詩人:soul | [投票][編集] |
行間の温度
空気の揺れる有様
放たれた言葉の躍動を
芽吹く草木のざわめき
流れる水の始まり
打ちつける雨の獰猛さを
季節の終わりを告げたあの風の匂い
目を刺すような光
水面に浮かぶ月の曖昧さを
夜の静寂の饒舌さ
輝く星の幾千光年の孤独
暮れ行く陽の物悲しさを
それらの色を表す言葉すら
私は未だ見つけられないままでいる
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手にしたものは
まるで初めから無かった様に
姿を消して
辺りを探しても
見つかるのは決まっていつも
くたびれて苦笑う誰かの顔だけ
昔の唄みたいに夢の中まで探すほどのものでもないと
言い聞かせては
寝ては起きてを繰り返し
なくしたそれがあるはずだった
ぽっかりと空いた場所にも
いい加減に慣れたつもりと
何度も何度も言い聞かせて
ただただ日々を誤魔化している
過ごし方も知っていたはずだった
虚しいと嘆くには
寂しいと叫ぶには
悲しいと涙を流すには
あまりに私はくだらないから
四角い窓で切り取った
夜空を見上げながら
名前も知らないただの星に
胡散臭い祈りなんか捧げてみたりして
結局全部忘れたように眠りについて
いつかの夢を見たら
また思い出して
吐き出したい言葉を飲み込むだけ
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茹だる暑さに溶かされた
君の放った言葉のいくつかが形を失くして
まるで蜃気楼
手を伸ばせないまま
手に掴めないまま
夕立に流れて消えたのは一昨日の事
空色が青から赤へ
まだ何も無い世界は暮れる
目の奥に焼きついた忘れたくないその風景を
飲み込むように夜はただ静かに通り過ぎていく
夢を見たのは昨日の事
君が通り過ぎた後の涙
今は聞こえないふり
聞こえないふりをしたままで
思い出す日々のそれぞれをかき消してしまう雨
心変わりはこの雨のせいにして
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揺れて弾ける
繰り返し繰り返し
私の視界を遮って
本当の姿を見せてはくれないまま
覗き込むのはルール違反なんだって
無茶な事言って
笑っているんだか
泣いているんだか
私には分からないから
永遠の様な時間を
持て余して
氷が溶けるその時を待っている
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夢を手にして
次の日に燃えないゴミと一緒に捨てた
視界に広がる殺風景から注す
斜めに構えた陽の光を
ひどく眩しく感じていた
雑踏の中街頭スピーカーから聞こえた
胡散臭い愛が風に揺られて笑っていたのを
覚えている
テレビでは今日も
淡々とした口調で悲惨なニュースを語っている
自殺が増えたとか減ったとか
数秒後には笑うキャスターの顔があった
だが
その数秒間で起こる何かの一つを私は知っている
淋しがりの顔を無くした少女は
熱を持たない愛の言葉だけを信じて
空を飛んだ
飛んだ
少女は考えていた
必要だったはずの重力について
星一つ見当たらない
五月二十三日
春も青ざめる曇天の夜空
絶景と呼ばれる位置から見えるその無機質な景色には
まるで色が無かった事
その事実を誰も知らない事を
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忘れた
なんて嘘だろう
置き去りにしたつもりで
実は
少しも進んではいなかった
見えるはずの無い景色を
雨にのせいにして
想像していただけで
風に色をつける
錯覚
問いを投げ掛けてみても
呆気なくそれは
コンクリートに跳ね返っては
いつか重なった温もりごと熱を失い
跡形も無く忘れ去られていった
通り過ぎる日々を
言葉にして
綺麗に並べて思い出と呼ぶつもりなど
そこから溢れ出すそれぞれの意味など
知りたくもなかったはず
なのに
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空の打ち出すリズムが
感情に入り込んで
感覚が浮遊
モザイクがかった彼女は跳んだ
スローモーション
緩やかに景色は夜に溶けていく
加速して温度を失って
時計は正しく嘘だらけの明日を指す
何かがまた消えて
何かがまた残って
何かがまた生まれて
何かがまた消して
何かをまた見殺して
何かをまた失って
リセット
ボタンを押した様に
過ぎた日々を綺麗に飾っては
思い出と呼んで
また日常は過ぎる
何も知らないふりをして
空の打ち出すリズムが
感情を溶かしていく
感覚を溶かしていく
モザイクがかった彼女は跳んだ
空の打ち出すリズムが
残像を溶かしていく
鮮やかな夢の中
夜が泣いている
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夢を見ていた
すべて満たされていて何も無い世界で
まるで嘘だらけの虹を追いかけて
青い土へ還る
そんな夢
眠りから覚めて
顔を上げると
恥ずかしげもなく咲き誇る春
もう緑色の太陽は傾き始めていて
街に愛おしい影を落としていた
遠くで子供の声
さよならの響きが
余りにもかなしいから
欝陶しい程晴れた夜に
星にまみれて
幾つも約束を交わそう
積み重なった嘘が
いずれは本当になるように
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何時間か前に
手にしたはずの幾らかのそれは
見知らぬ太陽が顔を出す頃にはもう
思い出と呼ばれていた
何もかもが変わった世界は
今日もまるで何も無かった様子で
時間が進んでいる
ふと
テレビの画面を見ると
知らない国で死んでいく人達のニュースを
無表情に淡々と手短に伝えている
チャンネルを変えると
笑いながら誰かのスキャンダルを流していた
その温度差が妙に滑稽で
思わず笑ってしまう
昼下がり
街中では何やら騒がしい様子で
人だかりの中心を見ると
見たこともない人が
世界平和と掲げて
「今こそ闘うべきだ」
と大声を張り上げている
何の疑問もない顔で引き込まれる人
何も聞いていない人
祈る様に電話のボタンを押す人
皆同じように見えるのは気のせいだろうか
思考を止めれば人も動物も変わりはないと
誰かが言っていたのを思い出す
不思議な光景だった
今日も目にした
幾らかの現実も
静寂が窓から夜を連れて来る頃
曖昧に滲んで
見知らぬ太陽が顔を出す頃にはすべてが
思い出に変わるだろう
まるでいつまで経っても覚めない夢の様
ただ
いずれは死んでいく
それだけは確かだ
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波に浮かんで
月が寂しげにゆらゆら
乱反射して
星空のようです
水平線へと空中水泳
ぼくらゆらゆら
笑った顔が
子供のようです
ひかりが揺れている
曖昧風景
まるで絵の具を混ぜたようで
赤 青 緑
空が泣いて
洗い流されたら
それは世界のはじまりのようです
夢から覚めれば
見慣れた風景
そこには確かに
ぬくもりがあったような気がして
歩き出せば
響く靴音
柔らかな空気の振動
ぼくはゆられて
きみの声ひろがるのです