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朱雀の部屋  〜 新着順表示 〜


[4] 狐福(きつねふく)
詩人:朱雀 [投票][編集]


光差し添う 日照雨(そばえ)受け

孕む息吹に 背を伸ばし

明日を手繰りて ときめきを

抱(いだ)く童(わらし)が 虹を吐く


透ける視線は 横豎(おうじゅ)翔け

まだ見ぬ感喜 兆し生み

見継ぐえのこは うらうらと

夢に蕩(つたよ)う 草の原


現未(げんみ)に架かる天弓が

調べ奏でて 七色の

彩り添える萌蘖(ひこばえ)は

彼岸に金の実を結ぶ


穂波の先に懐裡のせ

細鳴(さなり)と揺れる幸魂(さちみたま)

心足る日の面影に

嫁ぐ狐の置き土産 
 

2008/10/06 (Mon)

[3] 石積み歌
詩人:朱雀 [投票][編集]


四十由旬(ゆじゅん)の向こう岸

渡るに渡れぬ童部(わらわべ)が

賽の河原で石な子拾い

ひとつ積んでは またひとつ

父母(ちちはは)恋しと漬(ひず)ち泣く


仏の功徳を得んがため

粗末な塔(あららぎ)築けども

おどろおどろし獄卒が

歪な塔を打ち壊す


棘(いばら)で血塗れた両の手で

花を手折りて差し出すも

重科を犯した子の罪に

父の涙は火の雨と

母の涙は氷(ひ)となりて   

其の身の底で蟠(わだかま)る


魔風(まかぜ)にカラカラ音を立て

廻り続ける風車

悲し悲しと泣く声を

地蔵菩薩に届け賜(た)も


尚、この詩は『賽の河原地蔵和讚』をモチーフに石積みの歌として書いたものです。

2008/10/06 (Mon)

[2] 滑歌(ぬめりうた)
詩人:朱雀 [投票][編集]


――三千世界の烏を殺し

      主と朝寝がしてみたい――


寝物語の睦言に

誰がうとたか漫歌(そぞろうた)

熊野の牛王(ごおう)を裏返し

誓紙の徴(しる)す心底を

戯(たわむ)れごとと

笑み曲ぐ君様


郭(くるわ)の網が絡みつく

大門超えた恋所(こいどころ)

現事(うつつごと)と知りながら

八咫(やあた)の烏に願掛けりゃ


扶桑の枝で かあと鳴き

血反吐を吐いて那落に落ちる

破約の責めを鏡に映す


洒落のわからぬ明鴉(あけがらす)

慈鳥と呼ぶか

阿呆烏(あほうがらす)と罵ろか

ほんに苦界は烏兎怱怱(うとそうそう)


誰か烏の雌雄を知らん


※『三千世界の烏を殺し 主と朝寝がしてみたい』は高杉晋作が作った都々逸です。

2008/10/06 (Mon)

[1] 秋さり来れば・・・
詩人:朱雀 [投票][編集]


旻天に ひらり翔(かけ)らう紅シジミ

野駆けの誘いと辺りで戯(そば)え

彼方に渡る鶸色の海


吹き頻(し)く風に胡盧(ころ)を浚われ

風来坊の桐の一葉(ひとは)が

カサリコソリと撫ぜ行く つま先


黄金(こがね)の光が引く影に

強張るこの身を弛ませて

漫(すず)ろに描く明日の明日


暢楽夢譚の栞がわりに

胸に挟かう早生(わせ)の秋

2008/10/06 (Mon)
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