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猫の影の部屋  〜 新着順表示 〜


[517] 君の名を呼ぶ。
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かさついた肌に、何かを染み込ませるように、ゆっくりと、君の名を呼ぶ。

風が喉を駆け抜け、大気を震わせる。

それは草木を揺らし、大地を豊かにし、空を晴れ渡らせる。

星が瞬き、月がぱっくりと夜空を割る。

指先でそれを感じとったら、冷めた野菜ジュースを口に含む。

世界を吸い込んだら、また僕は君を想い、玄関をでる、そういう寸法だ。

2011/07/17 (Sun)

[516] 冬、月。
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冬の寒さを思い出したように

凛と浮かぶ月を見上げた


広げた手の平の肌が軋む

少しピリリと音を立てる


肩をすくめるこの時間が

思いの外素晴らしいことのように

思えて

思えた



冬の寒さを噛み締めるように

凛と澄んだ風を吸い込んだ


吐いた息が宙に溶ける

クルリと輪を描いて





冬の寒さを思い出したように

凛と浮かぶ月を見上げたんだ


2011/01/20 (Thu)

[515] 冬の記憶。
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肩をすくめ 自転車を漕いだ

いろいろなものが 肌を突いた



なくしてしまったものは

見つからないまま

手に入れたはずのものも

見当たらないんだ


人は年を経ると大人になるという

うまくいかないこともあるもんだと

俯いて笑った



しまっていたセーターを出す

余計なものまで零れ落ちた



忘れていたはずのことを

思い出してしまって

覚えていたはずが

引き出せなくなった



人は年を経ると忘れるという

うまくいかないこともあるもんだと

空を見て笑った




人は年を経ると笑えるという

うまいことをいうもんだと

君を見て笑った

2010/12/09 (Thu)

[514] 奇形。
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大人になりきれない

歪な体を引き摺っていた


手を伸ばしても

届かない所以か


わかりゃしないぜ

君の気持ちも心持ちも

わかりたくもない



子供にもなりきれない

奇天烈な体 抱えていた


頭をカラにしても

汚物が残る故か


信じ切れやしないんだ

ヒトの建前や体面も

どれも嘘にしかみえない



歪な体 あちこちが痛い

泣いて叫んでも 奇妙な声が出る



足掻いた指先が 空を掴んだ

2010/11/29 (Mon)

[513] フラグメント。
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住み慣れた町の空は

妙に優しくて


流れたものを

冷たく光る月には

見えないようにしたんだ


引き裂いた大切なものは

きっと元には戻らないだろう

そう思うことにした



何も見たくなかったのだ

だから空を眺めた


消え入りそうな星を

なぜだか掴もうとした

届かないことなんて知ってた


叩きつけた大切なものを

その欠片を拾い集めた

それしかできなかった



吐き出した煙は

夜の空に溶けたろう


大切なものの欠片を

手に抱えて歩き出したんだ

そうしようと決めたから


そう思ったんだ





2010/11/25 (Thu)

[512] 羨望、嫉妬、受容。
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するりと抜け落ちる音

その鮮やかさったらない


ストンと腑に落ちる音

そのまろやかさったらない

指に巻つけた糸

あなたにはほどけるのかしら



憎んだところで

なにも変わるわけもなかろう



不敵な笑みを浮かべてみた

がしかし、うまく描かぬカーブ

口角が引きつったのさ

引きつったんだって



クルリと風を切る音

その軽やかさったらない


僻んだところで

なにも、なにも、なにも


素敵な笑みなど並べてみた

ところで、うまくいきやしないんだ

方角が間違ってるぞ

間違ってんだって




どう転びたいのだ



2010/11/19 (Fri)

[511] 閉じた目。
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頭を抱えて伏せていれば

なんとかなると思ってた

どうにかなると思っていたんだ



遠のく君の想いに気付けないで

僕はしたばかり見ていたから



明日どうしようとか

夕飯何にするのかとか

そんなどうでもいい会話

できなくなるんだろうか

だろうかと




頭を抱えて書きつけていれば

なんとかなると思ってた

どうにかなると思っていたんだ



遠のく明日の風に気付けないで

傷つけないでと、そんなことばかり




裂けた皮膚から

何かが零れだした




頭を抱えて伏せていれば

全てがうまくいく

うまくいくはずだと、

そんなことばかり信じていた

2010/11/16 (Tue)

[510] 夜 歩く 。
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口ずさんだメロディ

夜の闇に溶けていく

ほっとしている自分がいた


歯に挟まったメロディ

どこかでやり残したこと?

思い出せない自分がいる



夜の道を歩き歩いた

探し物を探しにさ

ようやくだ 君の影を見つけた

で また溶けていった





鼻についたメロディ

忘れていた記憶だろう

荒んだ顔の自分がいる


夜の町を歩き歩いた

君に贈る首飾り探しにさ

ようやくだ 君の笑顔見つけた

で また溶けていくんだ





夜の町を歩き歩いた

探し物を探しにさ

どこかでやり残したこと?

で また溶けていく

2010/10/24 (Sun)

[509] 傷口から熱。
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少し寒いので、ダウンを着た

ベランダにイスを置いて、煙草を吸った

メンソールの香りが、鼻をさす


見上げた空は、優しく星がまたたいていて、

紳士的な黒が、その後見をしているようだ


思い出すものが、楽しい思い出ばかりだった

2人で見た後楽園のライトアップ

初めて渡した誕生日の贈り物

震えながら重ねた唇



うまくいかないことの方が多い

いつか好きだった人が言っていた

そんなことは、わかっている

そんなこと、わかっているのだ




いつから僕たちは、つらいときに連絡が出来ない仲に、なったのだろう

いつからなのだろう


少し大きな電話が、僕の手から滑り落ちた

2010/10/21 (Thu)

[508] 君のこと。
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漂う珈琲の香り
乾いた笑い声が響く

眠い目で歩行者を眺めても
何か得るところもない
そう ただ

たった今 思い立ったこと
多分それは君のこと
もう思い出せないけれど



漂うジャズの香り
別の曲が聴きたい

欠伸かみ殺して隣を見たが
何も得ることなどない

そうだ ただ

ただ今この時思うこと
多分それは君のこと
もうわすれてしまったけれど



ただただ 君のこと

2010/10/01 (Fri)
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