詩人:トケルネコ | [投票][編集] |
船の上にいる
そこには誰もいない
ミシンの音が聞こえる
それは繕えないものを繋ごうとするクリミナル‐神曲‐
波は稠密な灰から毀れたゴールドへ移りゆく
ペンライトで薄暗い穹を照らしてみる
巨大な背ビレだけが揺れている
(見つかった!)
鼓動は限界で急いで船室へ逃げ込む
アナタがいる
アナタがひっそりと花瓶に咲いている
悦びが胸で忌まわしい形をとる
喉が鉄の味に読み込まれ 床が獨獨と逆様にインストールされる
(見つかった!)
もうすぐ血塗れのモノと港を奪い合わなければならない
アナタが汐の風に揺れている
粉っぽい白い花弁が一枚一枚燃え落ちてゆく
「少し待ってくれ!」(水を持ってくるから)
「もう少しだけ待ってくれ!」(死なないでくれ…)
巨大な影が砂漠に浮かんでいる
どこにも水は無い
手探りで捜すとコートの胸ポケットに香水が見つかった
臭うとスルリと蛇が瓶から這い出した
数えると14匹の蛇が不思議な円を描いている
これだけじゃないか! ここからじゃなかったのか?!
船はゆっくりと浮揚し 月は鱗を煌めかせ昏昏とのたくっていた