ホーム > 詩人の部屋 > soulの部屋 > リアリティ

soulの部屋


[282] リアリティ
詩人:soul [投票][得票][編集]

何時間か前に
手にしたはずの幾らかのそれは
見知らぬ太陽が顔を出す頃にはもう
思い出と呼ばれていた

何もかもが変わった世界は
今日もまるで何も無かった様子で
時間が進んでいる

ふと
テレビの画面を見ると
知らない国で死んでいく人達のニュースを
無表情に淡々と手短に伝えている
チャンネルを変えると
笑いながら誰かのスキャンダルを流していた
その温度差が妙に滑稽で
思わず笑ってしまう

昼下がり
街中では何やら騒がしい様子で
人だかりの中心を見ると
見たこともない人が
世界平和と掲げて
「今こそ闘うべきだ」
と大声を張り上げている
何の疑問もない顔で引き込まれる人
何も聞いていない人
祈る様に電話のボタンを押す人
皆同じように見えるのは気のせいだろうか

思考を止めれば人も動物も変わりはないと
誰かが言っていたのを思い出す
不思議な光景だった

今日も目にした
幾らかの現実も
静寂が窓から夜を連れて来る頃
曖昧に滲んで
見知らぬ太陽が顔を出す頃にはすべてが
思い出に変わるだろう

まるでいつまで経っても覚めない夢の様
ただ
いずれは死んでいく
それだけは確かだ

2008/04/06 (Sun)

前頁] [soulの部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -