詩人:浮浪霊 | [投票][編集] |
お前服を脱がせるのが下手だなあ。ほら、御開帳。
文ちゃんは脱がなくていいの 男の裸なんて見たくないし (!!?)
どうかな?
(ソファに預けられた南の肢体は小さくて細っこくて酷く綺麗だった。僕は彼の肌がしなやかで白いことを上手く言葉に出来ず、柄にも無くどもって喉を鳴らした)
俺、女の子には好評だからちょっと自信あるんだけど、ほら、男の子に見せるのは初めてだから 文ちゃんの気に入るといいんだけど
(彼は僕を手をとって引き寄せて、細腕を伸ばして手馴れた様子で僕の顔面というか頭部をゎわゎわ、口とか手とか使って愛撫しだした。僕は大いに圧倒された)
男の子は勝手が分からないから悪いけどもう女の子と同じように扱うよ
(悪びれもせずにそう囁く彼の肌はやや上気し、声も上擦っていた。南はいつもニコニコしてて今もそれは変わらないのだけれど、なんだかいたずらっぽい、明るい色気に染まっていた。為すがままは嫌なので、負けじと南のうなじに唇を寄せる。あは、と彼の口から笑いが零れ、南はくすくす笑いながらその手入れの徹底した脚を僕の腰に回し引き寄せた)
初々しいなあ。文ちゃんは可愛いね
好きだよ、文ちゃん
ごめんね
ごめんね、文ちゃん……
BGM :
柏大輔 - Coto
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「黎都(リツ)、お前の思考と行動の様式がおかしな物になるのは、キリストを対等な論敵と看做すことが許されて居ないからだ。『右の頬打つものあらば左の頬を差し出せ、汝の敵を愛せよ』。これらの教句は説得するものに非ず。命令、そう、あなたとの議論を求めるものではなく服従を欲するものだ。善人たることを命令され強要への屈服を教育された哀れなお前の善行は服従の発露即ち単純な偽善である可能性に常に呪われている。いまやあなた自身自らの善行が義務と遵則から来るものなのか良心に根ざすものなのか判るまい、お前は自らの感情にさえ不信と疑念が掃えない」
「あなたの愛と犠牲はゆがんでいる。おお子羊よ、お前の愛と犠牲はゆがんでしまった!」
「キリストが命令者としてあなたに接したことが、あなたの尊敬を勝ち取る努力を否定したことが、あなたを主体として人格として敬う事をせず侮辱したことが、黎都、お前をゆがめたのだ」
「お前が愛を行うのはわたしがお前の愛に値するからではない。お前にとって愛が貴いからでさえない。キリストの命令が、キリストへの服従が尊いからに過ぎないではないか。おお子羊よ」
「あなたは 醜い」
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八歳くらいだったろうか。
私を溺愛していたおばあちゃんは居なくなり、預け先の無い私を父が家に置き去りにして出張したあの夜(澄はしっかり者だから好い子でお留守番できるよな?)。
私は誤ってクーラーを切らないで電子レンジを付けてしまい、家のブレーカーを落としてしまったのだ。
当時私は配線用遮断機という概念を持っておらず、
徐々に暗くなる夏の宵を発狂するほどの恐怖と戦いながら、
部屋の隅で縮こまり体を揺すり震えて過ごした。
『しっかり者』でなければならなかった私には、誰かの助けを求めることなど考えられず、やがて帳が落ち暗黒が充ち、悪夢が現を汚染した。
壁を這い引き出しに潜り込む不定形な物
発光し群生する醜怪な小人
窓や鍵穴や隙間から覗き込む歪な人面
異様な長さを持つ人の腕に似たもの
テレビやパソコンや鏡に移り込む有り得べからざる物
それらの物の息遣いや視線が、私を一晩かけて壊していったのを憶えている。
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忘れるな、 君(ボク)が 君(ボク)こそが 君(ボク)だけが僕(キミ)の神である事を
僕(キミ)が君(ボク)以外に心魅かれ アレを崇め貴ぶならば。
僕(キミ)は君(ボク)が妬み深い愛の神 親の犯した罪のため末代まで罰し呪い祟り雪(ソソ)ぐ神である事を知るだろう
(申命記第五章第九節)
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通学時間、満員電車、毎朝恒例のこの朝の苦境が私は意外と嫌いではない。
これだけの数の人間を一所に集めると、いろんな人間がいる。
例えば痴漢とか、痴漢になすがままの少女とか。
…私はどうしたものかと考える。
何も起こらない。少女は振り解くでもなくされるがままだ。
不思議だ。ひょっとして合意の上でやってんのか?
