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緋文字の部屋  〜 新着順表示 〜


[143] 女友達
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二番も三番もない女に
一番だ、と
大抵の男は吐いて
決意を固める
よりも先に
硬いものを
おしつける

声をあげれない
痛みに鈍い者が
不感症な訳でなく
内と外 離れていても
繋がれば
否でも内に
流れ込んで くるのは心
望んでないものまでが
みえたとして

快楽は
いつでもむなしい
ふたりでおこなうから
いつでもむなしい
快楽に
してしまったのは誰

肉体の交わりに
毎回
激痛がともなうとしたら
少しは
愛と口に出す数は
減るのかもしれなくて

それを望む女は私だけではないかもしれない


おいで

産声をあげるように
お哭きなさい

2008/12/07 (Sun)

[142] 和ぎ
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誰かの腕の中に滑り込みたい時がある
しまった、
という顔でもして
滑り込む腕を
誘うときがある
そこがとても落ち着かないことに落ち着く為に

指が頬を拭ってきたのは
暗闇の中
天井を見つめて話す
声があまりに
淡々としているせいで
泣いていないことを
申し訳なく思う

物語は常にシンプルで
絡みあう
誰のものも
最終的には
一つのライン

時にはツッと
落としてみせたなら
その指に残る滴
乾く前にあなたは
感覚を感傷へと変えて
安堵できたろう

できないことを
申し訳なく思う

暗中
見る先は見えやしない
線上
前に在るか後ろに在るか

見下ろす征服時の他は
下を向いて話す癖もなく
零すものは何もない

視線でものを見ていない

根なし草の語り草
惑わす草も一役かって
必要以上の憐れみを買い
紳士面した者ほど騎士然として
醜いほどに溺れていく

愉快でも不快でもない
ただ、沈んでいくのだな
としか

立ち位置は変わらない
最初に決まる
変わらない

あれが頂点
瞬間が高く跳ね上がる程
永くそれは
留まってしまう


終われないのではない
終わらない
解らない者が近づく事が
気にいらない
覗き込もうとする事さえ
気にくわない

下して攻撃的でなく
穏やかなのよ
あなたは信じられないという顔をするけれど

ただ、
沈んでいくのを
見る
愉快でも 不快でもない

不純物が沈澱し
崇高な物でも
生み出す瞬間を
微かに期待して、みよ

見つめ合うのは
そこから

2008/04/30 (Wed)

[141] 春がくる前に
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もう 初めて、が
すっかり
少なくなってしまって
今年 初めて
今月 初めて
今日 初めて
無理やり
初めて、をつくってみたりするけども

お正月は
お宮も大盤振る舞いで
大吉なんて
出してくれただろうけど

私達がお詣りする頃には
末吉やら
小吉やら
功利主義擬きの神籤屋が
結局、禍福糾えた
どっちつかずの紙っ切ればかりになっている筈で

それでも
今年初めて
今月初めて
今日初めて
なんて言いながら
一年が始まることを

馬鹿ばかしいのだけど
楽しみに待つんですから

言わないけど
そんなもんなんです

早く雪国から
お帰りなさいませ
あなた

2008/02/23 (Sat)

[140] ケトル
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しゅん、しゅん、しゅん

ストーブの上の
笛吹きケトル


今日は なにが
あったかね


くすんだ白の割烹着
せわしい背中を
見ていると
舌が滑らかにならなくて
視線はいつも
湯気の向こう


しゅん、しゅん、しゅん


たいていケトルの隣には
大きなお鍋が置いてあり
早々 夕餉を告げたけど

アルミホイルに包まれた
ミカンがたまに
置いてあり

冷たいまんまが
美味しいよう、
温くて苦くて
わざわざ不味い

本当は
すこし 楽しみで

芯から冷えた
手だから素手で
触ってよこして
平気なのでしょ

風邪ひかないようにって
食べたんだっけ



しゅん しゅんっ
しゅん

カチリ、
火を消した
湯気の向こう

彼のひとの顔
ちらりと見えた

2007/12/21 (Fri)

[139] paper balloon
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両手をあわせ
まるく
膨らませるように
紙風船のように
まるく
膨らませたこの手の中に
息を吹き込む

ひらけば
なにか
生まれていて欲しい

時間が経てば
紙風船のように
ひしゃげてしまうことはしっているけど

そうね
覗きこんだ時すこしの間
わたしにだけ見えるものでいい
なにか
みせてくれたらいい

わたしの中には
要らないものばかり
生まれて

でもあわせて
これも私

紙のように薄い
生き方かもしれない
と思う
なにも遺せず
なにも残さない

それも幸

これも私

少なくとも 拉げるまでは

2007/07/25 (Wed)

