詩人:和泉 | [投票][編集] |
小さな箱に
宿した想いは
窮屈を訴える
蓋を開けるのを躊躇うのは
溢れるからか
紙の箱から染み出す心
箱を崩そうと
壊れた蛇口のように
小さな箱を
大きな箱に隠しても
行き着くマスは
『ふりだしに戻る』
サイコロの代わりに
放り投げた箱は
転がりながら
展開図へと
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好きなものは最後のデザートに
嫌いなことから始めよう
一つしかないものは半分にして
大きいものは相手にへと
砕けたビスケットは
相変わらず美味しかった
詩人:和泉 | [投票][編集] |
出会いに別れが付き物なら
それは少し寂しい
重ねることに時間を掛けた掌に
握ることがなくなるなら
涙を拭うしかないのだろうか
またの再会を願って交す約束は
大切にしまっておこう
詩人:和泉 | [投票][編集] |
固いようで脆い殻の奥にいる言葉
落として割れた破片は
人や言葉をも傷付ける刃へと
白い殻の中に眠る言葉を
温めるように抱き締める
そんなことはない
温まるのは僕のほうだ
詩人:和泉 | [投票][編集] |
効きすぎる冷房に
心も冷え
消えゆく温度が
何故だか君を想わせる
時間と距離の掛け算で
出会えた答えはこの気持ち
名前は何て言ったかな
冷えた空間から飛び出し
暑い世界に引き戻される瞬間の
あのめまいは
何故だか君を想わせる
詩人:和泉 | [投票][編集] |
出せず仕舞いの手紙
いつの間にか手から消えていて
お元気ですか で始まり
では また で終わる
またなんて
叶わない夢なのに
それは
離れた時間のせいなのだろうか
それでも
決って
最後を飾るのは
その言葉で
八十円切手も
いつを最後に
買わなくなったのだろう
宛先は
まだ覚えていて
眼を瞑ってでも書ける自信があることが
余計に悲しくて
もう使わないレターセットで
引き出しは閉まりきらなくて
出せず仕舞いの手紙を
探す勇気もないのです
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滑り落ちた言葉が
星のように地面に散らばり
たまに
拾う人もいれば
見て見ぬフリの人
落とした言葉を
自分で拾うことは
呼び掛けて相手が気付かなかったくらいの
空しさで
できるなら
落としましたよ と
相手が見つけてくれたなら
そう願うのは
自分でも嫌なのだけれど