詩人:高級スプーン似 | [投票][編集] |
足りない
足りない
全然足りない
欲しがり屋さんの
あなたには
何を足しても
何の足しにもならない
足りない
足りない
もっと頂戴
不足しがちな欲求を
満たそうと
あなたはどんどん
肥えていく
過ぎているのも
気付かずに
苦しいのに
もっと欲しい
止めればいいのに
止められない
目と鼻の先にある
24時間
開いている
年中無休の
その場所へ
行けば
大抵のものは手に入る
おにぎりだって
ゴムだって
けれども
大体代替品
本当に欲しいものは
手に入らない
だから何?
っていう
鏡を見れば
豚がいる
食える豚ならいいけれど
臭いだけなら
必要ないな
それでも
足りない
全然足りない
もっと頂戴
もっともっと
誰にも必要とされなくても
満たされたいと願うのは
いけないことですか
そうだとしても
止められない
どうしようもない豚です
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視線を移して
世界を映して
記憶に収まる一枚一枚
引き出して思い出す度
展開される光景
確かめられるのは私だけ
過ぎ去りし日々の一角
頭の中に閉じ込めておくのは
勿体ない気もするけれど
頭蓋骨を叩き割り
中から海馬を引き摺り出して
これ見よがしに
振り回したとしても
だれかの脳裏に刻まれる景色は
わたしのものとはきっとちがう
卵をうまく立てられたって
新しい発見しかうまれない
虚実入り混じる思い出は
どうやっても
有り体を再現できなくて
わたくし中心的
本日の一枚
誰の目にも止まらぬ速さで
ぱしゃり
瞼の奥に焼き付いた
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「がんばれ」って
言われるのつらいよな
これまでの道程
あなたは十分過ぎるほど
頑張ってきたんだから
だから
頑張らなくたっていい
適度に力を抜いてさ
ゴールは
まだ先なんだから
この辺で一緒に休憩しないか?
たまには
振り返ってみるのもいい
ここまで
あなたが走ってきた道程は
これまで
あなたが続けてきた努力の結果
苦しんでも
苦しんでも
どれだけつらくても
誰にも弱音を吐かないで
たったひとり
頑張ってきたあなたに
この言葉を伝えたい
「がんばるな」
それは
ネットで見た
名もなき人の名言で
それは
ドラマで聞いた
有名な俳優のセリフで
それは
コンビニで流れていた
泣けると噂の応援歌で
見るたび
聞くたび
触れるたび
そのたび
俺は心から
感動するほど虫唾が走る
「がんばるな」って言葉が大嫌いだ
逆流する胃液を飲み込んだ時
感じる苦味と痛みを
「嬉しい」と認識したのなら
気が狂っているに違いない
俺はまだ正常だ
だって
頑張ってもいないのに
流せる涙もないだろう?
