詩人:そほと | [投票][編集] |
ほらまた言った
言うとおもったんだ
「 りんごすってあげようか 」
ほら全部ひらがなだ
枕もとに正坐したお母さんのひざに甘えると
やさしくお布団にもどされて
ぼくは
ほよほよと眠るのです
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マユ毛に長いのが生えると
長生きの相だと知っていたから
ここんとこ
ちょっと嬉しかった
通勤途中のバックミラーで
その長いやつの消失に気付いた私は
ブレーキとアクセル
どっちを思いっきり蹴飛ばしてやろうかと
迷っていたら
タバコ入れといたはずの胸ポケットで
小人が
行儀良く並んで見上げていた
その小人らの
揃いも揃って
呆れ顔
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詩・曲 そほと
いいの
もう帰るの
雨の中まちぼうけは
もういいの
あじさいの頭を
右手でポンポンして
♪てんてんてん毬 てん手毬〜
てんてん手毬の手がそれて〜〜
帰るんだもん
傘だってあるもん
いいの
もう帰るの
雨の中まちぼうけは
もういいの
いいのもう帰るの
気がついていたのだわ
とっくにね
こう見えてわたし強いのよ
けっこうそうよ
帰るんだもん
傘だってあるもん
♪てんてんてん毬てん手毬〜
てんてん手毬の手がそれて〜
帰るんだもん
傘だってあるもん
きっと私は今
傘の花を咲かして
いるのでしょう
きっと私は今
傘の下で
泣いているのでしょう
この雨が止んだら晴れるわ
もう泣かんよ
あじさいは雨上がり
きれいね
♪てんてんてん毬てん手毬〜
てんてん手毬の手がそれて〜
帰るんだもん
傘だってあるもん
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空
すっかり雪雲
天気予報どおり
雪
降る
あなたの義母様
たおれた
のですね
もう
助からない
のですね
あなたがしっかりしなくて
誰がしっかりするのです
と
言ってしまいした
こんな白
でしたっけ
雪
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詩・曲 そほと
地元気象台の発表によれば
この時 鶏卵大の雹が観測されたらしい
急に暗くなった校庭に
白いものが跳ねて ころがった
一つ
また一つ
また一つ
二つ 三つ
けたたましい音を立て始めたのはピンポン玉ほどの雹だった
ぜんそくの予感
先生が教室の電気を点ける
いま何時間目だっけ
後頭部に潜んでいた闇がじわじわと広がって視界を侵食し始めた
ぜんそく
来た
休み時間になった
生まれて初めての大きな雹に
興奮し切った生徒達ははしゃぎまわる
一人ぼっちになるのが恐かったボクも
無理をしてはしゃぎまわる
視界が暗くなってきた
そうさ 空が真っ暗だからな
雹の白さが闇に眩しい
そこから記憶が飛んでいるんだ
先生の声だというのは分った
「 今 おかあさんを呼んだから 」
校庭を母に手を引かれて歩いていた
おんぶしてやるというのを断ったんだ
友達が見てるからね
学校が見えなくなると
母はしゃがんで背中を向けた
おんぶしてもらった
泣きたかった
今でも泣きたいのだ
ぜんそくの子供を残して死んでいった母と
同じ年になってしまったのだから
少しはいろんな事が分るから
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この木に
毎年四季が訪れ
その都度
緑の葉っぱを
つけたり おとしたり
なんとも言い得ぬ匂いの花を
つけたり おとしたり
もう かれこれ数十年分は
コトバを蓄えてます
ねっ だから小鳥がやってきます
ねっ だから虫が冬眠します
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せっけん箱が走った
洗面器が廻った
だからぼくは
お腹に吸盤をくっつけて
マブチ水中モーターのスイッチを入れて
銭湯の湯船に浮かんだんだ
子供の頭にだって進まない事は
分かってる
進むと思いたがってるだけって事も
分かってる
それでも進んだ進んだって大はしゃぎしたんだ
新しいウソを手に入れた後ろめたい瞬間だった
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冷たい布団が温まったら
指相撲がしたくなった
ぴこぴこ動かしてみるが
一人相撲だな
思い出せば
一日が井戸の水汲みで始まる生活に
かつて鍛えられた母さんの
指は強靭でしなやかで
押さえ込まれたぼくの親指は
ピクリとも動けず
他の手足がジタバタジタバタ
中学生の頃にはもう勝てたはずなんだ
父さんよりケンカは強かったんだから
冷たい布団が温まったら
ゆびずもうがしたくなったよ
母さんに一度だけ
勝っといてあげればよかった