詩人:在音 | [投票][編集] |
初めて東京に行った時
街に近づくにつれ 電車の窓から
空が黒くなっていくのを見て
涙を流した
その夜
星が見えない赤々と燃える空を見て
母の手を強く握り締めた
雨の日は 黒い霧に覆われた
頭の見えないビルを見て
地上ぎりぎりまでに 落ちて光る雷に
怯えて身体をすくめて歩いた
雑踏の中
人々が踏みつける花の下を覗き
埃にまみれた月を 熱い と感じた
でも 月日がたつと
青と黒 の区別がつかなくなり
僕も花を踏んでいた
何かを失う時はきっと痛いのだろう と
思っていた僕は
いつの間にか痛みを感じなくなっていた
そして
焼けたアスファルトの上を
削ぎ落とされた顔で歩いていた