詩人:猫の影 | [投票][編集] |
かさついた肌に、何かを染み込ませるように、ゆっくりと、君の名を呼ぶ。
風が喉を駆け抜け、大気を震わせる。
それは草木を揺らし、大地を豊かにし、空を晴れ渡らせる。
星が瞬き、月がぱっくりと夜空を割る。
指先でそれを感じとったら、冷めた野菜ジュースを口に含む。
世界を吸い込んだら、また僕は君を想い、玄関をでる、そういう寸法だ。
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冬の寒さを思い出したように
凛と浮かぶ月を見上げた
広げた手の平の肌が軋む
少しピリリと音を立てる
肩をすくめるこの時間が
思いの外素晴らしいことのように
思えて
思えた
冬の寒さを噛み締めるように
凛と澄んだ風を吸い込んだ
吐いた息が宙に溶ける
クルリと輪を描いて
冬の寒さを思い出したように
凛と浮かぶ月を見上げたんだ
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肩をすくめ 自転車を漕いだ
いろいろなものが 肌を突いた
なくしてしまったものは
見つからないまま
手に入れたはずのものも
見当たらないんだ
人は年を経ると大人になるという
うまくいかないこともあるもんだと
俯いて笑った
しまっていたセーターを出す
余計なものまで零れ落ちた
忘れていたはずのことを
思い出してしまって
覚えていたはずが
引き出せなくなった
人は年を経ると忘れるという
うまくいかないこともあるもんだと
空を見て笑った
人は年を経ると笑えるという
うまいことをいうもんだと
君を見て笑った
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大人になりきれない
歪な体を引き摺っていた
手を伸ばしても
届かない所以か
わかりゃしないぜ
君の気持ちも心持ちも
わかりたくもない
子供にもなりきれない
奇天烈な体 抱えていた
頭をカラにしても
汚物が残る故か
信じ切れやしないんだ
ヒトの建前や体面も
どれも嘘にしかみえない
歪な体 あちこちが痛い
泣いて叫んでも 奇妙な声が出る
足掻いた指先が 空を掴んだ
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住み慣れた町の空は
妙に優しくて
流れたものを
冷たく光る月には
見えないようにしたんだ
引き裂いた大切なものは
きっと元には戻らないだろう
そう思うことにした
何も見たくなかったのだ
だから空を眺めた
消え入りそうな星を
なぜだか掴もうとした
届かないことなんて知ってた
叩きつけた大切なものを
その欠片を拾い集めた
それしかできなかった
吐き出した煙は
夜の空に溶けたろう
大切なものの欠片を
手に抱えて歩き出したんだ
そうしようと決めたから
そう思ったんだ
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するりと抜け落ちる音
その鮮やかさったらない
ストンと腑に落ちる音
そのまろやかさったらない
指に巻つけた糸
あなたにはほどけるのかしら
憎んだところで
なにも変わるわけもなかろう
不敵な笑みを浮かべてみた
がしかし、うまく描かぬカーブ
口角が引きつったのさ
引きつったんだって
クルリと風を切る音
その軽やかさったらない
僻んだところで
なにも、なにも、なにも
素敵な笑みなど並べてみた
ところで、うまくいきやしないんだ
方角が間違ってるぞ
間違ってんだって
どう転びたいのだ
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頭を抱えて伏せていれば
なんとかなると思ってた
どうにかなると思っていたんだ
遠のく君の想いに気付けないで
僕はしたばかり見ていたから
明日どうしようとか
夕飯何にするのかとか
そんなどうでもいい会話
できなくなるんだろうか
だろうかと
頭を抱えて書きつけていれば
なんとかなると思ってた
どうにかなると思っていたんだ
遠のく明日の風に気付けないで
傷つけないでと、そんなことばかり
裂けた皮膚から
何かが零れだした
頭を抱えて伏せていれば
全てがうまくいく
うまくいくはずだと、
そんなことばかり信じていた
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口ずさんだメロディ
夜の闇に溶けていく
ほっとしている自分がいた
歯に挟まったメロディ
どこかでやり残したこと?
思い出せない自分がいる
夜の道を歩き歩いた
探し物を探しにさ
ようやくだ 君の影を見つけた
で また溶けていった
鼻についたメロディ
忘れていた記憶だろう
荒んだ顔の自分がいる
夜の町を歩き歩いた
君に贈る首飾り探しにさ
ようやくだ 君の笑顔見つけた
で また溶けていくんだ
夜の町を歩き歩いた
探し物を探しにさ
どこかでやり残したこと?
で また溶けていく
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少し寒いので、ダウンを着た
ベランダにイスを置いて、煙草を吸った
メンソールの香りが、鼻をさす
見上げた空は、優しく星がまたたいていて、
紳士的な黒が、その後見をしているようだ
思い出すものが、楽しい思い出ばかりだった
2人で見た後楽園のライトアップ
初めて渡した誕生日の贈り物
震えながら重ねた唇
うまくいかないことの方が多い
いつか好きだった人が言っていた
そんなことは、わかっている
そんなこと、わかっているのだ
いつから僕たちは、つらいときに連絡が出来ない仲に、なったのだろう
いつからなのだろう
少し大きな電話が、僕の手から滑り落ちた
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漂う珈琲の香り
乾いた笑い声が響く
眠い目で歩行者を眺めても
何か得るところもない
そう ただ
たった今 思い立ったこと
多分それは君のこと
もう思い出せないけれど
漂うジャズの香り
別の曲が聴きたい
欠伸かみ殺して隣を見たが
何も得ることなどない
そうだ ただ
ただ今この時思うこと
多分それは君のこと
もうわすれてしまったけれど
ただただ 君のこと