洗う

今日は
風が強すぎて
波も落ち着かなかった

誰かがトイレに入って来ないか
そうしたら、不快じゃないか

そんな事より、空は晴れている

釣り場の近くに
トイレも無いのに
誘った私が
悪いのだ

「ごめんなさい」

いや、それよりも
もっと
ちゃんと釣らして
やりたかった

もう昼過ぎ
帰りにパン屋で

「食べた事がない」

と言うので
デザートも買った

きっと、ほろ苦い
二人だけの
想い出になるだろう

2021/10/09 (Sat)

[313] 
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

思い描いていた釣り場の
理想があった
足場がしっかりした防波堤で
竿を出したかった
テトラポットからでは
怖いから、やりたくなかった

車を
海に向かって
どんと、後ろ向きで駐車して
それで、ハッチバックのドアを
開けっ放し
そこへ腰掛けて
竿を出したかった

そこそこ魚影もあって
家からそうも遠くなく
他に釣り人もまばらな
そんな場所

そして
少し歩けばの範囲で
大物も狙えそうな
そんな釣り場

やっと、見つけたよ

今日は初めて
羽根つき餃子を焼いて
家族にふるまう事も出来た

嬉しいよ


2021/10/03 (Sun)

[312] 餌食
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骨に
僅かに肉が
こびりついている

死んでしまった
理由は
食べられた

もうすぐ臭くなる

一昨日、切り傷にした
バンドエイドを剥がしとると
白くふやけた指先は
まだ、鈍く痛みもあり
乾いてもいない傷口は
かまってやる
余裕もないと
視線すら感じる
卑屈さがある

「もう、いいよ」
なんて
言うじゃあなかった
誰が食べてしまったか
なんて

どうでもよくはないけれど
どうでもよくならないと
どうにもならなくなって
しまうから

2021/10/03 (Sun)

[311] 降る
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集合住宅は
敷地の壁ずたいに続く排水が
突き当る壁に開く排水溝へ
流れる込む仕組みなのだが
最近は雨が
降らなかったからか
その排水溝が
猫の家族の住処になっていた

駐車場で
車から降り立つと

まるで塹壕からのように
仔猫の頭が、ひょっこりと覗いて
こちらの様子を
覗っている

飛び出した幾匹かが
じゃれ合いはじめ

立ちすくむ

仔猫や仔犬を見て
自然と触れようとして
近づいて
もう触れてしまっていたのは
いつまでの頃だったのか

分かりきった事は
どうしていつも
この内にとどまらず
気がつくとすり抜けて
こちらを
見つめてくれるのか

夜空からは
雨が
降りはじめていた

2021/09/30 (Thu)

[310] 別れ
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プラスチックやら
ビニールやらのゴミが
まだ
あまり無くて
ささいなものなら
どこへでも
投げ捨てられた頃

港で見上げると
圧迫感さえ感じる
客船が出港する

「ボーーーーーー」っと

汽笛が轟き
幾つもの色鮮やかな
紙テープが
空を背してたなびき
岸との狭間に
満開の
色とりどりの想いを
細長く撒き散らす

要らなくなったから
離れていくわけではない
握り締めた
紙テープの両端を
互いに

一度でもいい
血みどろの
殴り合いの喧嘩でも
やってみるべき
だったのかも
しれない

ちぎれて
捨てさるしか
無いくらいなら

2021/09/12 (Sun)
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