詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
あの空の星の瞬きに
ときめくとか
話す僕に
もっと
もっとちゃんとしろ
と君は胸ぐらを掴む
いやだいやだ
もっともっと
だらしなくしたい
ふらちに遊びまわりたい
詩のかくしんの
周辺は
あまりに
不穏でいたたまれない
その縁には
おびただしい
巡礼者の死体が
転がっている
そんな嘘が
書きたくなる
到底、僕にはできない
だって外では
あんなに
ほら
遥か幾億光年の彼方から
たどり着いた
星々のさんざめきが
美しいじゃないか
こんな
稚拙な文章を数百年、数千年、数億年
反芻する読み方もあっていい
貧弱な
読解を慈しむ
無限に他愛もない
先々も
きっとあって
いい
そっと
しておいて
おくれ
もう少し
空を
眺めていたいんだ
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仕事終わりには
よく
雲を眺める
この
世界の光景は
物質に光があたったとき
それぞれの特有の性質で
反射できる光の色が
そのものの色彩になる
夕暮れの雲は
白桃のようにも
それとも
グレーに近い紫陽花か
立ち止まって
空ばかり
眺めていると
通りすがりや
近所の誰かから
変わり者のように
見られているだろう
いや
なんでこんなにも壮厳で
どんな画家でも表現出来ない
ましてや文字になんて
しようもない
全天に描かれた
揺れ動く光と絵の具
色彩のプラネタリウムを
無視していられるのか
みんな
何を見ている
だとしても
どうして
俺は
いつもこうも
喧嘩腰なのか
きっと
被害妄想
なのだろう
夕映えの空
その美しさが
誰しもに
伝わっていないなんて
馬鹿げている
そんなわけはない
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車に
レジャー椅子を
放り込んで
とにかく
出かける
どこでもいい
息苦しい
会社には
昨晩から痛みだした
親知らずの抜歯の為だと
口腔外科へ行くのだと
大嘘ぶっこいて
有給取った
いや
本当は抜いた
痛みで一睡も
していない
抜いた昼さがりから
ほっぺたが
こぶとり爺さんみたいに
どんどんと
膨れあがっていく
いや
なんでもいい
とにかく
会社に行きたくなかった
その夜には麻酔が切れて
しこたま痛かったが
それまでの夕暮
海岸にレジャー椅子
同僚が仕事しているまっ最中に
最低さ
俺は最高だと思った
最低が
最高だったんだ
俺は
最高に
しょうもない
最低を楽しんだ
痛み止めを
もう
飲んでもいいだろ
嘘つきでも
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生活の為だとしても
仕事で指の爪が黒く
薄汚れているのは
快くはない
たまに
会社の若い女性の事務員が
どこかからの差入れを
皆に配るのだが
深爪に切り込まれた爪先に
それでも真っ黒い
爪垢のような汚れが染み付いていて
指先を差し出して
受け取る事が
どうにも恥ずかしい
なので、いつも
「ありがとうございます。いりません」
と断る
嫁には受け取らない方が失礼だと言われ
るが
嫌なものは嫌だ
いろんな思いが頭をよぎる
馬鹿が治る薬が開発されたなら
真っ先に被検者に
志願したい
蔑まれるのは
嫌だ
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車で
朝の出勤途中
次男を学校近くで
降ろしたやさき
次男はドアを閉めながら
「あれは、生きものなのか」と
話しが途切れた
何の事なのか
車を発進させると
すぐに気がついた
仔猫が車道の中央に
横たわっていたのだ
十数秒程の光景
尻尾が
不自然に立ちながら
痙攣していたのであろう
震えていた
通りすがりながら
それを見下し
私しは見た
口からは血が吐き出され
その時の私の表情は
きっと
誰のどんな期待にも
こたえられない
次男は
勉強がとにかく苦手で
と言うよりも
ゲーム以外に関心が持てない性格で
長男は
いたって勉強に集中できる性格で
弟が勉強が出来ない分を
補ってくれる程
いやそんな訳はない
理由で彼らを
縛ってはいけない
けれど
理由は彼らを
おめこぼししたりは
してくれない
私のせいにされたくない
私は
そうじゃなくて
仔猫はただただ
道の向こう側へ
行きたかった
それだけなのだ
