詩人:高級スプーン | [投票][編集] |
スーツのまま寝転がり
フローリングの床の溝
長く伸びた爪を挿し
蓄まった埃を掻き出した
準備だけを繰り返す
時間は迫る
其処まで来ている
置かれた鞄も白くなる
過ちを一度
人生に一度
犯してしまえば終わりだと
馬鹿を言ったら
叱ってくれるか
弱る意識
少し寒いので
布団か何か掛けてほしい
遁れる術はまだあるか
罠もないのに動かぬ鼠
噛むのは長く伸びた爪
床に転がる埃と共に
日が暮れるのを
待っている
カナカナカナカナ
カナカナカナカナ
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胃も肺も皆無
肝臓も腎臓も心臓も
肝心な器官みな皆無
どういう機関か判らない
透明な四角柱
人一人入る大きさ
その中にある
空洞
見て見てと
見て見て見てと
光るから
診てみたら間抜けの空
看てみたら
そこで目が覚めた
やれ触手が生えたとか
やれ機械化されたとか
よくある後味の悪い夢
起きたら元通り
空っぽなのは頭だけ
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さっき買ったマッチ
箱から一本取り出して
月のない夜に
明かりをと
風が強く吹いて
火はすぐに消える
かすかなぬくもりは
足早に
手を繋いで
頭をなでて
そっと抱きしめて
キスをして
なんて
前にも言ったっけ
ねぇ
聞いてる?
心が冷えるの
お願い
少しでいいから
そばにいて
愛がないなら
言葉だけでも
家の中では
ハッピーエンド
皆で楽しむ
ドラマが終わり
枠の外には
いくら待っても
触れられない
火の中に映る
望みのように
人知れず心なく
消えていくのは
隣の部屋では
あなたが眠る
曲が終わっても
起きている人は
どこまでも悩み
時間は過ぎ
月のない夜に
伸びる影は
とても冷えているが
そのままで
一箱じゃ足りないか
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いつだって
キッカケは単純で
たまたま同じ場所に
集まっただけの僕ら
興奮しっ放し
不安と感動入り交じる
出会いに発情するお年頃
何かやらかしたくて
ウズウズしてる
青い青い
春の桜並木を突き抜けて
僕ら
どこに行く?
教えてくれっつったって
そんなの誰にも
分かんないよ!!
どうせなら
デッカイ事をやろうと
無知なまま
全速力で駆け出した
成功と過ちと
幸せと後悔は紙一重
ゴールに辿り着くまでに
僕はいくつ
大切を傷つけた?
ヒザ小僧は赤い涙を流す
それは輝かなくて
誇れるものじゃなくて
汚い許せないものに変わる
意味も目的も見失って
静かな場所へと消えた
理由になっていなくても
どんな人生が
素晴らしいか
まぶたを閉じて反省し
深呼吸したら
目を開けて
そこには新しい朝が
そうはいかないか
もう
どうやったって
無理だろう?
途中で勝手に諦めてお前
自分じゃなけりゃ
殴ってやった
自分だから
死にたくなった
僕の知ってる神様は
可能性について
うまく答えられない
いつもしどろもどろ
みんな経験が足りないんだ
まだまだまだまだ
まだまだ青い
このオシリも人生も
お前や僕の
取り柄はひとつ
生きていること
いつか死ぬから
今は生きろ
なぁバカ野郎
もっと馬鹿やろう?
思わずサブい
ダジャレを踏んだ
笑えよ
ちょっとくらいは
お前に響け
何かやらかしたくて
ウズウズしてる
青い青い
春の桜並木を突き抜けて
僕ら
どこに行く?
答えてくれっつったって
そんなの誰にも
分かんないよ!!
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一つ成し遂げたら
また一つ
二つ成し遂げても
また一つ
幾つもの山を越えたのに
行く手を阻むよう
目の前にそびえる
次の山
夜の風が木の葉を揺らす
かさかさと
静かすぎて逆に煩い
鼓膜も心臓も破裂しろ
俺も世界もパンクしろ
哭き喚きながら走りだす
最高速度
目の前には木が
貌から突っ込み
急停止
上を向いて吠えて走るから
エアバックは膨らまない
稲光
そして
広がる闇
マエガミエナイ
その直後
空から何かが降ってきて
なんなんだと
払い除けようとする
すると
ブンブン音がする
それに
ブスブス突き刺され
無数の痛みに襲われる
早くここから
立ち去ろうと
起き上がろうとするが
ダメだ
動かない
両方の目玉が熱い
潤む視界
いつの間にか
ここは湖か
空では星が飛び回る
頭がぼやけて
聞こえる笑い声
あれ俺どうした
おかしいな
泣いていたのに笑ってる
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もう青くない春
どこに行けばいいのか
迷ってる
道を閉ざされたんなら
ともかく
どこに行きたいのかも
分からない
幸せな悩みを抱え
誰よりも
不幸なツラをして
ため息ひとつ
ふたつみっつ
止まらない
この野郎
塵になって消えろと
ビールを一気
もう諦めたんだと
首を振る
もうダメなんだと
酔いが回る
それでも
頭から離れなくて
考え始めると眠れない
選んだ夢さえ
叶えられずに
急に死ぬのが怖くなる
もうこんな時間か
ふと君を思い出し
来た道ばかり振り返る
夏のクソッタレは
秋になっても
愚痴愚痴よく鳴いて
冬が始まっても
片付けられないまま
また春が来る
少し茶色くなってきた俺
未来は残り少ないぞ
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しかし
どうすることも
できなかったのか
生きるという明滅が
速すぎて気付かなかった
誰にだって
暗くなる瞬間があること
いつかは
消えてしまうことも
夜の闇には不慣れだし
とか苦笑して
言い訳にすら
なっていないね
その辺の猫のように
突然
お前は消えてしまった
戻る場所ならあるのに
残っているのは言葉だけ
この口が余計だ
だって
届いてないんだろう
悔しければ
目を光らせ
血眼になって捜せよ