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望月 ゆきの部屋  〜 新着順表示 〜


[194] うっかり、しっかり
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

死んだつもりで生きなおせ、と
誰かが言ったけど

死んだつもりになんて
なれない

ぼくには過去があるし
ぼくには記憶だってある

こんちくしょう

死んだつもりになんて
ならなくたって
ぼくは やれる

なんだって やれる

過去も 記憶も
ズボンの後ろのポッケに
ググッと突っ込んで

確実に一歩ずつ 踏み出すんだ

そして
ひとつ 幸せに出会い
ひとつ 笑うことができたら

ズボンの後ろのポッケから
過去やら記憶やらを
道端に落っことして 
進む

つい うっかり、てな
具合に。


うっかり落として



しっかり さよなら。

2004/05/11 (Tue)

[193] ほんとのきもちワッペン
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

悲しい時に
悲しい、と

さみしい時に
さみしい、と

たったそれだけのことが
無理難題となり
ぼくらの額や
ぼくらのひざ小僧に
重くのしかかる


その気もないのに
笑ったりすることの
むなしさよ


そんなとき
悲しみ顔のワッペンや
さみし顔のワッペンが
とても役にたつ

歯ぐき見せて
バカ笑いなんてしながら
堂々と
胸に ワッペン貼って歩こう


ほんとは
気がついてもらいたいあなたへ


「ほんとのきもちワッペン」


特許申請中。

2004/05/08 (Sat)

[192] 入り口の鍵
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

透明な箱の
壁づたいに歩く

出口らしきものは
すでに発見した

透明な箱の中には
どこまでも青いような空が
ところどころに
ふわふわと白いような雲を浮かべて
広がっている

透明な箱の中では
誰もが口角をあげて
会釈しながらすれ違う
時には 白い前歯がのぞかせたり

丘の上では
プチトマトが赤い実をほころばせ
それを狙う小鳥さえいない

ぼくは ぼくの幸せのために
ぼくは 箱の中を夢見る

透明な箱の壁づたいを
もう何十周しただろう

ただ
入り口だけを求めて

人はみな
入り口の手がかりを知っている
入り口の鍵を手にしている
それを意識しているか
いないかの違いだけだ

誰もが必ず持っている

それを思い出すときは
きっと

人が ひとつ
まちがいに気づいたときだ

2004/05/07 (Fri)

[191] 押入れの穴ぼこ
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

押入れに顔をつっこんで
ぐるりと見回したら
天井の端っこに
小さな穴ぼこがあいていました

穴ぼこの向こうは
下から見る限りでは
ただ ただ 暗闇でしたので
なんだか怖くなったぼくは
それ以上は見ないようにと
布団を上の段に移動させました

ぼくは やっぱり
穴ぼこが気になって
昼寝もままならなかったので
布団を引きずり出して
押入れの上の段にのぼりました

立ち上がると
穴ぼこはすぐ近く。

穴ぼこをおそるおそる
のぞいてみたけれど
やっぱり暗闇でしたので
つまらなくなったぼくは
そこにストローをつっこんで
シャボン玉を飛ばしました

シャボン玉の行方を
穴ぼこからうかがっていると
ふわふわと飛んでいって
そのうちパチンッと
はじけました

それからもぼくは
暇さえあれば 
シャボン玉を飛ばしに
押入れの上の段にのぼりました

ぼくがあまりにたくさん
シャボン玉を飛ばすので
暗闇では ひっきりなしに
パチンッ パチンッ と
玉がはじけています。

シャボンの水滴が
そこいらじゅうに 
飛び散っており
そのとき
どこからか 声が

穴ぼこの向こうの暗闇の
ずっとずっと下の方に
目をやると
人々が こちらをあおぎ
草花が 満ち満ちています


ときどき人は
それを雨と呼んで


ときどき人は
穴ぼこを見上げたりします

2004/05/07 (Fri)

[190] 覚醒
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

眠りにつく場所は

さほど問題では ない




どこで目覚めるか が

極めて重要なのだ


そのとき 五感は

何を 求めている?

2004/05/07 (Fri)

[189] 出口を探して
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

入り口は すぐに見つかった


もう何年も
ここでこうしています、と
あぐらをかいた白髭の老人から
地図を手渡される

地図はすべて
記号化されており
懐中電灯はなにも語らない

そういえば
さっきも見かけた黒猫が
今も足下を通り過ぎた

暗闇とは
決して恐れるだけのものではない

ましてや
伸ばした指の先が
何に触れているかなどは
出来れば知りたくないものだ

もはや 袋小路であるが
少なからず愉快な感もある

得てして 人は
困難な状況においてなお
それを客観視できる能力を
たいがい持ち合わせている


入り口は すぐに見つかった
出口だって きっと


あれば、の話だが。


とりあえず
手を伸ばそう


歩いてみるべきだよ。

2004/05/06 (Thu)

[187] たそがれ時
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

空が群青を増し
黒い鳥の列が視界を横切り
どこかの汽笛をよそに
寝床に向かう

遠い汽笛の中では
知らない誰かが
知らない誰かと
別れを歌っている
そこに色は ない

別れの歌を聴きながら
テールランプがしみて
視界不良だと
舌を鳴らす
しみたのはたぶん
眩しさではないが

夕暮れの空が
ひどく眩しい
ラムネももう
全部食べ終わっちゃったよ

ねえ

僕に 何ができる?


