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タンバリンの部屋


[55] 北パプリカ半島のじいさん
詩人:タンバリン [投票][得票][編集]




幸せ過ぎて、飛行機雲が隕石に見えた時。



僕は見とれて、ジュースを地面にこぼしたんだ。





パプリカ半島、目を閉じてそこへ行く。

すぐに着くんだ。疲れているから。



白い風が吹いて、

頬をかすめたら、

何もかもが変わる。



こげ茶色の灯台には、

水色のカモメたちが。



でも、何だろう。赤と緑のカタマリが空をたくさん覆ってる。



僕は立ち止まって、胸に右手をあて、


飛んで来た一粒に手をかざしてみたんだ。


大きさが変るだけで、また空に戻っていく。



灯台に続く道から、


くたびれた背広を着たおじいさん


僕の方に歩いてきた。





「5年ぶりじゃのう、まいったわい。」


「――の大発生じゃよ、この歳になれば感覚で分かる。」



「若者が生み、若者が消す。あんたさっき触れていたんだろう。それも分かる。」




「こういうヤツはなぁ、世界で片付けねばならん。わしもまぁ、よく闘った。」



「世界ったって、そんなこと、きっと誰も彼も。」



「どこまでが世界か?あんたの中が、世界じゃ。あんたの心が、いつも大切な所を占めておる。」




「あんたは精神世界で、何かをこぼしたんじゃろう」




「しかも、一人ぼっちだと思っとる。」




「若者よ、そいつと同じものを、どこかで誰かが抱えておる。」



「一つ一つと苦しみながら、お前との出会いを待っておる。」



聞いておくれ。



―簡単な魔法がある。



―いいかい、そいつは。



「あの時」の気持ちでいる事だよ。



「忘れた」って、


何にも偉くないだろう。




2008/01/02 (Wed)

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