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まとりょ〜鹿の部屋  〜 投稿順表示 〜


[152] 忘れられない人。自分。
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忘れられないってだけじゃない。
忘れたくないって気持ちが

こうして俺を閉じ込めたままにするんだ。

『アイツ結婚したんだってさ。』
風の便りで聞いた
まさに嵐のようにさざめいた心。

これだから女ってヤツは何て
俺はこれ以上虚しくなる事は言えないや。

最近さ、お前によく似た無垢な顔して笑う
子供を見たら背中がヒヤッとするよ。

現実ってヤツはいつでも容赦なくってさ
こんな風に俺の中で長年くすぶった。

幸せそうに微笑む親子の顔に

泣かせた俺に泣いたお前。

もう戻る事のないお前との時間。

なんだ。
もう出る物すら
何にもないや。

2006/07/22 (Sat)

[153] つよがり
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女の涙はズルいよな。

言われるのが痛くて、もう泣くのを止めた。

お前もその辺の女と変わらない。

特別って言われたくって、私は姿を変えた。

つっぱねて
意地張って
一人でもちゃんとやれるんだって

でも私に残ったのは
過去の嫌悪と
心の孤独。

もう泣いてもいいですか?

2006/07/24 (Mon)

[154] GT
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視界や音すら
まともに感じとる事すら出来ない孤独。

まるでそこだけ止まって映った。
でも確かに今ここに
俺は包まれて居るんだな。

地鳴りやエンジンの鼓動がいつもとは違う。
当たり前なんだろうけど、今確かに俺は此処に居る。

かつて見る事すら珍しい“こっちの世界”

俺の体を絹がまとわりつくように暖かくて、
スローモーションで光が駆け抜けてゆく。

なぁ?お前ら、聞かせてくれよ。
あのストーリーの続きをよ。

今俺が感じているのが正しいストーリーの続きなら、
またこれは伝説となり、俺も溶けちまうんかなぁ?

なぁ?教えてくれよ。
そっちの世界も楽しいんか?

太陽と月と雲すらも混じり合ったその色は本当に綺麗なんかな?

2006/07/30 (Sun)

[155] 家族
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明日私はこの家を出ます。

『他に夕飯何食べたいんだ?』
テーブルには溢れかえるような父の料理。

父はいつもより少し優しくて
それが余計切なくて泣けてきた。

寂しそうに父は酒を飲んで
昔を懐かしむように話していた。

『何も明日から私が変わる訳じゃないのよ』
私は父に笑いかけた。

『いや、変わっちまうんだよ。
お前は俺の娘から、母親になるんだから…。』

庭に咲いた夕顔と
伸びきった蔓。
時間は誰にでも早く流れた。

ヨチヨチ歩きの
泣き虫だった末っ子の私は
明日から妻になり、そして母親になります。

照れて父は私に挨拶なんてさせてくれなかったけど
玄関を出る時に言わせてね。

『行ってきます。ありがとう。』

2006/08/01 (Tue)

[156] 熟。
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熟していない果実を
かじりました。

実は堅くて
酸っぱさだけが
口の中に広がってゆきました

何故だか
後味がとても苦い。
私は複雑な気持ちで
種だけを取り除いてみました。

大地にどっしりとたくましい根を張って
大きく育てる為の種なのに、
未熟な果実の種は
まるで私達の素肌のように
白く、そして柔らかかった。

熟せば熟す程
トロトロで甘い
そして種は色褪せ
石のように堅くなってゆく…。

熟すまで待てなかった私は、複雑な気持ちで
種と実を土に帰してきました。

禁断の果実は
もしかしたら
その事だったのだろうかとか

色々考えたら涙が出てきました。

2006/08/08 (Tue)

[157] あの赤く鮮やかに燃える星
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多種多様なナマモノ達が共生している世の中だから
こうなる事は仕方が無いのさ。

君は毒々しい尾を鋭く震わせながら笑ってた。

生と死。
このサイクルに何ら疑問を抱く事なく、君は沢山の命を絶った。

天の神は
君を「いけない」と叱った。
そして命の大切さを説いた。

しかし君は神を嘲笑った。
「では何故私の尾には殺めるためだけの猛毒の刃をよこしたの?」かと

神は重そうな瞼を閉じたまま、額に手を当て嘆いた。
そして神は君を深い深い井戸の中に突き落とした。

君は叫んだ。
「私は此処に居る!早く私に手を差し伸べて」と…

君がナマモノと呼ぶ、生物達は誰一人手を差し伸べてはくれなかった。
「アイツは俺らとは違う。猛毒だらけの刃にズタズタに裂かれるのはごめんだ。」

干からびた君は灼熱の太陽に身を焦がされ
天に浮かんだ今でも救いを乞うた。

S字に曲がった光の線
尖った尾の先を赤く鮮やかに照らしながら…。

2006/08/24 (Thu)

[158] 一度しか言わない
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お前が嫁いでゆくその前に
もう一度ちゃんとお前の顔を見ていいか?