2004/07/31 (Sat)

[186] 僕の連休〜リオとかあさん〜
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

連休もこれからという
その日

僕んちの犬のリオが死んだ

かあさんからの電話でそれを聞いて
びっくりしたけど
それよりも かあさんが
あまりにも 毅然とした声だったので
そっちの方が 僕には驚きだった

かあさんは 言った
「もう 十分すぎるくらいに
   可愛がったから 何も悔いはないわ」
その言葉で
僕は思わず涙が出たけど
泣いてることはわからないようにした

次の日 
火葬場で焼かれたリオは
あまりに細い骨たちの集まりで
僕はまた悲しくなったけど
泣くことだけはしなかった

かあさんは一度も
僕たちに涙を見せなかった

かあさんが涙を見せないのに
僕が先に泣くことが
とてつもなく 
罪なことのように思えたんだ
だから 我慢した

家に戻ったら
リオの使っていた物は
すっかり片付けられていて
明日出すゴミ袋の中に
押し込められていた

でも 僕は
それを冷たいとかって思うやつは
絶対ばかだ、と思った。

それくらいに かあさんの
愛は大きかったことを知ってるから

リオはもう いない

お風呂の中で
歯をみがいていたら
急にいろんなことが悲しくなって
僕はとうとう涙を流した

多分それは
涙ではなくて 湯気だったのだ
と いうことにしたい
すくなくとも かあさんの前では

お風呂から出ると
かあさんが背中を丸めて座っていて
かあさんは ぽつりとつぶやいた
「もう 犬は飼わないわ」と。

これが
今年の連休の
僕の 一大イベントだった

2004/05/03 (Mon)

[185] 仏陀は泣いている
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

仏陀は泣いている
空の向こうのどこかの国の
古都に横たわり

仏陀は泣いている
笑った顔で
笑ったように見える顔のままで

その肩や 腕や
頭や 鼻や 手のひらを
生活の場としているマカークザルの群れ

サルは権力争いを繰り返す
サルは婦女暴行を繰り返す
仏陀の手のひらの上で
仏陀の肩や 腕や 鼻の上で

マカークザルは そうして生きている

サルは何も知らない
サルは何も知らないのだから
罪は ないのだろう

仏陀は説く
家族や仲間たちを愛しなさい、と。
寛容の精神を唱える。

その教えはむなしく
仏陀の涙の中に溶け出して
時々降る雨と混ざり合って
黄色い川へと流れてしまった

仏陀は泣いている
空の向こうの古都で

仏陀は泣いている
笑ったままの顔で

教えを説きながら

仏陀は いつまでも泣いている

2004/05/03 (Mon)

[184] 逝ってしまったきみへ
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

昼下がり
きみは逝ってしまった

死んだら星になる と
昔から教わってきたけれど
きみも同じなのかな
きみは この空の
どの星になるのだろう
ぼくにだけは
こっそり教えてってくれないか

きみは 
いろいろなぼくを見て
いろいろなぼくを知ってる

ぼくは それと同じほどには
きみを知らない
きっと ね

それほどしっかりと
きみを見ていたかって聞かれると
自信がないんだ

ぼくには
この部屋の中以外にも
生活の場がたくさんあって
それゆえに 考えたり
悩んだり 喜んだり 悲しんだり
あまりに忙しすぎて
きみのことばかり かまってやれなかった

きみには 
このリビングと
毎日数時間 ぐるりと散歩する
近所の町並み
それが世界のすべてだったのに
それすら 
ぼくは知らずにいたんだ

結局のところ
きみは幸せだったのだろうか

きっと幸せだったのだ と
信じ続けることは
ぼくのエゴだろうか

きみが何を考えていたか
きみが何を求めていたか
今となってはもう
問うてあけげることもできないけれど

きみはいつも
ぼくに幸せをくれたし
ぼくは少なくとも
いつもそれに感謝していた

今も感謝しているし
これからも ずっとだ
ずっと 忘れない

ずっと 忘れないよ

それだけでも
きみは幸せと思ってくれるだろうか

きみが逝ってしまった昼下がり

ベッドに転がってつぶやいた
ひとりごと

2004/05/01 (Sat)
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