ホーム > 詩人の部屋 > 右色の部屋 > 投稿順表示

右色の部屋  〜 投稿順表示 〜


[84] 伝道師:ヘッジ・ホッグ・エッジ
詩人:右色 [投票][編集]

人は眠る為に生きているのです


いいですか?

死ぬということは、夢の世界に行くことです

生きるということは、夢の世界を創ることです



いいですか?

起きている時に、夢の部品を集めて

眠っている時に、それを組み立てるのです



いいですか?

人間だけに限った話ではありません

ハエからクジラまで眠り、夢を見ます



いいですか?

死んでも天国も地獄もありません

ただ、あなたの世界が始まるだけです

その世界は永遠です

永遠は天国でも、地獄でもありませんが

そのどちらにでもなります


私達の生は

永遠を愛する夢を創る為にあります

だから人を愛して下さい

人の持てる永遠は、やはり愛なのですから

だから人を愛して下さい、愛されてください

2009/01/15 (Thu)

[85] 人間好き:リプレール
詩人:右色 [投票][編集]

人の名前を覚えるのはあまり得意じゃない

だから僕は
新しい名前を聞いたその日に
一冊だけ
新しい本を買う

そうすれば

僕にとって
記号にすぎなかった誰かの名前が
僕にとっての
一冊の本になるから

僕はね

本を読んで誰かを思い出したり
誰かを見て本のイメージが浮かんだり

そういうのも悪くないと思うんだ



だからだから

僕は人の名前を覚えるのはあまり得意じゃないけど

本を読むのと同じくらい

人と会うのは大好きです

2008/03/14 (Fri)

[86] 優しい旅人:カスミノ
詩人:右色 [投票][編集]

少年は王と対峙する

少年は言う

世界を優しくしてくれ、と

王は笑い、立ち上がる

ならば、世界を変えてみるがいい

王は少年に優しさの種を持たせ

少年は旅に出る

少年は優しさの種をまきながら旅をする


しかし

深い深い森の奥から

人がたくさん居る大きな街まで種をまいたけれど

どの種も芽が出る前に枯れてしまう

だが

少年はそれでも種をまき続ける

やがて少年は青年になり

青年は老人になった

ゆっくりと、ゆっくりと歩を進めた脚も

終には大地に膝を折る



そんな老人に心配そうに

そしてどこか不思議そうに声を掛ける少年

おじいちゃん、大丈夫?

老人は理解した

何故、いくら種をまいても芽が出ないかったのかを

老人は笑った

かつて少年だった老人にこの種を託した

あの王のように笑った

そうして

老人は最後の一粒になってしまった種を少年に託す

少年が種を受け取ると

老人は眠りについた

とてもとても優しい顔つきで

老人は最後の眠りについた

少年は少し考えたあと、老人の隣りに種を埋める


ずっとずっと


後になって


その場所には


一本の木があった


2008/03/15 (Sat)

[87] 告白から始まる人:エルエル
詩人:右色 [投票][編集]

『 その傲慢は嫌いじゃないけど

それは愛と呼べる程、物語ではないわ 』


理由を聞きたくて
口を開く前に
彼女は微笑み
僕は停止する

きっとあの微笑にやられたのだと思う
勝ち誇っているようでいて
どこか優しく、決して不快にならない
あの微笑に

YESかNO
そんな単純さを彼女に期待したのが
間違いだったのかもしれない

それに
不思議と後悔も不安も無い

たぶんそれは
余りにも揺ぎ無い
彼女の物語に
僕が巻きこまれてしまったからなのだろう


単純な僕は不安も恐怖も無かったけれど
唯一残った小さな悔しさを手に

物語を始める

2008/05/03 (Sat)

[88] ふわふわ、ほわほわ:不和フワ
詩人:右色 [投票][編集]

空を突き刺した
人差し指で
グリグリ グングニル



空を突き刺すストロー
雲に穴を開けて
そこに住む
ストローライフ



地べたを歩く
改め
空を歩く



空猫はやっぱり
目を覚まさない

それが当たり前

今も昔も
そのままずっと
人は空に住んでいる

2008/03/18 (Tue)

[89] 無記録者:ゴールデンシルバー
詩人:右色 [投票][編集]

