詩人:soRa | [投票][編集] |
君が生まれた街
夜行バスから降りると
そこには知らない海が広がっていた
君は眠たげに目をこすりながら
小さなため息をひとつ吐いて
その海を眺めて微笑んだ
明け方の海岸をふたり手をつないで
ゆっくりと歩いた
静かに押し寄せる白波に君は
僕の知らない思い出の欠片を見ているようだった
僕は君の肩を抱き寄せて
まだ冷たい潮風に紅く染められた頬に
そっと口づけた
ときに僕は君を見失いそうになる
でも気が付くと君はいつもそばにいて
優しく微笑んでいる
君の温かな心を育んでくれた
この大きな海を見ていて気が付いたのは
君を見失っていたのではなくて
君の大きな心の中で
ちっぽっけな僕自身を見失っていたのだと
後付けされたありきたりな理屈など要らない
なまぬるい愛の言葉も聞きたくない
君とこうして此処にいる理由など有りはしないけど
そんな物こそ必要ない
ただ君を愛しているだけだから
僕が知らなかった海
ふたりの海をいつまでも歩いた