詩人:秋庭 朔 | [投票][編集] |
乗れよ、背中。
うん…。
うわっ、
オメェ重た!
ウルサイよ!
足、痛むか?
うん、
ズキズキする。
女のくせに、
普段ズケズケ好き勝手
言ってるから
バチが当たったんだ…
今、
そんなショーモナイ
駄洒落に付き合う余裕
ないから。
砂浜に2人分の重さが沈
み込む。なんだか、遠い
記憶の中に似たような場
面があった気がする。
でも、思い出せない。
彼氏の前じゃ、お前も
女の子してんだろうな?
…だね。
キミと一緒の時とは違う
かもね。
キミって言うな。
お前…
お前って言うな。
アンタだって、
あたしにお前って
言うじゃん。
オマエさ、
オレを男として意識した
ことないだろ、
今まで?
…ないよ…。
なんだよ?
降ろして…。
自分で歩く。
歩けないよ、
そんなんじゃ。
歩けるから。
歩かなきゃいけないんだ
これからは自分で。
なんだよ、急に。
あいつが泣くのを見たの
は、幼稚園以来だった。
詩人:秋庭 朔 | [投票][編集] |
はい、これ。
握られた手から
アメちゃんがふたつ
ありがと。
…早速口に入れた。
お礼の言葉は
アメちゃんよりも
少し凹んでた僕への
君の思いやりに向けて
クールミントな
さわやかさが
戻ってきたよ
サンキュ!
はい、これ。
お礼はいらない。
それ、
わたしがあげた
アメちゃんじゃん!
詩人:秋庭 朔 | [投票][編集] |
なに飲む?
じゃ、コーヒー。
なに、
オレがイケメンだから?
意味わかんない。
さっきの映画
どうだった?
ストーリー複雑過ぎて
一回見ただけじゃ
意味わかんない。
なに、
オレがイケメンだから?
……。
ね、
なんで
オレと付き合ってんの?
…イケメンだから。
オレが
もしブサイクだったら?
イケメンでないアンタに
他にどんな価値があんの?
あぁ、オレ
イケメンでよかった!
よかったんかいっ、
そんでっ!?
詩人:秋庭 朔 | [投票][編集] |
「あたし
冷血動物だから
冷え性なの」
と彼女が
足を重ねて来て
悪戯っ子みたいに
目を細めながら笑う。
刺青のように
血管が走る、
透き通るくらいに
白い足を
すりすり・もみもみ
していると、
その「爬虫類」への
愛しさが人肌まで
温まる。
ねぇ…、
と声をかけると
微かな寝息。
寒すぎる夜には
冬眠するらしい。
おやすみ…
彼女のおデコの
冷たさが
僕の唇に触れた。
詩人:秋庭 朔 | [投票][編集] |
Jungle bell
Jungle bell
警鐘が鳴る
熱帯雨林に
酸性雨 Woo!
Jungle veil
Jungle veil
警鐘が鳴る
温室効果で
海面上昇 Oh!
家や車が
エアコンかけて
メタン・フロン
二酸化炭素
石油高騰
ガソリン値上げ
セルフのスタンドに
行列できたYeah!
Jungle bell
Jungle bell
警鐘が鳴る
熱帯雨林に
酸性雨 Woo!
Jungle veil
Jungle veil
警鐘が鳴る
温室効果で
海面上昇 Oh!
詩人:秋庭 朔 | [投票][編集] |
道端に
転がるボール
拾いあげて
見えないきみに
投げ返して見た
垣根越しの
キャッチ・ボール
コントロールには
自信がある
きみの部屋を
狙って投げた
ガシャンと
ガラスの割れる音
これで
きみに謝れる
やっと
きみと話せる
詩人:秋庭 朔 | [投票][編集] |
きみの
寄せては返す
さざ波に
浜へ沖へと運ばれる。
その海と
同じ濃度の涙が
流れ、
落ち、
溶けた。
月明かりに
照らされて
今頃なにを
夢見ているのだろう、
その海は…
詩人:秋庭 朔 | [投票][編集] |
何度も深呼吸を
くり返し、
決意しては
二の足を踏む。
膝が小刻みに震えてる。
怖くなんかない。
これは終りではなく
再生だから。
記憶は途切れても
命は引き継がれる。
次に吹く風の力を
借りよう。
呼吸を整え、全身を
センサーにして、
風の到来を待った。
さわさわと
仲間たちが騒めく。
大波のように
迫り来る風の兆し。
自分の鼓動が
波打ち高鳴る。
時は満ちた。
今だ!
緊張感で
強張った顔を
紅潮させながら
カエデはひらりと
空を切って…
飛んだ。
そして、
初めての地上に
はらりと舞い降りた。
ベンチに腰掛け
本を読んでいた少年が
ふと顔を上げ、
立ち上がると
風の吹き溜まりに
身を寄せ合う紅葉の中の
一枚を拾い上げ、
読みさしの文庫本に
大切そうに挟み込んだ。
風が吹き渡り
落ち葉がかさこそ
声を挙げていた。