だから私は日記をつけない


記億を記録するということは
どこか
自分の記億を軽く見ている気がする

忘れることが前提なんだ
忘れなければ記録を付ける必要なんて
どこにも無いのだからね

大切な思い出や感動をすぐに記録に残すのは
やっぱり
自分自身に「忘れてもいい」という免罪符を
発行するようなもので

心に持っていた
大切な思い出や感情をただそれだけの装置に
移し変える

例えるならば
海という巨大な背景を持って存在していた魚を
その巨大さに飲み込まれ
見失うのが嫌だから
ちょうど良いサイズの水槽に移し替え
好きなときに飽きるまで楽しむ
そんな行為

それはひどく勿体ないことのように思う



思い出というのは

その体験した瞬間のことだけなくて

体験してから
忘れるまでの間のことを言うのだと思う


だから私は日記をつけない

2008/03/19 (Wed)

[90] 戦場の唄:ヘッジ
詩人:右色 [投票][編集]

――けれども
同じ質量の絶望であれば
死ぬことだって出来ただろうに



少年は
その小さな背中に
巨大な希望を背負い
銀色へと降り立った


既に物語は選択された
もはや絶望し、立ち止まるどころか
中途で死ぬことすら許されない

さぁ
往くは戦場――




「他人に迷惑をかけない」
そんな空想は燃え盛る炎、灰の中



「傷つくのは自分だけでいい」
そんな幻想を語る者は
自らの物語にすら登場出来ない



自分は自分だけで完成しない
「ネガティブアイデンティティ」



――剣戟の音は
中空に木霊する
(幾多の感情がそうであるように)


2008/07/22 (Tue)

[91] 種と女と一年と:朝日 月夜
詩人:右色 [投票][編集]

一年前に飾った花は
枯れて
種を残し

小さな芽になった


私は思う

この小さな芽が去年と同じように
スカイブルーの花を咲かせることは
決してないだろう、と

自分で買った花ではない
もう私の傍から居なくなってしまったあの人が
持ってきた花だ


みんな
しつこい、と思う

彼はあっさりと居なくなり
花もあっさりと枯れ
種だけが残った


何もかも忘れたいと、そう思った
だから忘れた

捨てたと思った種を見つけたのは2月の終わり

何も考えずに
ただ、そうあるべきだと思って
種を植えた


私はその芽を見つけた時
笑って、泣いた

私の一年はようやく終わった



その芽からは去年とは
違う色の花が咲いた

2008/04/22 (Tue)

[92] 鏡の僕:ミラーミラー
詩人:右色 [投票][編集]

まるで鏡のようだね

そう言ったのは、鏡に映った自分自身


おはよう

おはよう

同じ言葉を反射すれば
会話は成立


そうだね

そうだよね


大体そんな感じ

代替する言葉なんて要らない

反射するだけ


ああ、でもね

泣いたり、笑ったりは出来るんだ


君が泣いて、笑ってくれれば

鏡の僕でも

心底泣いたり、笑ったり出来るんだ

2008/04/22 (Tue)

[93] 私とワインとアイツ:森野 小雨
詩人:右色 [投票][編集]

君は泣いていいんだよ

アイツは勝手に部屋に来るやいなや
そんな勝手なことを言った


私は無言で冷蔵庫のドアを開け
冷えた氷を透明なグラスに入れる


いつも勝手に来ては勝手なことをしたアイツ
それなのにちっとも嫌じゃなかった
そんな、ズルイ奴だった


台所の棚を軒並み開き
書斎の机の引き出しも全部開けた
それでも見つからない


アイツは何時だって私のワインを勝手に飲んだ
普段は酒なんて全然飲まないくせに


私はワインが好きだ
ワインを楽しむにはマナーを知らなくていけないし
マナーを熟さなければならない
しかし、そういう煩雑さこそがワインの旨みなのだ



ワインをどこに隠しても、アイツは必ず見付けてくるから
私も意地になってワインを隠した


アイツは勝手に死んだ
しかも実にアイツらしい死に方で

だから
私は笑ってやった
なんてアイツらしいんだって
笑ってやった


今日はそんなアイツの一周忌
手向けに一杯やろうと思ったが
肝心のワインが見つからない


グラスの氷は半分溶けていた
何気なくグラスを持ち上げると
水滴がまるで泣いているかのように滴り落ちた

お前が泣いてどうするんだ

グラスの縁を指で軽く弾く
涼やかな音が耳に響く
瞬間、アイツが目の前でワインを飲んでいるような気がした

私はグラスをテーブルに置いた

青い月の光が
涼やかな夜風と共に部屋に差し込む

なんとなく
ワインはもう、見つからないような気がした

2008/07/22 (Tue)
130件中 (81-90) [ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 >> ... 13
- 詩人の部屋 -