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朱雀の部屋  〜 新着順表示 〜


[24] 月夜見歌
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月夜見歌(つくよみうた)



 
 暗い闇夜に 星は降り
 褪めた吐息を ひと抱え
 虚舟(うつおぶね)に 腰掛けて
 平らな川面を 往来せん

二日月

 茜の空に 銀の糸
 透ける光が 胸を射し
 灯影(ほかげ)に 頬も紅を注す

繊月

 掛かる けわいに こころ奪われ
 穏やかならぬ 口伝(くちづて)を
 後の祭りと 気付かせて
 昇る虚月の薄笑(うすわらい)

破鏡

 もののはずみに 落とした染みは
 やがて薄れて 目立ちはせぬが
 どこで見てたか唐烏(とうがらす)
 かたわれ月に告げ知らせ

十三夜

 待ち侘びたりと 祈りを捧ぐ
 せめて ひとたび その瞳(め)に写り
 情思(じょうし)の双葉を 宿らせ給え

望月

 愛(め)ずらし姿に 暫し見蕩れて
 待ち侘び続けた 人影も
 槐夢(かいむ)と怪しみ 声すらかけず

不知夜月

 漫(そぞ)ろがましき 宵闇に
 猶予(いざよ)いながら 浮かぶのは
 確かに 昨日の優姿(やさすがた)
 遮る雲に 呟(つぶ)めく詫言(わびこと) 

十七日月 

 心躍らせ 立待つ薄暮に 
 現れ出(いず)る 影ひとつ

十八日月

 胸走りは 納まらず
 昨夜(よべ)より長い 居待ちの月に
 憂いと安堵の 溜息ふたつ

十九日月

 痺れを切らす その前に
 ふらりと浮かぶ 臥待月(ふしまちづき)
 孤衾を敷く手に 三度の迷い

二十日月

 やがて夢路に 潜る境の
 夜更けに出(いで)し 更待月
 おぼろに眺めた 木の四つ

二十三夜待ち

 真夜(まよる)に昇る 弓張りに
 二往の願立(がんたて) 夜を明かす

晦(つきごもり)

 巡る月日に 思いなずらえ
 寄せては返す 虚舟(うろぶね)が
 月に習って 川傍に隠れ
 光彩放つ 新月を待つ

2008/10/22 (Wed)

[23] 侘歌
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薄ら氷(ひ) 染める朝影は

思い焦がれた凍て蝶の

きらと溶け合う

玄冥の吐息(いき)―――


砂絵のように脆い心で

消(け)残る跡を 思い染(し)め

鞘絵のように歪んだ夢を

静寂(しじま)にぽつり 写し見る


儚く消えゆく さだめなら

擦(かす)る欠片の冷たさに

名残を遺し 散りゆかん

いっそ 砕いてくれまいか?

2008/10/21 (Tue)

[22] 十三月の窓
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ゆらゆら纏う 月の色

ひらひら翻る 小夜衣

ほろほろ嘆く 花の影

ふかふか見遣る 片心


名もなき憐恕(れんじょ)は風に消え

杞憂も蕩ける玉桂(たまかつら)


するする見解く 戯心 (ざれごごろ)

さらさら零(あ)える 細砂(さざれすな)

てんてん笑みて 星下り

ふるふる揺れる 月夜影

2008/10/20 (Mon)

[21] メニスカス
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破色の風が吹く街に

千の瞳が上滑り……

渇いた時を 遣り過すには

いくつ 口実(りゆう)がいるのだろう?


