| 詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
あんまり
難しい顔をしながら
食べるから
久しぶりに
お腹が痛いくらい
笑ったよ
近頃は
変わったデザートもある
何が、どう、美味しいのか
新しいのはいいけど
美味しくないなら、ないで
それはもう
食べない方がいいよ
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半世紀以上
生きてみてすら
今日この日にみえる
夕焼けが
かわっているわけもなく
おもいだけが
たかなりようもなく
わなないている
崇高なことは
私には
手のとどかない
丁度、あの
燦然と輝く
夕焼けみたいなもの
だった
幼かった頃は
中が悪くて
喧嘩ばかりしていた
二人の息子が
肩を擦りよせ
スマホでゲームを
楽しんでいる
なんだ
こんな形に
うつりかわって
いたのか
過ぎさった
と言うより
手に入れてしまって
いたのか
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ひとでなしの
はじしらずは
きょうも
どうにも
どうも
なりはしない
ひとでなしの
おかまい
しらずは
はじをはたいて
みては
いくばく
いくとせ
いくよ
さくらがすき
あじさいがすき
ひまわりがすき
すすきもすき
だれもかれも
みんなすき
わたしが
きらいで
ないのなら
いい
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発音の
外側のほうに
余裕の残る
イントネーションがある
曲芸飛行と言えば
丁度いいのかもしれない
根幹は
アトミックなパワーを
残しながら
縦横無尽で精密な神経が
誰しもに必要な酸素量を
探して、行き渡らせながら
爆発しそうな衝動を
柔らかくほどいて
花束のように渡していく
どこにでもいるような
モンシロチョウも
案外と捕まえらない
しなやかに
キャベツ畑の上を
ふらついている
羽毛ですら
落ちてはいたとはしても
見ている側の
手応えすら捨て置いて
なんとなく冴えない風にさえ
翻弄されようと
消えはしない
願わずとも余韻は
残るのかもしれない
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書いているものに
人となりなんてものは
でてきやしない
いや、きっと
読み手の理想が
上書きされて
しまうんだよ
ユーチューブとかで
リゾートの動画とかをみるのが
好きで
せまっこい自宅や会社
うすのろな生活と
かけ離れた避暑地に
うっとりとしてしまう
美味しいものは
腹八分ぐらいが
丁度いい
満腹では
なんにもやりたく
なくなる
本当になさけない
嘘をつきたい衝動は
間抜けな性根が濃いほど
慎ましく折り目正しく
憧れへと登りつめようとする
その事にしか
慰めは見いだせないから
ようする私自身は
類まれな嘘つきを目指している
読み手の理想は
さておいての話し
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みたいものをみて
みせたいものだけ
みせるがいい
ボウフラがいる
血液で満タンの
頭蓋骨の中に
どこが上で
どこが下か
ききたいものをきいて
かぎたいものたげ
かぐのがいい
ぷくぷく ぷくぷく
体をくねらせ
浮かび上がる
なんの根拠もいりはしない
呼吸が出来る
方角へ
そうして、また
楽になったなら
また
深く深く
沈降していく
「ふれたい」
うつろ うつろ
ゆらり ゆらり
沈降していく
みたいものをさがし
みられたくないまま
みられぬまま
繰り返し
浮かび上がり
また
沈んでいく
ぷくぷく ぷくぷく
ゆらり ゆらり
「どうしてあなたはいつもそうなの」
「なにがだい」
「ぜんぶよ」
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どこを
どう見渡しても
地表の見えない
青い空を飛んでいる
飛行機のような形のものが
いや、両手を左右にしっかりと
ひろげた人か、十字架にも見える
形、その全体を
包帯のような白い布が
ぐるぐる巻きに巻き付けられいる
ところどころ、ほどけた包帯は
ヒラヒラとたなびいている
コップに水を入れて
卵を入れて
電子レンジで数分
茹で卵が出来上がると
考えて
コップを出して覗くと
爆発したみたいに
沸騰した湯と卵が
顔に吹きかかり
火傷した顔面を包帯で
ぐるぐる巻にした事がある
転校して
出席もまだ
していなかった
「誰にも見つけられたくない」
知られる必要を
探してもらうよに現れて
おきながら
公立の大学に合格した
息子の受験番号が
掲載された
合否判定が
ネットで
公開され
このさきの
ゆく先々書くために
机に近づいていく光景と
感情がある
つっぱねられそうな
風を感じながら
あれはまだ
まだ、青い空を
飛んでいる
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書いて
想いが
伝わるなんて
信じてしまった
十字架のような
痩せこけようもない
案山子を背負い
見世物小屋を渡り歩く
貧素な心持ちを
隠すように着飾って
時のペダルを
ギコギコこいで
新装開店のビラみたいに
書いて、空高く
バラ撒いてきてやった
そりゃ、若いうちはよかった
そう言うと
そう見られて
見返そうとして
達観を気取ろうとしても
坂道
息が切れしそうになるのは
どうしようもない
くたばるのには
まだ、早いけれど
生き急ぐ気力も失せたなら
どうしたらいい
それでも
書いて
放り上げるように
バラ撒く
花びらが散る
情けないのは
そんなに
いけないか
ユダではないだろうに
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けれんみなんかしらない
ふくろうは
くろうもないのに
「ホー ホー ホー」
となく
なんとなく
「ホー ホー ホー」
となく
ためいきでは
ないだろうに
やぶさかではない
きりぎりすなんかは
「ギーチョン ギーチョン」
となく
きりもなく なく
「ギーチョン ギーチョン」
となく
やぶから
ぼうに とびはねて
おいてきぼりは
みんな
いやだろうが
「ホー ホー」
「ギーチョン」
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焼き芋を入れた
紙袋を抱え
夕暮れ時
家路を歩く
仕事初め
仲の悪い会社の同僚が
脳腫瘍だと言う事で欠勤していた
なんでも構わないから
「いなくなってしまえば良いのに」
と、常日頃、思っていた
あまりにも風が冷たくて
マウンテンパーカーのフードを被る
こんな寒さも
同僚が味わったであろう
痛みと不安はとでは
比較にもならないだろう
いつの頃から
人の不幸を願うように
なってしまったのか
いや、案外、小学生の頃から
いじめっ子の事を
そんなふうに考えていた
温かい紙袋と匂いに
気を取られると
もっと幼かった頃の記憶が蘇る
拾った仔犬を
もといた場所にかえしてくるようにと
母親に叱られ
姉に連れられ
泣きながら
近所の人のいない廃墟に
そのぬくもりを
置いて帰った
翌日、訪れると
もう、どこにもいなかった
同僚は内地から来ていて
故郷を捨てるように
この土地で嫁を貰い
移り住んでいた
「帰りたい」と
思ったこともあったのか
捨ててきたものを
取り返したい程の
耐え難い痛みがあったとしても
帰れる場所とひきかえに
ぬくもりを置いて
去れない勇気は
俺にはない
同僚の療養はきっと長くなる
人手が足りなくなる分
明日からは忙しさも
さらに増していくだろう
仔犬にしても、同僚にしても
それは俺ではなかった
もうすぐ家に着く