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在音の部屋


[10] 焼けつく目蓋
詩人:在音 [投票][編集]

初めて東京に行った時
街に近づくにつれ 電車の窓から
空が黒くなっていくのを見て
涙を流した

その夜
星が見えない赤々と燃える空を見て
母の手を強く握り締めた

雨の日は 黒い霧に覆われた
頭の見えないビルを見て
地上ぎりぎりまでに 落ちて光る雷に
怯えて身体をすくめて歩いた

雑踏の中
人々が踏みつける花の下を覗き
埃にまみれた月を 熱い と感じた

でも 月日がたつと
青と黒 の区別がつかなくなり
僕も花を踏んでいた

何かを失う時はきっと痛いのだろう と
思っていた僕は
いつの間にか痛みを感じなくなっていた

そして
焼けたアスファルトの上を
削ぎ落とされた顔で歩いていた

2004/12/16 (Thu)

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