詩人:カラクワト | [投票][編集] |
寒い寒い冬のそら
高く遠い星のつぶ
宇天を見上げ
人指し指と親指でこしらえたまる型に
おさまるだけの視界を切り取る
この少ない景色にどれだけの
願いが込められたのか
誰も明かしてはくれないけれど
星々は今日も飽きずに
輝いて きれいだ
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トイレに入って大を済ませた
一息ついて
手を伸ばした先には絶望
カランという不在の宣告
棚には虚無
日頃の不注意の具現
つまり
何処にもそれは見当たらず
呼ぶ誰かもいなかったのだ
どうしようもなかった
でも 選択肢は限られていて
どうにかするしか無かったのだ
それはいつだって
ジンセイのほんとうのかたち
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アクセル
アクセルアクセル。
過ぎ行くセカイは後方に
弾丸の如く
ぶっ飛んでゆく
加速続ける己はアクセル
過ぎ行く景色に目もくれず
地平目指して果てしなく
彼方の海まで駆け抜ける
フエル・アーダー
炸裂ダマシイ
一撃必死のフェイタルマグナム
加速し続け
速さを希求し
求めることのなかった流れ星
速度に憑かれた
漆黒の目には
何も見えはせず
誰にも見られはしなかった
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恋することは
狂うこと
ただの他人が
神様になる
運命はあの人の
胸三寸
檻の中に 理性
落下する 知性
平静の失踪
思惑の疾走
加速する キモチ
君からすると トモダチ
さりげなく 接近
が、敢えなく 撃沈
嗚呼なんて苦しみ
神様は
なぜ僕らに
こんな試練を
与えるのですか?
天使が囁く。
―それは 最後に祝福されるためなのです
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どうしようもなく ただ
頬を伝う
かなしい の結晶。
泣かないでと
差し出された 君の手には
青い ハンカチ
涙を拭って あたしは
気付いた。
彼はさっきトイレに行った
ということを。
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子どもの頃
秋に
トンボを捕まえ
いみもなく。
その両羽を左右の指でそれぞれ掴み
逆方向に引っ張り、
トンボは 無惨な死を遂げた。
そこにあったのは罪だろうか。
それは悪であったのだろうか。
どんな理由があったというのか。
子供の無邪気があったというのか。
そこには罰が有り得るだろうか。
それとも責任が残るのだろうか。
いいや。
其処に在ったのは
ただ
引き裂かれたトンボの肉だった
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青い鳥を飼おう
そうすれば、シアワセが訪れるに違いない
そういう訳でペットショップに行ったら
思いの外 値が張った
やっぱり買うのは よろしくない。
雀は意外に簡単に捕まえられた
青いペンキにドボンッと入れたら
しんでしまった
悲しいが しかたがない。
しょうがないから愛犬に
青色ペンキを塗ってみた
非常に不本意だが
背に腹は代えられぬ。
しかし彼はもはや犬ではなかった
もちろん青い鳥なぞでもなかった
それは恐怖の蒼色。
欲に まみれた ナニカだった
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朝の忙しい時間
エスカレータの真ん中で止まる男がいた。
そこで停止する人波
彼は 老いていた
いらついた しかし 無言の感情が鬱積し
腐敗してゆく
男が上に着いても醜陋な腫瘍は消えず
衆人の時を搾取する
それを横目に
階段者は義憤に憤る
けれど それが。
エスカレータの本来の構造だった。
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飴玉ひとつ
口に投げ込む
ガリリ ガリリと歯で噛み砕く
これが、いい。
姉が口を出す
飴は噛まずに舐めなさい
噛んだら歯にくっついて
虫歯になって しまいますよ
馬鹿だな
飴は噛むから甘いんだ
いいえ 飴というのは
口の中で味わうものなのですよ
いつ誰が決めたのか
律儀でどうしようもなく愚かなひとよ
それは僕にとって
噛むから旨いものなのに
それが わからなくて。
貴方が口にしているのは
ずっと ずっと
綺麗なままの ビー玉
そのことに気付かない。