詩人:猫の影 | [投票][編集] |
許されない恋をするなら
それはとても幸せなこと
傷つくことも
傷つけることも
どれも浅く弱く
戯れのよう
ただその人の笑顔
それだけのために
今日を生きることができる
報われない恋をするなら
それはとても美しいこと
恨みやつらみ
妬みも嫉みも
すべて諦めて
受け入れられる
ただその人の幸せを
それだけのために
日々を生きていくことができる
何も望まない
何も要らない
あなたすらも
求めない
だからただただ
幸せでいて
笑顔でいて
それだけを祈っている
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落ちた恋のことを
いくら考えてみたところで
その吐息はもう確かにあって
畳まれた洗濯物
奏でられる三重奏
空振るバット
世界は不思議とそのまま停止して
触れた感触はざらりとしたまんま
闇の中へ溶けていく
落ちる恋のことを
あれこれ切り貼りしてみたところで
その消息は確かに聞こえていて
洗われた食器
岩に染み入る蝉の声
空を切るバット
世界は平然と世界然としていて
空に手を伸ばしても掴めない
溶け出す闇を掬う
落ちた恋のことを
いくら考えてみたところで
その吐息はもうそこに在って
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ポロリ落とした林檎が
グシャリ音を立てて地に散った
涙が出た
林檎の為じゃない 自分のために泣いた
生きるということは、
産まれて
熟れて
そしてポロリと落ちて
グシャリと散ること
そんな単純なこと
そういうシンプルなこと
涙を落ちるままに砕けた林檎を片づけた
箒で掃いて
洗剤を付けた雑巾で拭いた
林檎のあった場所には何も残らない
香り一つも残さない
生きるということは きっと そういうこと
きっと そういうことだ
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小さくため息
まただ、よそうとおもってたのに。
深い深い緑
まただ、この季節がやってきたんだ。
くりぬいたようにぽっかりと
あの日々の感情が虚しくなっていって
春の終わり 夏の始まり
僕の心は微笑みを忘れている。
ふわりと一息
まただ、うまく煙が吐けない
焼き払ったように荒涼と
僕の感情はくすぶりもしなくって
春が終わり 夏が始まる
心はただうつむいている。
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ふわりと笑顔になる僕
何を思ったのかは忘れた
くるりととける煙
何本のんだかは忘れた
過ぎ去った時間
擦り切れるほど再生
繰り返して繰り返して繰り返した
で、またどっか
またどっかへ
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ぼくはぼくのうたうたう。
いつかきいたメロディにのせて。
ぼくはぼくのうたうたう。
君への想いものせてさ。
君の顔を僕はあまり好きじゃない
どちらかというともっと小顔がいいな。あと受け口じゃないほうがいいし、ええと、もっとシュッとしてるのが好きなんだ。
ぼくはぼくのうたうたう
いつかきいたメロディにのせて
ぼくはぼくのうたうたう
君への想いものせてさ。
君は靴した半分抜いで歩くのが好き、さらにそれを布団の中で脱ぐのが好き。亀と話しては笑い、亀から僕に挨拶をさせては笑い、かなしそうな顔したかと思うと笑う。
そんな君が好きだー
そんな君が好きだー
ぼくはぼくのうたうたう
いつかきいたメロディにのせて
ぼくはぼくのうたうたう
君への想いものせて。
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あのときの笑顔も笑い声も、
あのときのぬくもりも安らぎも、
安心して きっと色あせて きっと忘れてゆけるから
あの日見た夕焼けや夜の星も、
あの日見た幻や未来も、
安心して きっとすり切れて きっと消えてしまうから
ありあまる喜びも
零れ落ちる哀しみも
抱きしめたい幸せも
噛み締める苦しみも
いつか いつか いつかきっと
いまに いまに いまにそっと
歩いてゆく
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足取りが重いのは疲れているだけじゃないはずで
発光ダイオード
目に染みるのは 特に意味がないみたい
目線を落として歩くのは、特段首が重いってわけじゃ
発光ダイオード
ところどころ切れているのにも
多分意味なんてない
滲んだ光のように なあ
描いたはずの夢のカケラ
今まだポケットに入ってんだ
どうしたらいい なあ
どうしたらいい
ため息が多いのは苛つくことが増えただけってわけでもなく、
発光ダイオード
この光はどれくらい息が続くのだろうって、
また意味のないことを
滲んだ明日を なあ
描いて捨てた夢のカケラ
まだ集めて重ねようぜ
たまにはいいじゃないか
たまにはさ
いいじゃあないか。
発光ダイオード
今日も小さく輝くんだ
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残った傷痕をなぞるように
過去を目蓋の裏にあぶりだす
切ないほど気持ちよく僕は笑い
その隣には君がいる
君の残像を愛でて
足りない部分は苦痛で埋めて
マゾヒスティックなやり方で
少し自棄なのかもしれない
それでいいと思う
あり得た未来を下手なタッチで描き出しては破り捨てる
そのチクリとする執拗な痛みが心地よいのか
足は一歩も前に出ない
悲劇的に自己愛的な生き方をしている
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星はどこかに押しつぶされて
月の光は届かない
矛盾や裏切りを抱えて
僕らの胸はジクジクと痛む
傷口はうまく塞がらない
君の笑顔やよく汗ばむ手の平も
その全てを抱きとめたくて
どんなに血が流れても
そのために何を失っても
それだけは守りたくて
生命はまんまと削ぎ落とされて
声もふるわない
思い込みも真実すら呑み込んで
僕らの胸はジクジクと痛む
傷口はいつまでも濡れている
君の声もよく涙流れる目尻も
その全てを受け止めたくて
どんなに馬鹿げていても
そのために蔑まれても
それだけを守りたくて
矛盾や裏切りを抱えて
僕らの胸はジクジクと痛む
傷口はうまく塞がらない
それでも、僕らはこの手を離さなかった
離せなかった、この手だけは