音もなく無窮の果ては闇に落ち虚空の下で貪婪(どんらん)な渇きは癒えず玲瓏たる銀の雫に月は盈ち秤の上で静謐な焔(ほむら)を煽る魂(たま)が振れ産霊(むすひ)は解(ほど)け 月を欠き器を返し潺湲(せんかん)と滴る水銀海(あま)は凪ぎ底方(そこい)に宿るあらたまは昇華を成して悠然と朱に染め上がる――瓏銀の水面(みなも)に惑うエトランゼ バーミリオンの月はかくれて――
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