詩人:高級スプーンあと何年 | [投票][編集] |
新しい食事を買ったよ
そこのコンビニで
食べにくかったけど
歯を一本抜いたくらいじゃ
味は変わらない
食欲はありのまま
汚い箸の持ち方で
腹を満たす
昨日と同じように
それ以上でも
それ以下でもなく
心は動かず
脈を打つだけ
ただそれだけ
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平等に
平等に
等分に
寸分の狂いもなく
切り分けられた
あなたの狂気が
甘味を含んだ錠剤みたいで
噛まずにぬるりと喉奥へ
入り込んでゆく
明日
苦しむとしても
やめられないこの行為
ドカ食いなんて
ダサい呼び方はしないで
名前を言ってよ
甘い甘い
甘ったるい声で
濁音のつかない
私の名前を
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まだ生きたいと苦しむ人々に
僕の明日を配れたら
罪悪感を抱かずに
安らかに眠れるだろうか
無理な願いだ
笑えるよな
笑えないけど
一睡もできずに朝を迎えた
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人を殺した夢から醒めて
現実ではないことに安堵した
なぜ隠そうとする?
なぜ逃げようとする?
取り返しのつかない罪を犯している
気付いていても目を逸らし
贖おうとはせず目を瞑る
そうして見る悪夢が
わたしを人殺しにさせるのに
無かったことに
しようとしても
己からは逃れられない
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生活が困窮しているから
人には言えない
恥じらいがあるから
充電しても電源が落ちるから
それらの足枷をうまく利用して
動かない言い訳の
ゆるしを乞おうとする
気分を変えようと立ち上がるも
拘束されているのを忘れ
もつれる脚
転ける私
錠を解く鍵を溝に落として
今日一日を終える
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指折り数える合間に
終わってしまいそうな余生
ゴールはもう
視認できる距離にある
立ち止まる暇などない
この夜更かしに何の意味が?
問いかけるのも虚しい
考えるのも煩わしい
空白を過ごす
これ以上割く時間もないのにね
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今にも消え入りそうな炎は
しぶとく明日もゆらめいているのだろう
桜の最後の花びらだとしたら
華麗に散りたいが
生き後れたこの姿はどうだ
そんな傲慢な考えを捨て
白昼夢の部屋から外に出ろ
寄り添う人の手を払い
傷つけ涙を流させた過去は消えない
うずくまるほどのつらさだったのか
誰も覚えていない父の背中より
狭い視野に映るドラマ
特別感のない苦悩に己を重ね
動かない私は未だ透明な不鮮明
今にも消え入りそうな炎は
しぶとく明日も揺らめいているのだろう
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清濁合わせ呑むのは
さぞ不味かろう
ましてや
他人が犯した過ち
自分の業のように
飲み干すのは何でだ?
誰にも見放された俺を
見据える両眼に宿る光
茨の道より険しい針の筵を
傷つきながらも避けずに
進んだ覚悟が見える光
そこからどうやって逃れようか
考える思考さえ放棄した
人間をやめた何者かに
あたたかいミルクを一杯
その温もりを啜るのは
さぞ美味しかろう
堪える涙を零さなければ
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街灯のない
知らない道を歩く
この手の絶望を
味わっても
朗らかに笑える人
には描けない
あなたの絵が好きだ
争いが苦手でも
ナイフを握れば
それ以上に鋭くなる眼
生きるのが苦手でも
捨てられずに
執着するのがお前だ
心奪われても
命までは捧げられず
程度が知れる好意に
笑顔も引き攣る
あなたには関係ないけれど