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八朔の部屋


[25] 地獄、1
詩人:八朔 [投票][編集]

潮騒や
水面を揺らす風
それらに一切の感情がなくなるとき
人はそれを
虚無、と好意的に解釈したり
絶望、と感情を無理に混ぜようとしたりと
あるいは言葉という媒体を借りて
スケッチをしようとしたりします

つまるところ写したいのは
地獄の風景なのです


1、虐げられた少年、その後

ヘッドフォンをしていますが
何の音楽も流れてはいません
何も聞きたくないゆえの
耳栓の代わりですから

小さいころのことを思い出します
大声で叫んでいました

叫んでいたのが僕だったのか
世界だったのか
母だったのか
犬だったのか
それは覚えていませんが

ただ、
その時の金切り声を
ある時期までは
消したいと願っていたのですが

その音がなくなった瞬間
色盲になったように
世界が真っ白になってしまって
何も聞こえなくなってしまって

その喪失感を見ないためには
耳栓があるから世界は白いのだと
自分が逃げているからだと
そう思うことにしたのです

自分と世界の二択で
自分を捨てたのですが
そこにあると思っていた選択肢は
本当はなかったのかもしれません

ヘッドフォンを手放したいですが
絶望を認める勇気を持つのは
僕に希望が見出だせない限り無理でしょう

2007/03/31 (Sat)

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