ホーム > 詩人の部屋 > 朱雀の部屋 > 投稿順表示

朱雀の部屋  〜 投稿順表示 〜


[21] メニスカス
詩人:朱雀 [投票][編集]


破色の風が吹く街に

千の瞳が上滑り……

渇いた時を 遣り過すには

いくつ 口実(りゆう)がいるのだろう?


事も無げに あいつは笑い

滲んだ空を見上げているから

素っ気無い振りをして

嘘つきな眼鏡を捨てた


上目遣いの視線の先で

尖った痛みが

ちぎれた雲に跨り

繋いだ指に 秋がひとつ落ちる


引き返せない迷路に

分かれて 流れて 引き合って

ゆらぎに映る二人は

零れた水銀に 似ている

2008/10/19 (Sun)

[22] 十三月の窓
詩人:朱雀 [投票][編集]

ゆらゆら纏う 月の色

ひらひら翻る 小夜衣

ほろほろ嘆く 花の影

ふかふか見遣る 片心


名もなき憐恕(れんじょ)は風に消え

杞憂も蕩ける玉桂(たまかつら)


するする見解く 戯心 (ざれごごろ)

さらさら零(あ)える 細砂(さざれすな)

てんてん笑みて 星下り

ふるふる揺れる 月夜影

2008/10/20 (Mon)

[23] 侘歌
詩人:朱雀 [投票][編集]


薄ら氷(ひ) 染める朝影は

思い焦がれた凍て蝶の

きらと溶け合う

玄冥の吐息(いき)―――


砂絵のように脆い心で

消(け)残る跡を 思い染(し)め

鞘絵のように歪んだ夢を

静寂(しじま)にぽつり 写し見る


儚く消えゆく さだめなら

擦(かす)る欠片の冷たさに

名残を遺し 散りゆかん

いっそ 砕いてくれまいか?

2008/10/21 (Tue)

[24] 月夜見歌
詩人:朱雀 [投票][編集]


月夜見歌(つくよみうた)



 
 暗い闇夜に 星は降り
 褪めた吐息を ひと抱え
 虚舟(うつおぶね)に 腰掛けて
 平らな川面を 往来せん

二日月

 茜の空に 銀の糸
 透ける光が 胸を射し
 灯影(ほかげ)に 頬も紅を注す

繊月

 掛かる けわいに こころ奪われ
 穏やかならぬ 口伝(くちづて)を
 後の祭りと 気付かせて
 昇る虚月の薄笑(うすわらい)

破鏡

 もののはずみに 落とした染みは
 やがて薄れて 目立ちはせぬが
 どこで見てたか唐烏(とうがらす)
 かたわれ月に告げ知らせ

十三夜

 待ち侘びたりと 祈りを捧ぐ
 せめて ひとたび その瞳(め)に写り
 情思(じょうし)の双葉を 宿らせ給え

望月

 愛(め)ずらし姿に 暫し見蕩れて
 待ち侘び続けた 人影も
 槐夢(かいむ)と怪しみ 声すらかけず

不知夜月

 漫(そぞ)ろがましき 宵闇に
 猶予(いざよ)いながら 浮かぶのは
 確かに 昨日の優姿(やさすがた)
 遮る雲に 呟(つぶ)めく詫言(わびこと) 

十七日月 

 心躍らせ 立待つ薄暮に 
 現れ出(いず)る 影ひとつ

十八日月

 胸走りは 納まらず
 昨夜(よべ)より長い 居待ちの月に
 憂いと安堵の 溜息ふたつ

十九日月

 痺れを切らす その前に
 ふらりと浮かぶ 臥待月(ふしまちづき)
 孤衾を敷く手に 三度の迷い

二十日月

 やがて夢路に 潜る境の
 夜更けに出(いで)し 更待月
 おぼろに眺めた 木の四つ

二十三夜待ち

 真夜(まよる)に昇る 弓張りに
 二往の願立(がんたて) 夜を明かす

晦(つきごもり)

 巡る月日に 思いなずらえ
 寄せては返す 虚舟(うろぶね)が
 月に習って 川傍に隠れ
 光彩放つ 新月を待つ

2008/10/22 (Wed)

[25] 晩 景
詩人:朱雀 [投票][編集]

七つ下がりの風通り

透かし模様の薄絹に

囁(つつめ)く日射が

なだらかに滑り・・・・


疾(と)うの昔に置いてきぼりの

ブリキの箱で ひしめく玉が

熱の籠った鋪道を走り

鳴く蝋石の跡を追う


虹色の影を惜しむ間に

桑楡(そうゆ)日暮れて帳(とばり)を下ろし

爛柯(らんか)の名残も掻き消えて

斜陽が煽る草いきれ 


彼方の路傍に残された

見過ごす程の足跡に

切ない笑いが くつつと ひとつ

道行き摺りに また ひとつ

2008/10/23 (Thu)

[26] 花 幻 〜短歌〜
詩人:朱雀 [投票][編集]

藍玉(あいだま)の光に舞ひし 秋桜
  
     遠き海彼(かいひ)の 空に似たれば













2008/10/26 (Sun)

[27] 春色夢譚
詩人:朱雀 [投票][編集]


菜の花畑で見る夢の

差しくる日影も目映くて

菜の花畑で見る夢の

解(は)つる思い出 風を追う


青陽の影

かげろうの刻

薫り合う間に

翔鳥(かけどり)の

羽音も蕩ける菜種色


菜の花畑で見る夢の

笑まう芳魂 尋(と)め行きて

菜の花畑で見る夢の

彼方に遊ぶ 夢見鳥(ゆめみどり)

2008/10/28 (Tue)

[28] 彩恋歌 〜短歌〜
詩人:朱雀 [投票][編集]

水の面(も)に 瀬越しをかける川嵐

   悶え果てぬる 真緋(あけ)の一葉



満山の 紅葉に秘する下思(したおもい)

       よたたに燃えて 闇まで染めぬ  




 

2008/10/31 (Fri)

[29] 秋の口
詩人:朱雀 [投票][編集]

  
秋に雨がささらいで 音鳴く声にも似た響き

夜半(よわ)の寝覚めに 色無き風が

情(こころ)恋しと吹き頻る


枯葉(こよう)に くろろが潜り込み

時のしじまで雨隠れ

幾ら待てば晴れるのか

朽葉色した胸のうち


とてもかくても

手裡にあるのは何首烏玉(かしゅうだま)

時は戻しも 伸ばせもできず

夢想の中で揺れ動く


なにやら いよいよ 忍び寄る  

蕭殺の気に託(かこつけ)て

吐納(とのう)を宥め振り放(さ)け見れば 

雲の切れ間に 

覗く紫微垣(しびえん) 碇星(いかりぼし)


沁みる夜気を横豎に見立て

秋にひとり思い戯る


2008/11/09 (Sun)

[30] 風輪際
詩人:朱雀 [投票][編集]

畦に腰掛け見和(みな)ぎし先の

揺振(ゆたぶ)る木立は 神のやすんば 

紅い雀が舞風の中

命の際まで飛び翔ける


漏れる光を光焔(こうえん)に

いつの間にやら 見まく欲し


唯 在ることに心苛(こころいられ)て

爪形(つまがた)残る掌中(たなうら)を

慈忍を装い やあわり ひと撫ぜ


眺めの空に浮生(ふせい)を被せ

泣きたいほどの夕附日(ゆふづくひ)

2008/12/01 (Mon)
34件中 (21-30) [ 1 2 3 4
- 詩人の部屋 -