産声を上げて
ずっと母ちゃんにしがみついてたお前が
今は手を離れ巣立ってゆく

俺はお前に何度か
手を挙げて叱った事もあった。
お前が俺を
冷たくあしらって避けた時もあった。

二十数年の月日なんか
あっという間にこの日の為に過ぎ去った。

最近目が霞むようになったな…。
不思議と一瞬で、お前の晴れ姿が写らなくなってきた。

頼むから
本当にお世話になりました。とか
そんな小っ恥ずかしい手紙なんかくれるな。

頼むから
これからの俺らの事を心配するな。
自分達の暮らしの為に、経験を積んでゆけ。

頼むから
誰よりも幸せになってくれ。

俺らはお前の親としては、まだ未完成だったのかも知れない。

そう世間からも認められる立派な母親になってくれ。

2006/09/02 (Sat)

[159] チャイルドロック
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1日の中でも12時をメインにして
最高潮の女としての歓びを君にあげる。

男として成熟する時期を見誤りすぎて
時に空回り、君に汚い部分を曝け出した日。
そして何よりも
愛される事ばかりに快感を覚えた日々。

全て責任を負わして
僕は君に手錠と足枷をかけたまま幸せだと言った。

針が真上を指した時、
君の笑顔の魔法で僕は君に架した全てを開放出来る。

君よ。生まれてきてありがとう。僕はもう怖くない。
君が大人になるのなら、僕はもっと大人になる。

さぁ、ケーキに火を着けよう。
あるがままの君が今日のドレスコードよりも華やかに見える。

君が早足で大人に向かうなら、僕も急いでロックを外して追いかけてゆくよ。

2006/10/20 (Fri)

[160] あいらぶ肉屋さん
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そりゃ尋常じゃないものよ。隣の家の換気扇。
部屋中漂うマッタリとしたウマミ。

なるべくなら貧乏を
体験するべきとは言うけど
私たちは育ち盛りなのよ、ねぇ お母さん。

隣が肉なら、我が家の魚の匂いが勝るのよって
変な所で対抗意識を燃やさないで

3年間、豚肉を牛肉と勘違いして笑われた私。
だから、ほらっ、もう限界なのよ。

月末になったら肉屋
お父さんにお願いしようよ。

月末になったら肉屋
スーパーのタッパーに入れられたのは嫌なの。

月末になったら肉屋
合い挽きとかって逢い引きに似た異種混合はやめて。

月末になったら肉屋
オージーとかニュージーともお別れして。

月末になったら肉屋
滴れ落ちる脂って一体どんなのよ?

大人になったら間違いなく私は
父のような定収入の人とは結婚しないわ。

間違いなく私は、肉屋さんと恋したい。

2006/10/21 (Sat)

[161] ユメザムライ
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『生きとし生ける者
その全てが幸せだといいんですがねぇ〜』

ブカブカで台詞とは不釣り合いな格好した男は笑う。

力の無い目元の瞳の奥では
確実に私の心を見透かして

…ほら、泣けてきちゃうじゃない。小さい体一つ、窮屈な強がり。

銀色の星屑が貴方のフワフワ髪を輝かせるから
ついつい抱きついて口元緩んだ。

易々と夢は語らず
媚びる事もなければ
いつも誰かを救い出しては
我関せずと優しく微笑む貴方。


甘えついでに言っちゃっていいですか?

好き。

好き。

私、貴方が大好きなんです。


『んな事ぁ分かってますから。』なんて
また星空眺める遠い視線。

私だって分かってるんだよ。

貴方は誰かのモノでなく、夢のモノ。
独り占めなんか出来やしないの。


侍一匹。
それが私の見た背中。
夢一つ。
貴方は戦い続けてゆく。

2006/11/26 (Sun)
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