詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
夢をみたんだね
とても、とても
長い夢を
大きな青虫が
気持ちが
悪くならないように
細かな説明は
省いておくよ
とにかく
蛹になった
とても、とても
長い夢の中
青虫は
いつかは蛹の殻を破り
蝶へと姿を変える
はずなのだから
もしも、もしも
生まれてからずっと
なにもかもが眩しくて
目を閉じても瞼をすかして
眩しい光にさいなまれた眼が
初めて
漆黒の闇につつまれて
とろけるような
深い眠りに
おちてゆけたとしたならば
それはきっと
やすらがだ
そうしたら
びっしょりと濡れた
汗だくのシャツが
どうでもいいように
しっかりと
目覚められる
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いつか僕が
いつか僕が
1000編の詩を書き終えて
窓辺で空を仰ぎ
その空から
この目
この心に
何か
何かが
挿し込んできて
くれるといい
それは
全く誰の為にでもなく
ただ、ただ
全く僕だけの為に
「冷たい」だとか
「自分の事しか考えていない」とか
そんな
気がついたら
通り過ぎていてしまうような
話しではなく
かくあるように
「自分を孤立させる者は、あらゆる
実際的な知恵に逆らって、突き進む」
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嫁は
天ぷら屋で
パートの仕事を
していて
一日の終わる頃に
抱き寄せようと
すると
「油臭いから」と嫌がる
その匂いを
働いた証を
臭いと
感じた事は
彼女から言われるまえから
誓ってない
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あんまり
難しい顔をしながら
食べるから
久しぶりに
お腹が痛いくらい
笑ったよ
近頃は
変わったデザートもある
何が、どう、美味しいのか
新しいのはいいけど
美味しくないなら、ないで
それはもう
食べない方がいいよ
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半世紀以上
生きてみてすら
今日この日にみえる
夕焼けが
かわっているわけもなく
おもいだけが
たかなりようもなく
わなないている
崇高なことは
私には
手のとどかない
丁度、あの
燦然と輝く
夕焼けみたいなもの
だった
幼かった頃は
中が悪くて
喧嘩ばかりしていた
二人の息子が
肩を擦りよせ
スマホでゲームを
楽しんでいる
なんだ
こんな形に
うつりかわって
いたのか
過ぎさった
と言うより
手に入れてしまって
いたのか
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ひとでなしの
はじしらずは
きょうも
どうにも
どうも
なりはしない
ひとでなしの
おかまい
しらずは
はじをはたいて
みては
いくばく
いくとせ
いくよ
さくらがすき
あじさいがすき
ひまわりがすき
すすきもすき
だれもかれも
みんなすき
わたしが
きらいで
ないのなら
いい
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発音の
外側のほうに
余裕の残る
イントネーションがある
曲芸飛行と言えば
丁度いいのかもしれない
根幹は
アトミックなパワーを
残しながら
縦横無尽で精密な神経が
誰しもに必要な酸素量を
探して、行き渡らせながら
爆発しそうな衝動を
柔らかくほどいて
花束のように渡していく
どこにでもいるような
モンシロチョウも
案外と捕まえらない
しなやかに
キャベツ畑の上を
ふらついている
羽毛ですら
落ちてはいたとはしても
見ている側の
手応えすら捨て置いて
なんとなく冴えない風にさえ
翻弄されようと
消えはしない
願わずとも余韻は
残るのかもしれない
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書いているものに
人となりなんてものは
でてきやしない
いや、きっと
読み手の理想が
上書きされて
しまうんだよ
ユーチューブとかで
リゾートの動画とかをみるのが
好きで
せまっこい自宅や会社
うすのろな生活と
かけ離れた避暑地に
うっとりとしてしまう
美味しいものは
腹八分ぐらいが
丁度いい
満腹では
なんにもやりたく
なくなる
本当になさけない
嘘をつきたい衝動は
間抜けな性根が濃いほど
慎ましく折り目正しく
憧れへと登りつめようとする
その事にしか
慰めは見いだせないから
ようする私自身は
類まれな嘘つきを目指している
読み手の理想は
さておいての話し
詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
みたいものをみて
みせたいものだけ
みせるがいい
ボウフラがいる
血液で満タンの
頭蓋骨の中に
どこが上で
どこが下か
ききたいものをきいて
かぎたいものたげ
かぐのがいい
ぷくぷく ぷくぷく
体をくねらせ
浮かび上がる
なんの根拠もいりはしない
呼吸が出来る
方角へ
そうして、また
楽になったなら
また
深く深く
沈降していく
「ふれたい」
うつろ うつろ
ゆらり ゆらり
沈降していく
みたいものをさがし
みられたくないまま
みられぬまま
繰り返し
浮かび上がり
また
沈んでいく
ぷくぷく ぷくぷく
ゆらり ゆらり
「どうしてあなたはいつもそうなの」
「なにがだい」
「ぜんぶよ」
詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
どこを
どう見渡しても
地表の見えない
青い空を飛んでいる
飛行機のような形のものが
いや、両手を左右にしっかりと
ひろげた人か、十字架にも見える
形、その全体を
包帯のような白い布が
ぐるぐる巻きに巻き付けられいる
ところどころ、ほどけた包帯は
ヒラヒラとたなびいている
コップに水を入れて
卵を入れて
電子レンジで数分
茹で卵が出来上がると
考えて
コップを出して覗くと
爆発したみたいに
沸騰した湯と卵が
顔に吹きかかり
火傷した顔面を包帯で
ぐるぐる巻にした事がある
転校して
出席もまだ
していなかった
「誰にも見つけられたくない」
知られる必要を
探してもらうよに現れて
おきながら
公立の大学に合格した
息子の受験番号が
掲載された
合否判定が
ネットで
公開され
このさきの
ゆく先々書くために
机に近づいていく光景と
感情がある
つっぱねられそうな
風を感じながら
あれはまだ
まだ、青い空を
飛んでいる