詩人:フィリップ | [投票][編集] |
紺色と
静寂に包まれた
世界を
僕は切り分けている
ナイフとフォークの両方には
朝と夜がこびり付いていた
夜風と朝風
どっちでもいいけれど
どっちが寒い?
どっちが痛い?
答えは、同じくらい、というそうだ
明けない夜はないってことを
明けない夜に考えていたんだ
明けない朝はないってことも
明けない朝に信じていたんだ
ワイングラスの
透明さでもって
明けない世界を
リライトしよう
朝と夜
その間の
明けない時空に
僕は多分
恋をしている
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なんにもない
なんにもなかった
ただそれだけの
退屈な紺色
今夜はもう、そんな夜
再生する世界の後
僕らは生まれ
僕らが再生すると
世界はまた
どこかへ流された
哲学的な妄想
それはきっと
幻なんだ
今夜はきっと、そんな夜
真夜中の静寂
海を越えた国の戦火
星空の眩しさ
象の目ヤニ
全ての世界のその果ての
無限の世界へ行きたい
今夜はもう、そんな夜だから
今夜もまた、そんな夜になると思う
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くたびれた体を
大地に立たせ
呼吸をする
誰かの思考を読み取ろうと
花は太古の世界に
物語を探していた
葉は既に
変色し元の形状はなく
カサつく土が
こびり付いている
この花は
僕たち人間と
どこか同じだ
喜びも
悲しみも
全ては雨の朝に生まれ
濡れながら
生き長らえている
ダチュラという名は向いていないと気付いてはいたけれど
悲しみは
時に美しい
絡まった羽根を震わせ
その羽音は
重なり合い
人間の何となるのか
もっと高くへ
飛べるはずだろう?
変わらない温度と
大地の移動速度に
欺き
不服従しながら
この花は
人間の何となるのか
世俗化した
未来を超えて
まだ見ぬ世界へ
飛び立とう
ここではない場所が例え
ガラスコップが営む世界だったとしても
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私の知らない空が
虹を抱いて
やってきた
明日という日は
また明日に延ばされてしまって
私は未だに朝焼けを見ていない
いつか
異国の浜辺から
青空を通して
日本を見たい、と
言っていた君の
足跡を追うために
シンガポールの浜辺から
僕はナイフで
異国の情緒を切り分けている
タバコをくゆらせ
汚れた窓を
拭いてみた
うろ覚えの街に
沈んでいく空は
私の知らない色をしていた
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懐かしいメロディーと共に
黄色い夕暮れが
僕の鼻を突く
鍵をした部屋に
未来の物語は
夕風の予感を纏いながらやってくる
僕のスイッチは
まだ切られたままだ
目を閉じれば
眠り続けてしまう
世界が其処に在る
下がり猫を追って
迷い込んだ路地裏
思い出す
夢の足跡
夕風スイッチ
夕凪の、調べ
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からくれないに染まった夕日は
カラクレナイに落ちていった
時間は流れていくのではなく
風化していくだけだと知ったのは
一昨年だった気がする
からくれないに悩んだ日々は
カラクレナイに過ぎていった
ネジ巻き式の季節と一緒に
君はまた色を変え
四季の窓に座っている
からくれないに恋をして
カラクレナイな恋をしよう
自由自在の心でもって
踏み出した未来は
うすくれないに
染まっていた
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蕾がひらいた
未熟な朝に
僕は目を覚ました
夜を吸ったベッドの上で
君がまだ眠っている
覚えたての言葉を抱いて
笑うような表情で
藍染めの扇子
空の青さ
海の碧さ
世界の蒼さ
忘れられていく
青の言葉は
一定の温度を取り巻いたまま
捨て忘れたゴミと一緒に
散乱していた
手付かずの愛を拾う僕のすべては
日々
失われてゆくけれど
目の前に有る真実だけでも
優しく美しく
僕は幸せになれた
花がひらいた
未熟な朝に
僕は愛した
蒼の夜を越えたばかりの朝は
まだ、藍色
愛をしてる
愛してる
「を」すら取り除いた世界の中
永く続いた沈黙の後
見せてくれた
君の笑顔は
いつも、インディゴ
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お腹が空いていたので
行きずりのラーメン屋に入った
チャーハンにしようか
ラーメンにしようか迷いながら
こんな感じで詩を書いていたら
ラーメンを食べたくなった
注文するとき
「アルデンテで」
と言いそうになり
思わず口を閉じた
何気ない
日本のラーメン屋にて
僕は何故か
異国の情緒を感じたらしい
詩人:フィリップ | [投票][編集] |
1・日常の結晶
黙っているけれど
潜んだまま出てこないけれど
なんでもない日常
それが人生
茹でたパスタ
公園の子供
その顔の輝き
それだけで人は
生きていける
2・世界の結晶
アメリカはあんなに大きいのに
日本はこんなに小さくて可哀想
不平等な世界の中で私は
不平等にどんどん大きくなるのに
3・水の結晶
生命の源の水
その源って
一体何だろう
やっぱ、水なんだろうか
4・命の結晶
今あんなに考えたじゃないか
今こんなに考えてるじゃないか
詩人として僕は
言葉をこんなに
投げつけているじゃないか
結晶なんてもの
カッコつけて探ったって
何にもわからないから
飽きて止めた僕は
既に言葉の結晶を
創り出し
紡いでいた事を
まだ知らない
そうして
僕は今、覚えた
既に僕そのものが
一つの結晶となっていることを