[138] imprinting
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刷り込まれたもの

味得したものは
手の甲を舐めてさえ
甦る

匂い

発せられた数々の
いつ何時でも
思い起こせる
微細に鮮明な
そこにあるものたち

手にとれるかと云えば

手に取るように、
でしかなく

ゆえに
誰にも触れられない
確固たる
私のもの

私がどうしようと自由だ



私の自由でしか

もう
どうにもならなくなった

愛しいものたち


自由に駆けろ

かけて
駆けて

私の範疇など とうに越えた処まで
駆け抜けてしまえ


いつ何時までも
手もとにある

いとおしい
ものたちよ

2007/05/15 (Tue)

[137] 落葉
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踏み鳴らす、
乾いた音 を
楽しむ横顔を見て愉しんでくれていた
左側の体温
コンマ3℃ほど上げて
顔があげれず
つめたい
指先 差し出した

人混みは苦手。
後ろに流れる景色
流すのはあなた
見送るのは私

撫でゆく片頬に外界を
人差し指は
どこまでも内に食い込む
真ん中から
裂けていく
多く
残ったほうを あなたに

このまま
誰ひとり
いなくなってしまうのかもしれなかった
一台きりで
のぼる車
続く 続く山道
のぼり続ける だけなら

カーブをきって
あらわれたものに
視界を
黄金色にふさがれた
車道の中央
息を呑む見事な幹枝
あの美しさといったら
予定になかった

予測できるものは沢山
あるようで
いつだって少ない

ハンドルとられ
一瞬 呼吸を止めたあと
吸い込んだ

思いの重なりに
小さく笑った


あの色
幾度も
鮮やかに蘇甦るのなら

そのことは
心配 いらない

2007/03/16 (Fri)

[136] 回送列車
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情けない
声になってはいなかっただろうか
勇ましく
聞こえたろうか

乗せて
遠くなった

幻想と回想と
現実の悔恨に
目を落とした
手持ち一枚
見たような顔が
目配せをくれて
それが
決められた合図のように
踏んだ

降りられなかったのか
降りなかったのか
乗り合わせたのは
同じ理由だったのか

並んで座って 触れたら
照れくさいだろう身体
小突きあって笑えたら

伝えたかった
言葉はどれも
これも君がくれたものと似ていて
苛立ちが湧いても
もう充分だ、と
その眼は深く頷くだろうけれど
ふがいなくて


少し、歩き疲れた
そんな日も
顔を見合わせては
何処までも歩けてた


どこか頼りなく笑う顔
思い 描いて
いま目の前
笑んでくれたら
満足した顔で
やはり後悔を
しただろう


揺られる間
あの時は
見ようとしなかったもの
見ていよう


そして今度は
手を振り 笑って

2007/03/09 (Fri)

[135] うらさびし
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こんなに
晴れていては 空
見上げずには
いられない
あなたもきっと見ていると
慕う人がいれば
誰しも思う

あんなに
晴れやかだった空模様
日のつとめを終える頃
すっかり覆われてしまって

いってきます、

空に見つけた 想い人
暗くなってもまだ探すのは
私ばかりではないでしょう

いつまで待っても
変わらずに
いつまでたっても
こみあげるから
足元たよりない夜道でも
かまわず
空ばかり見てしまう

想いは
小さくも
大きくなり過ぎもせずに
この私のまま
あなたの傍に
いてくれてるかしら

まるで
手にしたようであっても
寸分違わず
そのまま、
なんて
私にだって 難しい


そちらで雪が降ったころ
こちらは雨で
淋しくなるの


風にまじって
とんできて
頬にとまった
小さな雨粒

あなたもそんなものに
心淋しさを すこし
感じているといい

2007/02/27 (Tue)

[134] regret
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コップひとつ

そのままにしない

きみにしては

山と積んだ

うちの一冊

手に取ってみても

その胸の奥底

読み取れやしないよ


放りなげたら 開かれた頁

拾いあげたら 飛び込んだ言葉

姿を探した



いつもの場所で 読む人は
なんて 可愛い声で
呼んでくれて
いたのだろう

今だから
思うけれど


振り返れば、
耽る素振り
寄せつけない
空気かもして
気難しそうに
わが身を
抱いた

数秒 待てば
おとずれた

シンメトリーに配置させた
この装飾達のような調和

望み通りの



何事もなくなった
ひっそりした空間を
後から
覗きこむ

歪んだ位置から



何度ここで

指を止めた

どんな顔して

口にした

思い出すのは

声色ばかりで

色への応えも 定着した頃

最後に見たのは

その 少し手前

すくんだ肩と

チグハグな顔

奇妙に映った
今、気づくけれど



風そよぎ 擦る音



いつもの場所で 読む人の

残留物だけが

腕をひろげて

ここへ来て、と 呼んだ

2007/02/16 (Fri)
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