詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
粘土を買いに
ちょっと そこまで
最近はいろんな色があるらしく
まだ 何色のを買うかは
考えあぐねてる
それにしても
面倒だよ
きみはいつも
なんとかの一つ覚えみたいに
カタチを求める
あんまりにも
カタチあるもの をほしがるから
なんとかして
証明してやろうって
そう思っても不思議はないだろ
それで
粘土を買いに
ちょっと そこまで
ちっちゃい頃から
粘土細工は得意だった
ぐにゃぐにゃと両手で煉って
ばんばんばんと板で平たくのばす
好きなように
好きなカタチに
間違っちゃったら
作り直せばいい
それで ぼくは
粘土を買いに
ちょっとそこまで
色はまだ決めてない
たぶん
ピンクははずせない
詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
自然に消えていく恋は
悲しすぎるから イヤだなんて
笑ってた
それは なにもかもが
うまくいっていた頃のぼくで
そんなことはウソだった
誰だって
別れのことばなんて欲しくない
少しずつ離れて
少しずつ遠ざかる
はっきりしないのは
ぼくたちの悪いクセ
なにもかも フェードアウトしてしまえ
ふたり結んだ絆
ひとり流した涙
そして
きみの「さよなら」も
「さよなら」のひとことも
聞き取れないうちに
そっと フェードアウトしてしまえ
詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
きみは そっぽを向かないで
ぼくが 視線をはずすから
もうじき
わずらわしいことは 何もなくなるよ
誰かが遠ざかっていくのは
さみしいものだね
それが ぼくじゃなくても
それが きみじゃなくても
それが どんなに冷たく悲しい人であっても
すこし 大げさなウソも
今のぼくには 必需品
無意味な強がり
空っぽな笑い声
隙間からもれるため息だけが 真実
きみは そっぽを向かないで
ぼくが 視線をはずすから
きみは 前だけ見つめていて
ぼくは ここで方向転換
つま先を 左に45°ずらして
きみを探さずに 歩いていくから
詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
きみ 知ってるかい
今日の夕方に
西の空に彗星が見えるんだってさ
ほんとだよ
ニュースの人が言ってた
ぼくのリサーチによると
多分 公園の先の
くすの木がたってる丘の上が
一番 よく見えるはずなんだ
それで
よかったら
一緒に行かないかな
ぼくのリサーチによると
丘の上に続く道が
おとといの雨のせいで
まだ ぬかるんでたんだ
足元には 注意しないとね
それで
よかったら
もし きみが
どうしても ぼくに触れたくないって
理由がないのだったら
手をつないで 行かないかな
詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
窓からの夕陽の中に
ほこりがきらきらと舞う
体育座りのぼくたちは
机のかげで キスをした
ほこりの雪は それを隠す
バッグにひそめてきたコーラを
ビーカーに注いで 乾杯
今日はなんの記念日だっけ
夕陽が フラスコに
きらきら 灯をともす
そうだ
今日は 理科室記念日にしよう
そう言って
立ち上がったきみは
ぼくのと間違えて
かどうか
ガイコツの手を取って歩き出した
詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
遮光カーテンのすきまから
光がもれていた
朝が来たのだ
昨日までのぼくに
何が起こったか 誰も知らない
少なくとも ぼく以外は
誰かがぼくから
見えないところへ
誰かがぼくから一番遠いところへ
去ってしまった
ただ それだけのことだが
そして それが
世界中で最も大切な人だった
たった それだけのこと
そんなことは おかまいなしに
世界は動いている
しかし
ぼくは 思ったんだ
朝はどんなときも
なにごともなかった顔でやってくる
遮光カーテンからのぞいた
ひとすじの光を見て
朝が来たのだ、と
いつもと同じに朝が来たのだ、と
思えたことで ぼくは
たぶん 今日からも歩いていける
歩いていける
詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
ずっと前に失った夢を
突然
取り戻したい衝動にかられ
クーデターを起こそうと決めた
今さらだけど かなり本気だ
作戦を練りながらテレビを付けたら
いつの間にか
ぼくなんか目じゃないくらい
世の中で争いごとが起こっていて
ぼくは なんだか急に
全部がばかばかしくなってしまい
ふらりと外に出た
よく考えたら
ぼくの安っちぃ夢なら
コンビニにでも売ってるだろ
それに気がついたら ぼくは
こっそりほくそ笑みながら
スキップなんてしちゃったんだ
詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
眩しさのあまり
涙が出るってことあるんだ
観覧車の前に立って
ぼくは それを見上げていた
いくつもの電飾に彩られて
それは 光り輝いていて
直視しかねるくらいだったのだ
もう ずっと前から
ぼくは わかっていたし
覚悟はしていたんだ
さよならは いつだって
突然なんかじゃない
予測くらいつくってものだ
それが今日だったってことについては
少なくとも 予測の範囲外だったけれど
意外にも ぼくが
いつものように 手をふって
きみを見送れたことについてもね
きみの背中に向けていた
右手をおろして
ぼくは 歩き出すために
後ろを向いた
歩き出そうとしたぼくの目の前に
その観覧車が 立ちはだかっていた
ふたりの想い出の存在感を
見せつけながら
観覧車は あまりにも光り輝いていて
あまりにも 眩しかったんだ
眩しくて 眩しくて
涙がこぼれてきた
眩しさのあまり 涙が出るってことあるんだよ
詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
あなたは
どこか なにか が
他の誰とも違っているのでしょう
そうでなければ
わたしが そんなにも
あなたに 魅かれるわけがないもの
誰もと同じなら
きっと 気にもとめないもの
どこか なにか が
ちがうはず
少なくとも わたしにとっては