努力をしてこなかった
怠惰を貪ってばかりいて
走りもせずに
流れにそって
ちんたら歩く
そんな道程
振り返ったってさあ
頑張り過ぎて疲れた人への
一服の清涼剤となる言葉
これまでの人生
一度も頑張らなかった人には
どんな暴力をも上回る劇薬と化す
どうせなら
「がんばれ」って言ってくれ
そんな甘い言葉を吐いてくれ
と
頼んだ俺を殴ってほしい
お前はどこまで甘いんだって
「甘えるな」って叱ってくれよ
って
それが甘いんだよお前は
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ネクタイがうまく結べなくて
そのまま首を吊った
もう無理だって
諦めたのが
たまたま今日だっただけで
引き金にはいつも
指が触れていた
制服のボタンを掛け違い
部屋から出られなくなったあの日から
現在に至るまで
この手はいつでも
僕を殺れた
「ドアの外が世界なら、
僕が立っている
この場所だって……!」
それだけが希望で
まだ大丈夫
みんなと繋がっていると
信じたかったけれど
疑ってばかりいて
随分前から
こめかみを撃ち抜く準備は出来ていた
鏡の前に立つ
昨日と同じように
ネクタイを結ぼうとするけれど
うまくいかない
そうだ
もう死のう
ついに
手を掛けることのなかったドアノブに
ネクタイを掛けて頭を垂れる
最後まで醜いまま
僕は引き金を引いた
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書きたいことがまとまらず
それでも書き出した
頭の裏に浮かんだ羅列
いまいちに思えて削除する
もう
思い出すことも出来ない言の葉は
薄いゴムの内側で息絶えたそれに似て
虚しい
萎える脳ではじめから
考えても考えても
納得いかずに蔵の中
誰にも見せることのなかった表現は
それでも与えたのか
私には落としたのか
影を
何かを
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左胸に手を突っ込んで
鷲掴んだ心臓を
途中で投げ出すことも多い昨今
空っぽだったもう片方の手に
手を取り合い
あなたと繋がってはや幾年
並んで歩いて謳歌する
鼓動が吐露する互いの真情
思いの丈が響き渡る
自分の命を
粗末にしなかったのは
共に生きるあなたの尊さを知ったから
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遊び相手がほしかった
恋愛ごっこがしたかった
単純明快な理由が
複雑怪奇なきみを造り出す
昔話と違って容姿端麗
美しい見た目のきみは
中身も素晴らしく
すべてにおいて万能で
世の理想を体現した
完璧な人間だった
ただひとつの欠点は
あなたが人間であること
そこに佇むだけで
絵になるきみの
隣でいることが
堪えがたい苦痛になるまで
そう大して月日はかからず
儚く輝く三日月のような微笑
見る度に
日に日に老いる自らを
疎ましくなり掻き毟る感情
「お前の面など見たくない」
心配するそれを
冷たく突き放すけれど
何よりも輝きを放つ存在の前では
満ちることなく欠けていく
何もかも忘れて朽ちていき
動かなくなったあなたを抱えて
それでもなお
儚く微笑んで
幾星霜の月日が経っても
鮮やかに美しい
その姿は
額縁に飾れば
永遠延々と見飽きることはないだろう
遊び相手がほしかった
恋愛ごっこがしたかった
望みは叶ったわけだが
あなたが居なくなった世界で
愛を知らずに
愛を貫くひとの姿まで
知る由もなく
また語られることもなく
続いていく
いつまでも
いつまでも
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本当の気持ちは
吹き出しには呟けない
心は誰とも
繋がってはいない
アカウントを消して
人生を終わらせたい
それだって
気を引く嘘
冗談を言い合うように
メンタルを曝け出しては
次に会った時には
何もなかったかのように
冗談を言い
本当の気持ちは
「 」
最初から
本当の気持ちも
伝えたいことも
存在したい理由も
特にはなかった
心臓から
全身へと送られてくる
メッセージは
それでも
「 生きろ! 」と言うけれど
心には届かない
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きみとふたりで
喜びは二倍に
悲しみは半分に
だれかのうたであったけど
そんなの奇跡
ひとの痛みは簡単に
分け合ったりは出来なくて
ひとの幸せなんて
素直に喜んだり出来ないし
卑屈な自分を嫌いになって
涙を流して
ストレス解消
自分でどうにかするしかなくて
明日を報せるアラームを止めるため
差し出される手は己の手
隣で眠るきみは
起き出す頃にはもういない
泣いていたのは昨日のきみで
笑い合うのは次のおやすみ
奇跡がひとつも起きない奇跡
他愛のない望み少ない日常から
その先にある死が来るまで
すれ違っては生きていく
それでも時々
手をつなぎ
きみとふたりで
どこかへ行けたら
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どんなにアピールしたって
きみの瞳に映らないぼくは
見逃してほしい時に限って
消えてしまえない
即座につかまって
ひどいことをされた気になる
それは愛情表現で
それは自分勝手な愚行で
それはそれは大層な気のせい
どんなにアピールしたって
きみの隣に座れないぼくは
うらめしや
居場所があるのにさまよっている
素足の汚れた幽霊です