詩人:ヒギシ | [投票][編集] |
煩わしい荷が
細っちい肩に増えてく
平気な顔をして綱を渡る
この人混みはサーカス
得意気な笑み浮かべ
足掻きモガキ踏ん張って
不幸せな顔が
視界にチラついて
幸せの裏面を垣間見ては
ギクリと嫌な汗をかく
何もかも化かし合いの
この世間はお化け屋敷
何かが追いかけてくる
後から付いて来る
ガバッと背中にへばりつかれて
先の見えぬ綱の上を
歩き続ける 今日も昨日も明後日も
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いつでもおいで
そればかりで
自分の手を差し伸べた事
無かったように思う
伸ばした爪が刺さるような
そんな手は汚いから
そう言って共倒れを
心の何処かで警戒してた
いつも人の目を見てない僕は
動かない瞳と目を合わせた
こうも、語るのか
自分にぞっとした
今まで僕は
何を話してたんだろう、口先だけで
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爪先で蹴った小石が、
車道へ転がった。
綺麗な白い車は、
街路樹の脇の草を揺らして
素早く走り去る。
小気味の良い音がした。
粉々の石を、目を丸くして、
じっとずっと見ていた。
その丸い目が小石のようで
カァ、とカラスが鳴くから
僕は慌てて両目を覆う。
電車の中の、
綺麗な白いシャツを
じっとずっと見ていた。
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アルコールが
胸を消毒したらしい
重く深い眠りから覚めると
朝の光がまばゆくって
思わず笑えたんだ
少し 開けた窓が
涼しい風を吹き付けてきて
去年の夏から吊ったままの、
鈴を揺らしてる
丘の上の白い教会で
鐘がなるようだ、と口にすれば
それは言い過ぎかな
また笑えそうな 馬鹿げた言葉
でもこの狭い部屋
窓から覗く青い空の上で
鐘が鳴る 鐘が鳴る
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どこか冷えた目をしてた
夕暮れ校舎の下
1人で辿る家路すら
自信を持てない僕なのに
広い校庭を右から左へ
横切った陸上部のあの子の背は
いつだって正しく思えたんだ
何度も同じフレーズを唄う
下手なトランペット
真白な紙に幾つもの色を乗せる
木陰の美術部員
赤い水馬を叫んでた
舞台の上の可愛い役者
肌寒い風が吹くなかで
同じ制服を着込んだ彼らは
みんながみんな、腕まくりだ
あなた達は今、
何処へ歩んでるのだろう
上着を脱いで腰に巻いた
もう少し未来の僕が
あなた達と酒を飲めたなら。
カラカラと地を這う
葉っぱは思い出に舞う
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先の潰れた
クレヨン或いは
サクラの枝で
柔い土に
あの頃描いた
設計図
シャープペンの
硬い芯で
細部を書き出すには
まだ早過ぎて
幾度も破いて
散りばめた
僕の部屋は 今
まっ白だ
すきま風が
遊びにくる度
ばらばらと
舞い上がる
ちっちゃくて壮大な
何かのカケラ
ペンを持つ指が
長くなったけれど
紙くずは
捨ててはいけない
そんな気がして
今 僕の部屋は
ゴミ箱、否
オモチャ箱のまま
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きみ少し
こっちおいで
あれが北極星
それが春の月
これがきみの目
いたい。
あっちが八重桜
そっちがブーゲンビリア
これがきみの髪
いたた。
とてもきれいだね
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一体何をすれば 幸せはやってくるというのか
針の動かない時計を熱心に眺めること
己の鼻先も見えない暗闇を走り抜けること
木漏れ日の下変わらぬ日々を疎むこと
何が正しくて 何が間違ってるかなんて
大昔から詩人の詠う言葉遊びを
止まない雨の下で繰り返す人形だ
紙風船が濡れてしまったからといって
その上から涙まで降らす事はないんだよ
幸せが見つからないからといって
それは必ずしも不幸ではないはずだ
それまで忘れてしまう事こそ 不幸と言えるだろう
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少し開いた窓から
子供のはしゃぎ声が聞こえる
気だるく目を瞑り
卵でも落としてやろうかと
また目を開けて黙り込む
揺らぐ洗濯物の影に
意識を浮かべて遊んでは
手繰り寄せて息を吐く
級友達を遠ざけて
大人と笑える訳でもなく
独り苦笑して遠くを見やり
ここはどこなのかと
口には出さずに
甘ったるい金平糖を
噛み砕いたかのような
甘い日々を辿っているのだ