事も無げに あいつは笑い

滲んだ空を見上げているから

素っ気無い振りをして

嘘つきな眼鏡を捨てた


上目遣いの視線の先で

尖った痛みが

ちぎれた雲に跨り

繋いだ指に 秋がひとつ落ちる


引き返せない迷路に

分かれて 流れて 引き合って

ゆらぎに映る二人は

零れた水銀に 似ている

2008/10/19 (Sun)

[20] 目眩
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巡る季節が秋を謳歌し

饒舌な色彩が手招く


蒼穹(そうきゅう)を遮る木の葉しぐれは

淅瀝(せきれき)の音を連れ

刹那の秋を 彩(だ)み返す


さながら纏綿(てんめん)としたメサイア

惰弱な愚者(おれもの)は

記憶への耽溺に病み

足下(そっか)を攫う浮遊感

ここだけ時が止まったような

都合のいい錯覚と譫妄(せんもう)・・・


見上げる事のない空には

索然(さくぜん)とした真昼の月が

ぼんやり浮かんでいるのだろう

2008/10/18 (Sat)

[19] 胡蝶の夢より
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栩栩然(ひらひら)舞いて 胡蝶なり

夢か現(うつつ)か定めがつかず

泡沫(うたかた)の淵に腰おろし

傾げた首に掛けた手は

確かに指は付いてはいるが

人形(ひとがた)をした

蝋細工に見えやしないか?


遽遽然(きょきょぜん)とした有様は

我がことながら滑稽で

肩を震わせ捧腹すれど

脳裡の隅で途方に暮れる―――


分(けじ)めが有ろうが無かろうが

この世はすべて邯鄲(かんたん)の夢

現(うつつ)もいつかは霞んで消える

耳打ちするのは邪(よこしま)な蝶


それなら共に

栩栩然(ひらひら)舞いて戯れて

物化(ぶっか)を享楽するも 

また一興

2008/10/17 (Fri)

[18] 祭囃子
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高天に 先立(さきだ)ち渡る笛の音(ね)に

つられて響く 馬鹿囃子


浮かれ拍子に 浮気酒

燥(はしゃ)ぐ半被の裏側に

しとと張り付く やるせなさ


釣り合い人形 左右(そう)に揺れ

昔者(せきしゃ)と来者(らいしゃ)が行き交じり

渡御(とぎょ)を遊戯(ゆげ)する 頑是無さ


木偶(でく)の人形 影向(ようごう)の音(ね)に

目垂顔(めだれがお)して しゃちこばり

傀儡回(くぐつまわし)の 不甲斐なさ


暮天(くれてん)の 帰路に幽かな鉦(かね)響き

狸囃子の 鎮魂(たましずめ)

2008/10/16 (Thu)

[17] 雨 下
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雨 しゃらしゃら降りて

樋(とゆ)を伝い

渦巻きながら  

かいしょに 落ちる天水


雨音 それは地に当たる音にあらず

ただ降る雨に音がある

そう言ったのは誰だったろう?


霞む山のむこうで

鷹は愁いの毛を立て

ゆるりと流るる時を待つ


雨粒に揺れる葉の裏には

蝶と孵るか蛾と生(な)るか

白い卵がみしりと連なり

カチカチと鈍る細胞にさえ

流れる時を刻み込む


雨 しゃらしゃら降りて

樋(とゆ)から溢れ

飛び散る飛沫は

やがて間もなく土に沁(し)む

2008/10/15 (Wed)

[16] 鈴 慕
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時の端尾(はつお)を 握り締め

いまだ名もなき形(なり)を孕み

音なき音に耳を欹(そばだ)て

真空妙有の現(うつ)に凪ぐ


深遠に籠(こ)む白い背に

腫れた日常 穿つがごとく

瓊枝(けいし)に掛けた

鐸鈴(たくれい)が

シャラン シャリリと音連れて

シャラン シャリリと霊(ひ)を揺(いぶ)る


い繋(つが)る言の葉 依り代(しろ)に

褻(け)にも晴れにも

奔放不羈な魂(たま)を刻まん

2008/10/14 (Tue)

[15] 秋思符 〜短歌〜
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夕暮れの 緋(あけ)に合え照る狐花 

    燃ゆるおもいひを たれによすらむ




丹桂の にほふ夕べの悲しきに

    かへりこぬ日を 夢になさばや




思ひいづるときはの山の梢さへ

     紅くそめなす 秋の夕暮れ




ほに出でて こぬ人まねく花すすき

     風よりほかに 見るひとぞなき

2008/10/13 (Mon)
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