詩人:高級スプーン似 | [投票][得票][編集] |
夢の始まりと同じように
今より手前が
思い出せない
けれど
どうやら半分以上が
崩壊(ダメ)になったそう
進んでいるけど
歩いているのか
みなどこか
自力じゃない気が
無機質なエントランス
人工的な光が反射
様々な顔が行き交う
座っている人まばらに
無邪気なわが子の笑顔に
疲れた顔で応える母も
会社帰り
帰れなくなった風の男
若者が4、5人で大爆笑
お前等こんな時に何を
と
ちらり怒り睨む中年
いつもより少し
殺伐としている程度
案外こんなもんか
パニックは意外と少ない
知らないあの子が
息を乱す
通り過ぎれば
視界から消える程度に
付属のエレベーターは
景色を楽しめるタイプ
気が付いたら
そこに乗っていて
最上階のボタンだけ
光っている
昇っていく
見えてくる全体
変わった町並みに
ようやく気付く
一目見て分かる
人を統べる人外
支配者の住む城
以前あそこは
テーマパークだった
これから先
どうなるんだろう
ありえない状況も
起こればすんなり
受け入れて
既に世界は
終わっていてもまだ
俺は生きている
夢ならとっくに
覚めているけどまだ
黒い雲々に塞がれて
暗く淀んだ
あの辺を
俺は見ている
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