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犬の臭さは
よくよく撫で回してやった
指先を嗅ぐと
よく分かる
あんなに身近にいて
なにか、かっこよかった犬を
私は他に知らない
仲間の部屋で
よっぴで語り合っていた頃
早朝の犬散歩が日課だったようで
ついていく事にした
リードを付けられ
ゴールデンレトリバーに柴犬でも
混ざったような
ようは、ただの雑種の風貌をした
その後ろ姿について行く
すぐ近所の
門扉の向こうから
でかいシェパードが
がなりちらすように
吠えたててくる
毎日の事だそうだ
すると
べつに吠え返しもせず
3メートルはある屏を
助走をかけて駆け上がるような
そんなしぐさを数度か繰り返す
まるで
「いつでも、やってやるよと」
言わんばかりに
驚いたけれど
飼い主が肝を冷やしたのは
まったく別の話しだ
道の反対側からやって来た
散歩に連れられた土佐犬に
遮二無二に吠え盛った挙げ句
首輪がはずれて
飛びかかったそうだ
当然、あっと言う間に
ねじ伏せられ
殺されかけたのだと言う
それだけじゃない
台風がやって来た夜
犬小屋の杭が外れて逃げ出し
翌日には戻って来たのだが
近所の庭で飼われていた
雌のラブラドールレトリバーが
野良犬に妊まされた話しがあり
どうやら、どうやらのようで
証拠もあるわけがないが
子犬達の毛色やら目鼻立ちが
どうにも、そうだったようだ
散歩から戻ると
部屋で子犬のころの写真も見せてもらい
すっかり好きになってしまっていた
それから
県外の専門学校へ赴く事になり
電話では聞かされていたのだが
人を噛まない気性に油断して
ビーチで放し飼いにしてしまい
車道で車にはねられ
大怪我をしたとのことだった
夏休みで帰省したおり
さっそく仲間の家の庭を訪れ
名前を呼ぶと
力なく立ち上がり
後ろ足を引きずるように
歩みよって来てくれて
抱きしめるようにして
よくよく撫でてやると
涙でぬれた頬を
ペロペロと舐めてくれた
それっきり二度と会うことはなかった
今頃になって
どうしてその犬の事が
思い出されたのかは
さだかではないが
変わらずに
思っていることはある
「ありがとう、ありがとう太郎」
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せつめい
からいどを
さがし
くみあげた
ひっち
はいく
野球
やりませんか
うんどうすると
かわきます
オーケストラの調弦
音は
文字なんかより
遥かに分かりやすい
球場にこだまする
打球音
みたいに
文字のられつは
小川の岸辺にしゃがみ込み
流れを
見つめるような
しらべ
だからかわいたころ
が
ちょうどいい
せつめいから
いたろうが
ここが
どこなのか
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鉄の皿に
ネジをばらっと放り込む
ジャラジャラっと
音が鳴る
寒くても
長袖のシャツは
仕事中
着たことがない
袖口が
汚れるから
春はもう
そこまで
春はもう
そこまで
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皿にこびりついた
食べ残しは
なかなか落ちない
深呼吸
あなたが家族の為に
食事を用意して
私が食器を洗い
片付ける
太陽と月が
代わる代わる
互いの意味を
探し合い
空を
拭いかえすように
朝、5時半に
私と子供達の
弁当を作る為に
枕元の
目覚まし時計が鳴る
共働き
夜、8時半頃
私は子供達と
自分の弁当箱を
洗い始める
よそゆきの言葉は
いらない
繰り返す
健やかな今日一日さえあれば
おはよう
いただきます
ごちそうさま
おやすみなさい
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新しい書き方があれば良いのに
ナメクジの
しっとりとした艶かしさ
どこか
の
この星
この
小さな
脳内
干潟で
翼を休める
渡り鳥
背後から
肩に掛かった
手は振り払い
なにか
唯一
理由があれば良いのに
屠殺場へ
運ばれていく
豚達
丸い回る
ジャングルジムを
思いっきり走り
誰かと
怖いくらい回し
どんどん加速して
もう手を離して
しまいたいくらい
何で、なんだとか
誰が、だとか考えられないくらい
遠心力で
体が外へと
振り回されて
握力が徐々に
耐え切れなくなっていく
冷や汗の滲む手のひらが
ついに鉄パイプを
滑り離す
楽しむために