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高級スプーン似の部屋


[423] 醜美
詩人:高級スプーン似 [投票][得票][編集]

アスファルトに
油をたらせば
美味しく焼けるだろうか

朝から嫌なものを見た
味気ない空気
噛まずに飲み込んで
無関心を装った

人前で死ぬのは
別に
恥ずかしいことじゃない

電車に乗って
ハンカチで汗を拭っても
まだ
頭の裏から流れてくる
なき声

みんな
見えているのに
見ない振り
寝ぼけた胸中で
不快には思ったとしても

その日の午後には
他のストレスに埋もれ
忘れてしまうんだろうな

ほら
帰り道には
綺麗さっぱり消えていた
香ばしいにおいも
漂わせずに

この国は
とてもクリーンで
少しも鼻腔をくすぐらない

わたしの感じる倦怠感の
理由は夏の暑さだけで
説明できるしね

過ぎ去る人々に
最早
見向きもされない道路脇
陽が落ちる間際
点る外灯

きみの顔を思い出せない

2012/07/25 (Wed)

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