女の子の表情は引き攣ってるように見えるんだがなあ。
ジロジロと視線を投げてると、或る時少女と視線が合い、その
ああ。
うん。
これは間違いない。
絶対、同意はねえ。
私は手を伸ばした。
男の拳は厚く、私のそれよりずっと太かったが、私がその小指を掴み取り掌握すると呆気なく引き剥がれた。
男と一瞬目が合う。驚いたような表情。私は道場で習った事を思い出す。
(男の子は強いから、殴り合ったりしたら女の子なんてすぐ負けちゃいます。美郷君、ちょっと右手で先生の道着の裾を思いっきり握ってくれる? そう。皆、よく見てて下さいね。只闇雲にやっても美郷君の手を引き剥がすのは至難の業です。
でもね
男の人の小指を剥がす位なら、女の子でも訳ありません。)
小指は、思ったよりもずっと簡単に折れた。
男の指は180度折れ曲がって垂れた。
男は、信じられないと言いたげな眼差しで私と自分の指を交互に見詰め、やがて猛烈な脂汗を流し始め、引き下がった。電車が停車すると、指が折れた方の手をスーツのポケットに突っ込み、降りて行った。
「あの」
私は振り返る。声は少女のものだった。
彼女は一瞬目をそらしたが、思い切ったようにキッと又合わせてきた。まるで睨みつけられているような気がして、私は少々たじろぐ。
「驚かせたなら御免ね。私未熟者で力の加減ができないんだよ、まだ」
手をひらつかせる。特に手加減する気など無かったものの、私ははにかみを衒い嘯いた。
彼女は酷く緊張している様子で、口を開けたり閉じたりして、見たところ何か言おうと努力している様だった。
次、猪野谷、猪野谷に停まります、という電車のアナウンスが入る。
やれやれ。
それが紺野コンノ真サナと私、楠クスノキ叶カナエの出会いだった。
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彼女の子宮は、悪気アッキの本源に繋がってしまった。
次々と化け物を産み落とすようになったのもその所為だ。このままでは世界が滅んでしまう。彼女の封殺が決議された……
そういう説明を、僕達は受けた。
いっそ殺してやってくれと泣いて懇願する僕に、教奴様は暗く首を横に振る。器が割れると零れてしまうのだと
泣き叫ぶ彼女の肢体の孔という孔が縫い合わされ、さらに一枚の分厚い聖別処理された鉄板に体を縫付けられる。オブジェみたいになってしまった彼女は神殿に安置され、巫女に抜擢された僕と一緒に衛星軌道上に打ち上げられた。
これで万が一の事態になっても、(運が好ければ)僕と彼女とあと世界の十分の一が呑まれる位で済むだろう。
口も鼻も使えない彼女の為に、栄養や酸素のたっぷり詰まった注射を彼女の血管や気管に突き刺すのが神の伴侶としての僕の務めだ。平和を願って祈ったり、彼女に触れたり語りかけたりして許しを請う事も。
だけど、窓から見下ろすと見える平和に廻る青い地球が、酷い憎しみを僕の心に根付かせ、僕は彼女を犠牲に営まれるあらゆる幸福を妬み呪うようになった。
僕は妄想する。
いつか誰かが彼女のために世界を滅ぼしてくれるだろうと
勇者が現れこの神殿を攻め落とし、彼女を救い出してくれるだろうと
その救世主が僕で無いのは、とても残念なことだったけれど。
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二人で愛し合いましょう
お互いさえ居れば、もう誰も要らない、
そう思い合える関係を持ちましょう
唯一永遠の絆を結び永久に
死が二人を別つまで。
(そう呼びかける声に応えて覓征(ミユク)は嘲笑んだ)
それは違うよ 愚かなひと
愛し愛される事は強く生きていく為の支え
それが究極的には手段に過ぎない事を否定し
あたかも生に代わる根源として目指す事は瞞しだ。
自分を騙せ人を騙せても、いずれ避け難く破綻するだろう、
伝子の復讐に遭うだろう。
その終りが一年後なのか百年後なのか はたまた一万年後なのかは分らないけれども
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貴女の瞳って、虚ろでまるでガラス玉みたい。そういって笑って、彼女は私の頭をワシャワシャとなでた。私はその詩的な表現に感心した。その夜私達は寄り添って眠り、翌朝彼女は荷物をまとめ去っていった。
私は一人残された。